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デビルマン(邂逅) エピローグ

「お迎えにまいりました」
そうはっきり声が聞こえた時、飛鳥了は落ちた海から、頭が水面に出ていた

了は、すぐ理解した

「呼び覚ます前に、気がつかれましたようで」キラキラ光る大きな目、顔が体のような者が、話しかけてくる。他に恐ろしい異形の身体を持つ者達が、海の上に立っている

自分が、よく知っている者達だ

飛鳥了も、海の上に立っていた
「そうだな。思い出したのに、海に沈んだままでいて」

素晴らしい朝焼けだった
地平線から、日がさし
空はまだまだ曇った雲があっても、澄んだ光りを湛えていた、ヴィーナスが誕生した朝のように、空気は澄み、飛鳥了自身も光りを放っているように見える。海の波も、鏡面のように静かに澄み空を映し、彼らが空の上にいるように見えるも、所々にある海の泡が、波に飲まれ沈んでいった死人や魑魅魍魎達の顔を作っている

そこにあるのは、闇に染まった悪魔達が朝の光りに照らし出された光景であった


飛鳥了は、気づく
異形の悪魔2人が美樹の頭、身体をそれぞれ抱えていた

「お気にされていましたので、取り戻しておきました。彼らは、なぜ首がないかも、気にしないでしょう」

「・・・刃が黒い日本刀、あれはなんの材質だ?あのバイオ人間は...」飛鳥了は、何が進行しているといった顔で、島の方角に顔を向ける

カン高い声が、ホホっと笑って言う
「不動明が存在しない世界では、ルシファー様とデビルマンの戦いがない代わりに、なんらかの計画があるようですね。地球を揺るがすような
島に行きますか? 
聞き出して、お知りになりたいのでしょう
人間ごときが作り出した武器に、我々が負ける訳はございませんが、災厄自体が免れる事のない地球の歴史であるなら、あの黒い日本刀やバイオ人間達は、悪魔と合体したデビルマン達に匹敵するモノとも考えられます。まあ、相手が負ける結果でしょうが」

「デビルマンとの20年の戦いが、人間の科学の粋が匹敵するのか.... 」

「・・・ 、デビルマンなればこそ、あれだけ長くとは思いますが、今なら芽を摘む程度に終わる可能性とも言えます。この世界には、デビルマンもデビルマン軍団もいません
相手は、人間
このサイコジェニーに、お任せ頂ければ」

「そうだな。彼らが、どう暴れるかひとまず見てみようか」

「仰せのままに」


飛鳥了と、軍団達は上空高い雲の上にいた
その高い場所から、島に向かう彼ら
飛鳥了は、巨大な悪魔の背中に乗っていた

本来の姿に戻ってないままの、飛鳥了の姿で
それでも、光りの中にいるような姿に見える
船の上よりも、凄まじく吹く風にも当然身じろぎもせず、ただ行く先を見ている

牧村は、諦めるだろうか
転生し続けて、会えないでいたら
他に目を向けるだろうか

牧村は、不動明をデビルマンを求めて、
明のいる世界を見つけようと何度でも転生するのだろうか?
その度に、僕と美樹の距離は近くなっていくのだろうか? 

その度に、僕と牧村の距離は近くなっていくのだろうか?

不動明がいなければ、出会う事がなかった
僕と美樹

お互い関心を持つ事もなかった
明がいた時、お互いにいけすかない奴にしか映ってない2人

どんなに転生しても、不動明はいない


溺れ、沈んでいく時に
暗い意識の底で銀河を彷徨うような中で、今回美樹と出会った一連の事を遠くから見ているように思い出していた

お互い遠くにいた
接点も何も交わらない場所に
デビルマンとなった明の引力に引かれ
明を中心に惑星のように回っていた僕と彼女

デビルマンがいなければ、出会う事はなかった
デビルマンが僕達を、出合わせたのか

不動明がいなくなった、今...

美樹が望んでいたように、美樹ちゃんと呼んでいたら、記憶を呼び覚ましただろうか?
不動明はいない

呼び覚ましても、恐怖の渦に怯えたかもしれない...

何度でも転生を繰り返すだろう彼女は

美樹が幸せにと思うのは、悪だろうか


サイコジェニーは、飛鳥了の後ろで、悪魔2人が美樹を抱えているのを見、思う

「影響を受けておいでのようだ。
考えが、変わられたと言うべきか
以前なら、我々に任せて魔鏡で様子を見られていたはず
・・・
まだ、会いたい人に会いに来たとは思ってない。だからこの世界にまで落ちて来た...」

我が王飛鳥了を見、感想なく呟く

「若い肉体を持っているのだ、当然といえよう」その声は、小さく誰にも聞こえない







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