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デビルマン邂逅2 (仮題)

高校の演劇部なので大して気にしてなかったが、全国大会に出て何度も3位内に入っていた部とは知らなかった、練習は結構本格的で厳しかったが、自分はセンスはあるようだった

美樹とは、部活を終えてから途中迄一緒に帰る事が多かった。練習でハードな日が続き、帰宅途中
「もう歩くのイヤ」と言う
「よかったら、今度花形ミツルのようなオープンカーで、学校に乗り付けようか」と返すと
「あはは、やだぁ」と軽くパンと肩を叩かれた
「あ、ごめん... なさい。つい。私ちょっと人叩く癖あるの、頭とか肩とか、挨拶のつもりで。よくないのよね、これ。しないようにしてるの。特に、頭はしないようにしてるけど、喧嘩とかするとすぐ手が出るの」
「喧嘩してたの」
「小中ね、男子に喧嘩売られたりするとつい」
「結構、おてんばだったんだ」
「おてんばと言うか、なんかかかってこられると」
「短気なのかな、もしかして?」
「短気って、短気になるのかな?自分はそうは思わないけど」
「んー、いや、確かにそうだね。正義感が強いんだね。かかってこられると、だから」
「飛鳥君は、どうなの?」
「僕?僕は普通だよ」と言った先から、急に頭の中がグニャリとした。
一瞬、目眩の一種?と思うのと、普段中学生の時の事聞かれても、すぐに答えられるのに、暗い闇の中に落とされたように何も見えず、思考を奪われたように思い出せなかった。
悪い夢でも見てるように汗が流れた
「僕は...」

「言いにくい?物凄くモテたよって。クールな微笑に、成績運動共に抜群って聞いたよ。中学同じ出身校の子から。まあ飛鳥君は有名だしね」と少しイタズラっ子の目で言う、美樹
「素直に言いなさいって、その方が好感あるぞ。飛鳥君が、謙遜したら嫌味すぎる」フフンっ感じで言う、美樹

「僕は、中学の時モテモテだった。この顔で」
「素直で、良いでゴザルよ」
彼女と僕は共に笑った


2年になって、クラスは別々になったが部活は一緒だから、話したり、休日に会う事もあった
部活の延長で、映画に行ったり芝居に行ったりと、演劇部の仲間と一緒の時もあるし、2人だけの時もある、部活で学校の休憩時間でも合う事は多かった

付き合うとは違う、ただ視界に入ったり声が聞こえたりすると、彼女をつい追ってしまう事は常にあった
自分でも、彼女の事好きなのかと気になっていたが、好きと言うよりは、何か気になると言う感じで...

素直でないのか、本当の気持ちはと考えあぐねていた

美樹といると楽しいのは、事実で

何かの話の時に彼女は、僕に言った
「飛鳥君見てると育ちはいいし、言葉も丁寧で品があって、成績もいい。みんなともフレンドリーなのに、そのクールな美貌で、天涯孤独って感じがするの」

「えぇぇ美貌って。言い過ぎでは」
学校の廊下で、彼女が僕より少し後ろを歩いていて、ついゆっくり歩く事を忘れる時があって、何言ってるんだって感じで僕は振り返りながら言った

「ほら、そこ。なんか凄くドラマチックな背景がありそうに見えるの!丁寧に喋るだけで、薔薇が、光が、讃美歌が聴こえそう気がするの。立ち居振る舞いだけで」

「かえって鼻についたり、嫌味に見える。そうだろう」どうも、美樹には僕がモデルのようにランウェイをターンする感じにでも見えたらしい。少々、大袈裟と思う
美樹以外の女子生徒にも、そう言う所はありのは知っていたが、なんかこうはっきりと言われると

「役は、選ぶと思う。でも、絶対お芝居の役者がよいと思うよ。役者以外なら、詐欺師かな。モデルでもいいけど、役者」

「なんで、詐欺師」思いっきり、あははと笑ってしまった

「騙されても、いいって思えるように見えるの飛鳥君は、殆どの人はそう思うよきっと。嫌味な程にツンとしたクールな美貌なのに。時々、なんとも言えない哀調のある表情をするの、演技してる時だけ、普段はないのに。なんか、ハッとさせられるの、痛みのあるような憂いのあるような表情に。そんな表情を見させられると、自分を曝け出さないといけないと思わせるの、たまーに演技してる時にあるの。与えられた役、場面に合わせてだけどね、もちろん。人間の表情と言うか、人間でない表情と言うか」

「人間の表情と言うか、人間でない表情と言うか、一体どっちなんだい」苦笑いしながら言っていたのが笑い出してしまい、「それに」言葉を区切るようにして言った
「そんな人間はいない。騙されたと思ったら、きっとみんな悲嘆にくれるよ」
僕の声は、なぜか影でも落とすように言っていた。美樹は気にせず言った

「ううん飛鳥君、きっと殆どの人はそう思うよ。だから役者がいいの」僕は、美樹の言わんとする事がわかったような気になった、なぜか?本当は分からなかったのに

美樹とは、学校の帰りお腹が空いたと言って、コンビニで買って食べるコロッケに唐揚げ、アメリカドッグに菓子パン、その時々で食べる物は違うが、自分は別に、そんなに食べたい訳ではなかったが、「そうだね、お腹空いたね」と言って、買い食いを付き合ったり、その時々になんだろう、夢の続きでも思い出すように、こんなに仲良かった?と思う時があったりした
変な感覚に笑って、彼女に「何、思い出し笑いしてるの」と言われた


そして今日、僕は
「今日はいつもより遅いから、駅迄送って行くよ」と言い
「え、大丈夫だからいいのに。それとも私は飛鳥君のお姫様かな」ふざけて言う彼女
「王子でも、騎士でも、従者でも、仰せのままに」
「そのクールで美しい美貌に合わせて王子でよいぞ」
「仰せのままに、王女様」と言い、手を差し出した。彼女は、

「あ... ありがとう。いや違うね。許して使わそう」とお主やるな、みたいな顔して言った

気になったのは「あ...」っと言った時、彼女はありがとうではなく別の言葉を言いかけたのではと思った
音の響きが、あの彼女の微妙な顔から正気に戻った目、表情は、僕には忘れがたいものになっていた
駅につき、バスターミナルのある駅は人がまだ沢山いて、
「おやすみ、また明日」と言って、大きく手を振り、明るく電気のついた駅の改札口の向こうに消えていく

僕は、彼女に合わせて振っていた手を下ろす
時々、誰の真似?と思う。手を振るという事が、今迄の自分になかった。彼女を美樹を見ていると、大切なものを扱っているような、会いたい人に会えたような気持ちになるのは、なぜか? 気のせいとも思う...

この事を思うと記憶の底が閉じられているように感じるのは、なぜなのか...



僕は、来た道を引き返した
僕の家は、学校から20分の場所で駅からは10分の場所で道々考えていた

彼女以外の人間は、僕からの指示を待っているような顔や態度見せる。自分でもわかっている、この顔とスタイルから彼女が言わんとする所がわからないでもない。逆に言えば、彼女だけは、僕に意志を自分の意志を通す事を言う

指示待ち顔ではないと言うこと、彼女

みんな僕の言う事を待っている感じだ

この顔のせいと言うことはわかっている
みんなに何か、ソワソワさせ期待をさせるようで、大人でも
彼女彼らの表情には、王でも見るような表情がある。それくらい、引きつける顔と言う事だ
僕はこの事にさびしい悲しいとは思わない、当然のような感覚があった

ただ、クラメイトや友人達といる時、たまに
「懐かしいだろう。もう、キミは闘う事でしか相手が得られないのだ」とそんな声が響く
「君と闘う者は、君を王としてみるかい」
そんな声が、微かに聞こえる中...

対等な意見を言ってくるのが、彼女だ
思った事を言ってくるのが彼女だ
僕の容姿を気にせず

それに僕は、彼女にひかれてる?と

気になっている所だ、彼女、美樹に
駅から帰宅時の道は、数箇所街灯がついてなく暗い夜の道

風は湧き上がるように吹き、流れていく

夜の暗さに溶けるように流れていく風に
飛鳥了は、全てが闇に夜に消えてしまう感覚に囚われていた

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