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「平造夫妻」1 お役目編 「仮面の忍者赤影」青影・陽炎の両親のお話 R18 2730文字

夢は幻、泡沫うたかたと言われる程の風光明媚で知られるこの土地は、平坦な山々が続き、この地に領地を持つ城主の御伝の周囲は、雑木林に山の形状を利用した城を持つ。家督を継いで三年の城主は、一目で長子と思わせる体格と風貌、浅からぬ肌の色が家臣に村人に信頼させ、御伝に噂に名高い陰陽師を城に呼んでいた


質実な作りの大広間は、外の木陰比べても明るさのある中、畳の井草の青い匂いが心地良く、新しく畳を入れ替えたようで清しさが一段とあり、殿自慢の御伝の大広間であった  


日が入れば清しく見せる造り、殿の背面には古式ゆかしく、この土地の満開の桜が描かれ、襖絵にも長い冬の雪解けの明るく気持ちのよい山間を見せる絵が、満開の桜に続くよう描かれてあった

また、謁見の間には、荒れ狂う龍と共に遠雷の様子が襖に描かれ、城主の座る場所には、後光ある日が射した晴天を思うような絵が描かれていた。この場所に訪れる者は、それらの絵に囲まれると、龍の脚に、頭を押さえつけられているかのように、身を低く頭を下げざるを得ないものであった


この山の地は、山月さんげつでも名の知れた土地であった
桜の盛りの月、星明かりの月、実りの月、この時期の三つの月の見事さもあり、をさん、つきをげつと呼び、三月さんげつ、|山月(さんげつ)と言葉がかけられていた

また、山の麓で暮らす村人達は、麓や山で見る月でさえも美しいのだから、城から見る月は、大層見事であろう、一度は見てみたいと口にする事度々で、御伝の広間は、殿の自慢でもあり、人に豪奢な気持ちを与えてる物で、身内でも、殿を尊ぶ気持ちになるものであった


その広間で、旧知の仲のように酒を酌み交わし
、分かち合えた顔を共に見せながら話をする城主と陰陽師玄流斎げんりゅうさい城主の弟達、その回りにいるのは家老に家督を継ぐ可能性がある者達に、正室と側室お二人にお子達、弟君の女房のお子達
その中でも一際長身の側室の三男が、家来のように身を低くしているように見える


城主のお子達は、皆母が違う

一番上から下迄入れると殿の子は七人

弟二家族は、お子を合わせると三人

また、まだまだ手の平が紅葉の様な子もおり、お子達の前の善には、干な菓子や水あめが置いてあるのだが、退屈してきた幼子達の声のする中、陰陽師玄流斎殿の一言一言に、座は沸き立ち、笑い声が響く


一族の繁栄を願った陽気な語らい

殿が日が下がり空気の冷たさに気づき、家臣に障子を緊めるようにいい、家臣達はそれと共に種火を殿達の廻りに置いた


家臣達は立ち回り、殿から皆の前に膳が置かれ食事が始まった

城主からのもてなしの馳走に皆からの舌鼓の賛辞の声で広間が賑わう中、次の善が運ばれる
殿の食事だけであるなら小姓が膳を運ぶものの、今日は正室から側室子供達が揃っているとあって、小姓や家臣意外に侍女達も運んでいた


殿の御前に、膳を置いた侍女が手をつき、頭を下げている


「何をしておる。さっさと、立ち去らぬか!」と一喝する家老は、少しも動かぬ侍女に続け
「頭を下げるとは、殿に頼み事か!場を考えよ!ご一族も揃われ、客人もおる前で、湧きまえぬか!下がりなさい!殿の前から、下がりなさい!」


今日は揃いの場所で人が多くても、殿の膳は小姓の仕事。小姓に何かあったのか!聞いておらぬ!何があったと、善を運んで来た者立ちをざっと見渡し、気色ばむ家老


家老の声にびくりとし、空の膳を持って立ち上がった者や、立ち上がりかけた中腰の者、膳を運んで来た者達は、ただ立ち固唾を飲み、頭を下げている侍女に目がいくばかり


表を上げぬ侍女に、今日は気分もよく、一つ聞いて見るかと城主は思う

「何か、わしに願いでもあるのか」
頭を下げている、侍女に声をかける
普段なら、なに奴と声荒げている所であるが、家族が子が揃い、玄流斎も呼び、心地良く酒も入っていた
聞くだけ聞くかの、心持ちだった


何故、そのような寛大な気持ちだったのか
それは、今朝幸先がいいのではと、誇らしく思うことが、あったからであった


風光明媚で知られるこの土地は
平坦な山々が続く
この地に訪れる者や行商の者、隣村の者でさえも、この地の桜が真っ盛りの頃は、『春は夢』と言うほどに、山、山、山の山桜の絶勝ぜっしょうさに息を飲み、人地じんちではない場所に足を踏み入れたのではと思う程、ここらの桜は仙人の術ではと、人々が口にするほど、舞い散る桜の多さに、この時期の桜を見ようと、この地に多くの者が訪れる季節でもあった



殿が、よい兆しと思った今日の朝のこと
長い雪の後、桜の開花と共に気持ちのほぐれる日々が続いてたが、前日の夜急に冷え込みだしたのは、翌朝、これかと思う朝を住人達は迎えた


寒いと思って起きる朝、直ぐに囲炉裏の火をおこす。水桶の水の冷たさに、釜戸への火、寒く戸を開けると、外の景色に雪が軽くあたりに降り積もっていた


地面に、春の暖かさに芽吹いた草花に、木々、隣の屋根や物干し軽く降り積もった雪が見える
いつもの朝から桜が舞っていたりするのが、一枚もなく、日々の舞吹雪く桜を諌めるかのように、薄桜に降り積もる雪は、それはとても素晴らしく、幻想的な光景であった


村人達は寒さが緩んだ暖かさの中、なぜこんなにも寒いと思っていた気持ちが、吹き飛んだ瞬間であった


満開の桜にもう雪は降らないと思っていた雪が降り積もっている光景に心打たれ、寒さの厳しい土地であっても、自分達はこんな素晴らしい土地に住んでいるのだとつくづく思い、良い事が起きる兆しと思う


軽く降り積もった雪は、昼前には溶けてしまい、感動は続く物ではなかったが、幸先の良い予兆と思える事に、軽くぬかるんだ道の煩わしさも、村人達には気持ちの良いものであった


城主も、起こしに来た家老に言われ、外の木々に降り積もった雪に、感嘆とし、「自分はまだ見ておりませんが、門兵が桜に雪が降り積り幻想的で、大変美しい夢を見ているようと言っておりました」と聞いて殿は、すぐ身支度を整え直ぐに門の外に出、雪に桜の感嘆とし、その足で城にはやる気持ちで行き、城の一番高い階から村を一望の光景は、昨日迄見えていた淡い桜の屋根は白さを陽の光が反射し眩しく見える。
所々雪の消えた箇所には、淡く甘い桜の色、昼には消えてしまう位の降り積もった雪に、光景に心打たれていた


家督を継いで、初めて春に雪、桜に降った雪に心よい予兆と、自然と胸を張っていた


それは、今朝の事
気分のいい、春の兆しと満足していた



「はい、殿に切腹をして頂きたいと思い参りました」と面を上げ、涼しい顔で言う侍女


侍女達は、殿に物申した侍女の顔に見覚えがない。また、それよりも恐怖で顔が強張るよりも、意表をつかれて声がでないでいた


続く→
「平造夫妻」2  お役目編


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