見出し画像

小説「哲学猫麻耶の哄笑」③

コロナにとって人間は埴生の宿

 コロナもいまは人間に毛嫌いされて追われる身だけど、生命の基を辿れば懐かしい埴生の宿かもしれない。床も畳もなく土が剥き出しのままの家も、同じ細胞内に生まれたコロナには玉を凝らし瑠璃を張った豪華な家よりも懐かしい。いわば悔恨の里帰りの旅だったかもしれないのだ。

でも生きる術が違う。世界が違う。胃腸に住む常在菌や細胞のようにはあつかえない。

お互い生き抜くために、な。

  

コロナとの戦いが終わっても、耐乏のストレスがあるから不況になるだろ。貧乏経営者が資金繰りに困って、投げ出した工場や敷地をボロ値で外国人が買い漁る。裁判所に通いつめる一発狙いもいる。それを高値で買い取る金融会社がある。売れるから。すべてが金で繋がっている。

蛇の道、儲け話は探せばいくらでもある。

かくしてまた日本の富は外国にさらわれる。

二十五年まえには株・不動産暴落から長不況になった。あのころ日本は欧米企業に富の半分を攫われた。こんどさらわれたら何もなくなる。

おまけに中国系が加わる。瀕死の獣に群がるハイエナである。

猫缶はどうなるかね。なくならないかね。

あいつは例によって三流芸人のように嗤う。不気味だ。真剣味がない。いつも笑っている。付き合っているおいら(哲学猫麻耶)が疲れる。

人間という生き物はどうも好きになれない。でも長い間一緒に暮らしてきた。情が移ったのだろ。苦笑いが出来るようになった。

「猫缶?安いキャットチップでもいいにゃ」

「心配ない。猫缶くらい探して買ってくる」

「金あるにゃ?」

「人間世界のことは人間に任しておけ」

気がいいのだ。でも、さいきんはいつも疲れている。 老化現象もあるだろうが多くの原因は、ブログという電子玩具にある。そこに書かれたことに一喜一憂している。

時に怒ったり悩んだりする。テレビには全く反応しない。

あんなものはどうせ偽情報だ。そういえばこの日本国もアテにならない。政治も行政も同じだ。その分国民は疲れる。業界や企業も、記者クラブを使って、都合の良いニュースばかりたれ流している。

検証もしない。脚で追うこともない。与えられた情報を意味もなく流している。 だから誰も観ない。若い人間を除いては。彼らに最初から故郷などない。生きているその場所が国だ。故郷だ。それで上手くやって行ける。そんな新人類なのだ。

だから国なんか拘らない。兄弟は他人のはじまり。親はいずれ去ってゆく。そんな感覚が国境をなくすだろう。でも大人はそこまで生きられない。その前に戦争が始まるかもしれない。そうしたらすべてが終わる。

わかる。わかる。 だいいち、あのテレビという雑音発生箱を見れば分かるじゃないか。一年中つけっぱなしで、あいつも全く見ていない。 そのくせ金は取られる。新しい電波塔が出来るからとか、8Kに替わるとか、NHKの調査員とかいう人種が近所をうろついている。

どうせ偵察だ。立花さんの活躍以来、視聴料の入りがますます悪くなったから、今度は裁判所を味方につけて、無理押しでも視聴料を掻き集める計画らしい。

だれも見ない、使いもしないものでも、日本国では法律で金をむしり取ることができる。 まるで強盗国家だな。そういえば昔説教強盗というのがいた。強盗をして、帰りには、強盗に遭わないための薀蓄を語ってゆく。いわば雲霧仁左衛門みたいなものだ。そんな盗人の伝記を長編ドラマとしてオンエアするあたり、NHKもいかれているな。

だろ?とあいつは酔って同意を迫る。

あいつもさいきんNHK的になってきた。厚かましい。はやくコロナに取りつかれれて病院送りになれば、すこしは静かになるが、さすがにコロナもあいつには寄ってこない。そこは首相のアヘさんも似ている。マスクしているが、どうみてもコロナが敬遠する顔だ。

「そうだろ?」

「いえる。でも、そんなこといっても仕方ない。視聴料なんか直接払わなくても、広告という手法で、無用な品物をいっぱい買わされ、ローンを組まされる。稼がれる。要するに人間はアホだから、とくにあいつの棲む弓なり列島の人種は、稲作農耕民族の流れだから、騙されることに慣れていない」

「警戒心が未発達なのだ」

「どっちにしても人間は、騙され踊らされて金をむしり取られるような仕組みにいきている。生かされている。哀れな生き物だ。新聞だってそうだ。あいつも月末にはどさっとトイレットペーパーをもらい新聞代を払っている。なぜ、読みもしない、あんな無意味なものに、数千円払うのか。

長年のお付き合いだから。とあいつはいう。しかたない。死んだあいつのカミさんの友人から頼まれた。カミさんは死んだのだからお付き合いは断ればいい。それがあいつにはできない。つまり地域地縁とか、ながいお付き合いとか、知人友人親戚とか、学会とか、なんやかんやに纏われている。農耕稲作民族特有の微温的付き合いから離れなれないのだ。

何重にも、間違った情報を与えられ、混乱して、怒りっぽくなり、その上で適当にコントロールされる。 人間とは、とくにあいつと同じ日本国民は、つくづく哀れな生き物だと思う。犬にも数倍おとる。猫?才能が違いすぎて話にならない。

それも仕方ない。頭が悪いから。自業自得というものだ。 直感力もない。敏捷さもない。餌すら自分では獲りきれない。あんなものが地球上に生き延びたこと自体不思議だ。

その現実をあいつらは全く分かっていない。 人間は情報の生き物だという。そか。そか。に、しては殆ど受け売りだ。ブログに流れている、いっぱしの情報にしても、全て受け売りである。

コピペという、自分の考えの殆ど入っていない代物だ。 ま、あいつのいうこと自体アテにならない。

あんな電子玩具を買わされ、踊らされて、一喜一憂しているあいつは、ホンの僅かな年金で辛うじて暮らしているが、電子玩具で世界中から富を集めた高名な福祉家ヒル・コイツには天文学的な年収がある。さらに、その何百倍の金を企業と政府から分捕っている。

名前もコイツだ。ほんとうはコロナイツ・トムというらしい。どこ人?しらない。ユダヤ国際金融資本家の端くれらしい。世界中に居所を構えている。日本にもある。彼は巨大なワクチン製造会社コロナのファウンダーでもある。

哀れなのは末端の人間だ。 あいつとこいつでは一字しか違わないが、天地の差がある。宇宙系とノミ系の差がある。

猫からみても多くの人間はアホである。 眼力や嗅覚、情報の分析力、跳躍力、どれをとっても、人間は猫の足元にも及ばない。 そこが全く分かっていない。そして自分のことを動物界の霊長と勘違いしている。お目出度い生き物だ。

でも、あいつは優しいから、こうやって、長く付き合ってきた。

愛おしい相棒だ。ただ疲れる。

私は種的には長毛種のヒマラヤンと、短毛種で行動的アメリカンショートヘアとの混血といわれる。本当のところは分からない。 どうせあいつが通い詰めたスナックのママがいうことだ。アテにならない。

だいいち家族の誰も、飲み屋のママのそんな話なんか信用してはいない。 ただあいつだけは、むきになってママを擁護していた。その家族も独立していなくなった。頼みのカミさんは死んだ。

ここから先は

1,882字
この記事のみ ¥ 100

満85歳。台湾生まれ台湾育ち。さいごの軍国少年世代。戦後引き揚げの日本国籍者です。耐え難きを耐え、忍び難きを忍び頑張った。その日本も世界の底辺になりつつある。まだ墜ちるだろう。再再興のヒントは?老人の知恵と警告と提言を・・・どぞ。