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小説「死ぬ準備」


なぜか地球にうまれた


たまたま生まれたのが地球なら死ぬのも地球である。地球は太陽系第三惑星で太陽系全体からすれば小さな点にすぎない。その太陽系も天の川銀河系の辺境にある。天の川銀河系は太陽系など恒星群を引き連れてアンドロメダ銀河に近づいている。衝突したらどうなるか? 

 気に病むことはない。人類は遠の昔に滅んでいる。

そんな太陽系の第三惑星地球に私は生まれた。三千万種ともわれる地球上生物の一つとして。種の名称をホモ・サピエンスという。遡ればアフリカ奥地に棲む一人の母親に辿りつくだろう。

みな兄弟みたいなもの。なのにいつも争っている。

顔立ちも体つきもその土地や気候に合わせて違っている。黒かったり白かったり。でもお互い同じ種族だと思っている。獲物を狙う時は敵味方だ。

だから歯を剥き相手を威嚇する。獲物を分け合うこともなくいがみ合う。争いは絶えない。争いの方法も格段に進歩した。いまや核爆弾はヒロシマ型の千倍もある。

それでも戦争を止めない。間もなく人類は戦争によって地球から消えるだろう。その前に私も消える。この文章はその為の準備である。

人類は一人の母親から始まった。父親は分らない。兄弟もいたのかいなかったのか。気がついたら旅に出ていた。獲物を求める果てしない旅である。行く先々で発情し子供をつくる。その子供も成長すると獲物を追って旅に出る。何万年か後には南米大陸の南端に辿りついていた。
そんな旅を実験的に行った医師がいる。暇な医者だ。

きっと私の祖先も、そんな風にして日本列島南端の小島の辿りついたのだろう。南西諸島の一つ島、徳の島である。南から流れ着いたか大陸から渡って来たかも分からない。気がついたらそこにいた。

さいきんは徳の島も世界自然遺産に指定された。今後は観光資源として見直されるだろう。もともと農漁労の貧しい島だ。サトウキビと大島紬で息をついた。他の群れもこんな風にして弓なりの列島に棲みついたのだろ。

最近北海道でアイヌは先住民族じゃない、大和が先だという議論が持ち上がっている。東京オリンピックの閉会式でアイヌの踊りが世界的に発信されたことが面白くない。そんなことに税金を使うな、別な使い道があるだろうということだ。

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満85歳。台湾生まれ台湾育ち。さいごの軍国少年世代。戦後引き揚げの日本国籍者です。耐え難きを耐え、忍び難きを忍び頑張った。その日本も世界の底辺になりつつある。まだ墜ちるだろう。再再興のヒントは?老人の知恵と警告と提言を・・・どぞ。