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大きな白いリボンの少女

垂水行きの船着き場は岸壁にあった。海が荒れて桟橋が揺れるときは垂水行きの船着き場が桜島行きを兼ねていた。そこには待合室と売店があった、売店には長い三つ編みに白い大きなリボンを付けた少女が座っていた。目の大きな美少女だった。

いつも守衛のように母親らしい女が脇に座っていた。ボンタンアメください。ボンタンアメとは鹿児島名産の飴菓子である。柔らくてほんのり甘い。まるで少女のような白い肌をオブラートで包んである。その少女が好きになった。

私だけではない。ブーゲラも、幸雄も、「二十紋の足袋」も。「二十紋の足袋」は親が元校長先生で、息子をラサール高校に入れたいと考えている。旧一中の鶴丸じゃだめだ、東大を狙うにはラサールだ、と思っている。

新制高校だからわれわれが一期生である。それにしても恋敵が多すぎる。しかも敵は秀才ばかりだ。     つづく

満85歳。台湾生まれ台湾育ち。さいごの軍国少年世代。戦後引き揚げの日本国籍者です。耐え難きを耐え、忍び難きを忍び頑張った。その日本も世界の底辺になりつつある。まだ墜ちるだろう。再再興のヒントは?老人の知恵と警告と提言を・・・どぞ。