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私のいない、真っさらな場所

昨日はDAWをいじって、ああでもない、こうでもないをしていたら一日がたっていた。

気に入ったスケッチを膨らませて曲に近づけようとしていたのだが、途中で自分が何をしたいのかを完全に見失っていた。

迷い出すと、とことんラビリンスにはまる。たった一曲を作っている最中に、もっと人を楽しませられるような曲のほうがいいのではないか?いやいや、まずは自分が好きな音を形にするところからだろう。そもそも自分の好きな音って?っいうかなんで音楽にこだわってたんだっけ?なんで私いまこんなことになっているんだ?もっと早いうちから音楽の道にはいればよかったかな。やりたいのは芸術?エンタメ?ただエゴで音楽にしがみついているだけなのでは?っていうかそうじゃん?あれ?あれ?エトセトラ。。。。。。


実家暮らし精神安定状態の私でも、少し上手くいかないことがあるとこうやってぐるぐる無意味な悩みループに入る。でもこれは多分ホルモンバランスの影響だから、ご飯を食べて寝ると、次の日にはケロっとしているし、何に悩んでいたのかも忘れている。


東京で大学生をしていた時、月に二回ほどボイトレに通っていた。先生はそこそこ名前のある人(多分)で、いかにも業界人っていう感じだった。その人から学んだことはたくさんあった。でも気分にムラがあるのか、たまに何をどう歌っても気に入らないらしく、あたりがきついこともあった。

『歌い方に個性がないんだよなぁ』

この言葉は今でもたまに思い出す。私を悩ませるラビリンスを構築する要素の一つだ。

歌い方の癖を消せ、しゃくりをやめろ、リズム感がない

どれもその通りで、必死にレッスンについていった。先生のあたりがきついのはきっと今日なにか嫌な事があったからだろう。でも

『個性がない』という言葉は私にクリティカルヒットした。たとえ技術や十分な歌唱力がなくても、自分にはあまりある個性があると信じてやまなかったし、疑うこともなかったのだ。(どんな自信)そんな風に思われてしまっていたのか。しかも素人にではなく、音楽で食べている人にそう言われたことに少なからずのショックを受けた。


個性とは一体なんだろう。

今でも自分が提示できる私らしさなんてない。見つからない。

そもそも「自分の個性ってなんだろう」と考えて出る答えは、本当に個性なのか?と思う。(こんなんだから、ろくな就活ができなかった)

できるなら私は、こんな風にぐるぐる考える場所に本当はいたくない。

「人間は考える葦だ」とか言うし、歴史だって法律だっていろんな人が思考を巡らしてできたものだ。他にも考えなくちゃいけないものであふれている。そんな世界で自分も生きているくせに都合がよすぎるけれど、もっと感じられるままで生きられたらどんなにか楽だろうと思ってしまう。

私が歌うことが好きな理由は、頭をからっぽにする事ができるからだ。

今でも高校の文化祭で歌ったとき、なにも考えず、空気に伝わる振動だけを感じて、身体が軽くなっていく感覚が本当に忘れられない。

そんな無我の境地は常に体験できるわけじゃないし、ほんの一瞬かもしれない。

けれど私がいない、真っさらな場所にこそ、本当の自分(個性)が宿るのではないだろうか。

今はただ、思考や欲望、意思や夢が混在する迷宮ラビリンスを彷徨っているけど、いつかそれを自分の力で全部取り払えるようになりたい。真っさらな場所へ、自分の作った音と言葉で行けたら最高なんだろうな。早くいけるように、今日も音楽を作ることをあきらめないでいよう。



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