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福祉現場の「なかま」に悩むAさん 後編

こんにちは、デーモン閣下のコスプレしてから肌がガサガサになったムーディです。ギャッツビーで化粧落としたのが多分原因。

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超短期連載「福祉現場の『なかま』に悩むAさん」。日頃の福祉での実践で「なかま」について感じたことを前編、後編にわけて更新します。


前編はこちら

https://note.com/mudytamudyro/n/n122107468103

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1.リハビリテーションや発達における集団や仲間の力

「おはよう」

「あ、おはようございます」

「今日ジブリあるよ」

「え、そうなんですね、なにやるんですか?」

「ナウシカ」

「あー、未だにナウシカ全部見たことないんですよね~。テトが主人公の手を噛むところで見るのやめるんです」


ピネルの朝。私は突然話しかけられる。話題は金曜ロードショーの話題。ジブリのナウシカが夜に放送されることを私に伝えにきたのだ。

実は話かけてきた彼は元々こんなに社交的ではなかった。彼がピネルに来た当初は私から話しかけても言葉につまりうまく返答することができなかった。

「今日の朝ご飯は食べた?」

という質問にも答えることが出来なかった人だった。コミュニケーションを自分から取らないどころか人から話しかけられてもうまく答えられなかった人だった。

しかし、今は彼から私に話しかけるようになった。私の質問にも答えられるようになる。会話のキャッチボールができるようになっていた。


私はなにかをしたのだろうか。いや、なにもしてないだろう。

ピネルという集団に身をおき、仕事をする中でどうしても周りとコミュニケーションを取らなければならない。それは仕事に関係しているコミュニケーションもあれば、全く関係ない話を彼にすることもある。「今日は阪神負けたんや~」とか。


仕事を遂行する中でしなければならない最低限の話、どうでもいい話、彼におせっかいをやく人たち、などなど。

コミュニケーションが苦手な彼はピネルという集団の中で一緒に働く仲間と仕事をする中で少しずつ少しずつコミュニケーションをとることに慣れてきて、育っていった。

会話のキャッチボールというものは今や彼から投げるようになっていた。


自分自身が自らの人生を切り開き、自分らしい人生を生きる。福祉現場におけるリハビリテーションや発達のなかで集団や仲間がもたらす役割は否定されることなく不可欠であり、重要とされてきた。

「集団や仲間」の力を否定する福祉現場の人はいないだろう。集団のなかで育つ。仲間とともに育つ。

この重要性は恐らくこの先もかわることはないのかもしれない。


2.仲間に悩むAさん

福祉の中で説かれる集団と仲間の重要性。

しかし、福祉現場で働く支援者はこの重要性を理解しながらも自身は集団と仲間を大事にできているのだろうか。

被支援者同士のレクリエーションは企画するが、支援者同士のレクリエーションには参加しない支援者Aさん。

もっとコミュニケーションを取りなさいと説きながら、自身は支援者同士で最小限のコミュニケーションしかとろうとしない支援者Aさん。

集団の中で上手くいかずに孤立してしまう支援者Aさん。

集団や仲間の重要性をときながらも、あくまでそれは被支援者の話で自分には落とし込まない支援者Aさん。

人との試行錯誤をさけ、一方的に相手を決めつけ批判をする支援者Aさん。


そして、人と一緒に何かを創りたいと願いながらも、身近に仲間を感じることができないAさん。


人手不足が嘆かれ、日々少ない人数で業務を回す日々。そんな揺らぎにくい環境だからこそ、集団や仲間の存在が大きくなってくる。しかし、そこにコミュニケーションをとるゆとりが不足してきていて、集団や仲間を重視しにくい環境に追い込まれているのも事実。

福祉現場において仲間に悩むAさんとは誰なのだろう。

特定の人を現わす誰かなのだろうか。


3.福祉現場の集団と仲間の中で育つ

3年前。Aさんは福祉現場に入職。ピネルで最年少の彼は長年ピネルで働いてきた先輩たちの元、迷惑をかけてはいけないと思いがむしゃらにピネルの中を走りまわった。

Aさんに与えられた現場の仕事は洗濯機を回すことだった。

Aさんは人に頼ることなく、自分の仕事は全部自分でやっていた。

所長に「みんなで仕事しているんだから、仲間にも頼りなさいよ」と言われても、周りは全員Aさんより年上。Aさんは年上の人に頼み事をする勇気がなく、頼らずにやっていた。


 しかし、慣れない仕事にがむしゃらにやっていたAさんは気づけばグロッキーな状態に。

それでも頑張らなきゃ。洗濯機から洗濯物を出そうとしたとき、

「Aさん、これ出しといたらええんやな~」と言って、近くにいたメンバーがグイグイっとAさんと洗濯機の間に割り込んで洗濯物を出し始めた。

他の人たちも「どんどん言ってくれたらええんやで」と言って、Aさんが畳んでいた布団を畳み始めた。


 年齢や立場関係なく、みんなで頼りあい、助けあって仕事をしている。支援者同士で育つ、被支援者同士で育つという単純な構造ではない。

またはどちらかが一方的に与えるような場でもない。

Aさんは今も仲間に悩みつつも、仲間の中で育つ。

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#仲間 #福祉 #なかま

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