見出し画像

オーダーメイド型の働く場づくり~環境的視点を持つこと~

こんにちは、焼き肉ハイスピードで攻めすぎて口の中やけどで血まみれになったムーディです。1人焼き肉の焼くペースはむずい。

6週連続連載!毎週火曜日更新。「新卒で日本最古の精神障害者福祉工場に入職した男」シリーズ第4弾。2020年6月2日からはじまり、2020年7月7日最終回予定。よろしくですー!!


▼前回の記事はこちら

===============================


「働く場を考える」

働く場は多くは複数人の人から構成される場である。


「休みが取りやすい」「自分のペースで働ける」「ゆとりがある」

働きやすい場を考えたとき、そこには複数人が一致する「働きやすい場」が大雑把には存在する。

前回まで書いてきたピネルでのゆとりを生み出す改革は全体として「働きやすい場」を目指してつくってきたものである。


しかし、万人に働きやすい場を大雑把につくり出せたとしても、細かいニーズがそえているとは限らない。

10人いれば10人。100人いれば100人。1000人いれば1000人。

人によって働きやすい場はそれぞれだし人の数だけ答えがバラバラだし、異なる。


そんな中、1人1人が働きやすい場をどうつくっていくか。


1.昼寝が出来ずに調子を崩すAさん


月曜日。土曜日と日曜日という休み明けであることで洗濯物を仕上げる量が多い。よって他の曜日より仕事内容はハードになりやすい。納品の配達先も多かったり、それに伴い中で働く人の人手も少なくなりがち。


そんな中、いつも決まって月曜日の昼過ぎに調子を崩すAさんがいた。調子を崩しながらも休憩をこまめにとり、最後まで仕事をする。最後まで仕事をやりきる責任感あるAさん。しかし、月曜日の帰り際はいつも顔がしんだ状態で帰っていくAさんがいた。


月曜日は仕事がいつもより仕事がハードだから調子を崩すのか?

そんなことが頭によぎり、Aさんに聞いてみる。


すると、Aさんの答えは意外だった。

「休憩室がうるさくて昼寝できへんねん。昼寝できないと調子を崩してしまう」


2.ピネルの休憩室の構造

(1)2つの休憩室

「休憩室がうるさくて昼寝できへんねん」

Aさんがそういったピネルの休憩室とはどのようなものか。


ピネルには休憩室が2つある。2つの部屋には

・冷暖房がある

・テレビがある

という共通点があるものの、2つの休憩室は性質が異なる。

①喫煙部屋

画像2

1つは喫煙部屋。冷蔵庫、電子レンジ、流し場があり、たばこを吸うことができる部屋。必然的に喫煙者はこの部屋で休憩することになる。

休憩中は話をしたり携帯をいじっている人がほとんど。テレビは大体ついていて、ワイドショーを見たり、隣の人間国宝見たり、高校野球見たりする。(勝山は野球に関心ないので話についていけない)

壁にはピネルの新聞記事や麦の郷内のイベントのチラシ、ピネルの人がバンド活動した際の新聞の取材記事があったりする。

ちなみにピネルの職員会議はここでやる。(私は誕生日席に座る。全員の顔がチェックできるので、「この人この話興味ないだろうんな」「帰りたそうににしているな」とかが丸わかりで楽しいからだ(笑))

畳ではないので、横になることはできない。寝るとするなら椅子に座りながら寝るしか手段がない。


②禁煙部屋

画像1

2つめは禁煙部屋。たばこ禁止。畳であり、布団を敷くことができるために横になることができる。

机を囲ってわちゃわちゃ話していたり、テレビをみていたり、携帯で音楽を聴いていたり、寝ている人がいたりと様々。


(2)まぶしくてうるさくて寝れねえ!

まあ、この2つのうち昼寝をするとするなら横になれる②の禁煙部屋になるだろう。しかし、この部屋。誰もがもちろん寝ているわけではない。テレビを見て休憩している人もいるし、楽しく話をしている人もいる。もちろん電気はついている状態。


休憩時間に楽しくおしゃべりする場がある、というのは一見良さそうにみえる。しかし、昼寝をして調子を整えている人にとっては、おしゃべりなどの音、テレビの音は昼寝をさまたげる。

ましてや電気もついている。まぶしい。睡眠をする、昼寝をするということに適した場ではない。

1人1人にあった働く場を考える。そう、働くを考えるときに切り離せないのは「休憩」であり、案外1人1人にあった「働く」は考えられることがあっても、1人1人にあった「休憩」はこぼれ落ちな考えなのかもしれない。


しかし、休憩を充実させることは単純に働くを充実させることでもあり、パフォーマンスもあがる。そのことによって、より稼ぎたい人は稼ぐことができるようになるし、より働きたいと思う人はより働くことができる環境を作り出す。


3.睡眠部屋を作ろうぜ!

昼寝ができないことで調子を崩す。ならばどうするか。昼寝ができなくても調子を崩さないように訓練するか。別の方法を用いて調子を崩さないようにするか。または調子を崩すことを悪いこととして受け止めずにいくか・・・


ここもいろいろな考えをする人がいると思う。

でも僕が出した答えは昼寝できる環境を整えることだった。

でも、①の喫煙部屋には喫煙部屋の良さがある。②の禁煙部屋には禁煙部屋の良さがある。

①、②でどうにか昼寝できるようにするとそれまで楽しくおしゃべりしていた人やテレビを見ていた人は肩身を狭くしてしまうかもしれない。


ならば、簡単。Aさんのために第3の休憩場「睡眠部屋」を作ろうぜ!


まず、昼寝に適した場を考える。

・電気を消すことができる

・静か

・冷暖房がある

・横になれる

の4つ。この条件がある場をつくればいい。


そのとき思いついたのが当時使っていたおしぼりを袋詰めしたり、オムニマットをセットする部屋。この部屋は冷暖房が効く。

大量に積み重なったオムニマットを整理すればスペースがあく。そこにベッドを置けば寝るスペースができる。横になる場を確保。

画像3


そして、その部屋は休憩時間中は人がいなくなる。静か。そして電気を消すことができる。

休憩時間中、その部屋は私語厳禁のルールをつくる。

画像4


・電気を消すことができる

・静か

・冷暖房がある

・横になれる

4つの条件を満たした。

シーツや布団は汗をかいたらいつでも洗濯できる。完璧!睡眠部屋の完成だ!3人まで利用可能!


4.1人のニーズは複数人のニーズだった


Aさんは早速昼休みはここで仮眠をぐっすり取るようになった。電気を消すことができて真っ暗。そして静か。

「めちゃくちゃぐっすり寝れたわ」

顔色すっきりのAさんはそれ以来、月曜日に調子を崩さなくなった。

月曜だけではない。他の曜日も調子を崩すことが格段に減った。


そしてそして。面白いことにAさん以外もこの部屋を使う人は多く、睡眠部屋は人気の休憩スポットになった。

口には出さなかったし、ニーズと思っていなかったが、いざ睡眠に特化した休憩室が出来たことによって、

「その方が自分らしく働けるな」

と気づく人がいたのだろう。

1人のニーズを叶えることで複数人のニーズが叶う。そんなこともあるのだ。

1人の課題を環境に変化を与えることで解決していくという環境的視点。

その視点を持つことが「オーダーメイド型の働く場づくり」を可能にする。

なければ一緒につくってしまえばいい。エゴを形にしてしまえばいい。

ソーシャルワーカーはすでにあるものに当てはめていくのではなく、

一緒に作戦会議をして新たにつくってしまう。環境を変えてしまう。

この考えは働き始めて4年目に突入する今でも大事にしている考えである。


5.訓練的視点と環境的視点。多くの人が働きやすい場をつくるのはどちらだろう?

通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき,就労の機会を提供するとともに,生産活動その他の活動の機会の提供を通じて,その知識及び能力の向上のために必要な訓練を行う事業の事

就労継続支援、言い換えれば福祉的就労は上記のように国では定義されている。

訓練という要素があり、この訓練とは一般就労をするためのステップアップとして大抵捉えられている。(一般就労>福祉的就労という位置づけである)

社会の規範にあてはめる、一般就労でもやっていける人の訓練の場と捉えるのであれば、この睡眠部屋をつくるという行為は間違いかもしれない。

どの一般企業にもこのように睡眠部屋をつくってくれるとは限らない。訓練視点でいくなら「オーダーメイド型の働く場づくり」は誤っているのかもしれない。

でも、私は一般就労も同様、障害あるなし関係なくその人にあわせた働く場づくりをすることで誰もが生きやすい社会になるんじゃないかと思う。


課題に対して個人の訓練によって解決していく視点はもちろん必要。

ただ、環境に働きかける、環境を変える。なければつくる。

そんな環境的視点もあることで誰もが働きやすい場は自然にできていく。福祉的就労を単純に一般就労の訓練の場として捉えるのではなく。

「一般就労よりその人の個性にあわせて働くことができる場」として、福祉的就労から文化をつくっていく。

一般就労より先進的な働き方を提示して文化をつくっていく。またはそんな分断性をなくし、様々な人が関わり合って共に働く場をつくっていく。

まさにこれがソーシャルファームであるなぁと思いながら。

福祉的就労にいる人たちにはそんなことができるのではないか。


僕はたまによだれを垂らして想像することがある。


ここまで私はソーシャルファームピネルの実践をあげてきた。

人はなんのために働くのだろう。私たちが働く、誰かと共に共創していく中で大事にしなければならないことってなんだろう?

次回最終回。最終回タイトルは「新卒で日本最古の精神障害者福祉工場に入職した男」。お楽しみに。


それではグッバイオンザビーチ!


#作業所 #福祉 #ソーシャルファーム #障害者



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?