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夢中って何?大学の先生に聞いてみた!

こんにちは。うらちゃんです。

今回はありがたいご縁で、関西学院大学准教授の時任隼平さんにお話を聞かせていただくことができました!


☆時任先生にとっての夢中とは?

研究ですね。面白くて時間を忘れてやっていることが、自分なりには夢中に該当すると思います。やっているときによって夢中の濃淡は多少違いますが、現場にかかわっているときの夢中は、その濃淡がある中でも特に夢中の度合いが濃いですね。

時間を忘れるようなモードになるときは、研究しているときに疲れを感じずにがーっとやっている感じですね。終わったあとで疲れを感じます。

夢中になると、研究の優先順位が完全に一位になります。たとえば、いつもだったら筋トレに行って、フットサルに行って…という日々のルーティーンがありますが、その優先順位が完全に崩れます。

あんまり時間に拘束されない職業なので、スケジュールを組むときは自分のプライベートの充実を優先して、その代わりに仕事が多いときは夜遅くまで大学にいます。だけど夢中の状態はそれが完全に逆転して、ずっと朝から研究するみたいな感じになります。

少し前はずっと先行研究を読んだり、学会に行って情報を集めたり、やることはやっているけど夢中にはなってないという状態で、あまり楽しくなかったんです。

今まで点で読んできた論文を、なんとなくゾーンが見え始めて、しぼっていけるようになったのがこの3~4か月で、今やってる大規模な調査に取りかかり始めてから結構面白くなったっていう。その問いが生まれるまでに1年半以上もかかったんですよ。


☆研究以外に夢中になっていることは?

サッカーをプレーしているときは夢中ですね。でも人生の選択肢で考えたときに、サッカーに代替する趣味は見つかると思っています。

研究に代替する満足度の得られる仕事は多分ないか、あるいはつけないかのどちらかです。たとえば医師・弁護士・スポーツ選手とか、自分がなりたいと思う領域の職業があったとして、今からそれになれるかっていうと、労力的にも能力的にも難しいって考えたときに、多分大学の教員って職業以外に夢中になれることはないし、僕の中でライフワークとして普段仕事をしているので、趣味とほぼ一緒なんですよ。

英語の教師をしているときもそういう感覚だったし、大学の教師を目指すときもそういう感覚でした。だからあまり仕事をしているという感覚を、人生であまり感じたことがないです。 


☆仕事と趣味の夢中の違いとは?

自分の中で研究を頑張るのは、基本はやりたいからやっているんですけど、それとは別で頭の中でいろいろと計算もしています。たとえば今書いている本が完成したら多分教授になれるとか、教授になったら次にどういう役職に就けるかとか、そういうプランが見えるのは事実なので、研究においては損得関係なしに夢中になってる部分と損得の部分が重複してるんですよ。

サッカーは身体を作るという意味では生産的ですが、それは代替の利く生産性なんです。サッカーじゃなくても、身体を作ろうと思ったら作れるし、発散もできる。研究は代替できないんです。


☆小さいときに夢中になったことは?

運動ですね。完全に。小さい頃は何も考えずに運動だけやってましたけど、今は趣味のスペースに移りました。小さいときの夢中と今の夢中はちょっと違うんですよ。小さいときの夢中は、勉強とか他にやりたくないものがあるから、それに夢中になるみたいなところもありました。こういうのやりたくない、じゃあ逃げ道何?っていったら運動しかないみたいな…。

今はそれだけで生きていけないということはわかっていて、自分の性格的に稼ぐこととやりたいこと・やれることは全部重なってないと嫌だなと思っているので、小さい頃はそういう思考がないうえでの夢中だったんですよね。単にそれはやりたくない、だからこれをやりたいって夢中になるという。そういう結構単純なロジックで夢中が存在していました。


☆外国に住まれていた時任先生。外国と日本の子どもの夢中に違いはある?

プラハで通っていた学校は少人数制だったので、全然違いましたね。当時の大阪の村立の小学校に比べると、教師との距離も近く感じました。

でも外国の子どももと日本の子どもの人種の違いはあまりないと思います。たとえばアメリカの場合、アメリカの大学に入ること自体がそんなに難しくなかったり、入試のシステムが違かったりして、必然的に縛られ方が変わってくるので、やりたいことをやっている子たちが多く見えるかもしれないけど、アメリカ人の子たちが日本の学校システムに入ったらどうなるかというと、それは結構疑問だと思います。

現に日本で僕が通っていたインターナショナル・スクールの子どもたちは、日本の公立学校に通っている子どもたちとは振る舞いが違ったと思うのですが、それは日本にいるけどインターナショナル・スクールっていう社会制度の中で生きているから、振る舞いが変わってくるのだと思います。

小中高と長い時間を過ごしていく中で、学校の制度や社会文化的なものが、本人の考え方とか行動に影響を与えるというのはもちろんそうだと思います。ずっと日本のそういう社会制度、社会文化的な学校システムで育ってきた子と、海外の社会文化的な制度の中で育ってきた子が同じ大学に入ったときに振る舞いや考え方が違うかというと、違う可能性はもちろんあります。

ただアメリカ人をそのまま日本の学校に入れたら、多分アメリカ人も変わらないだろうなと思います。子育ての仕方自体が社会制度に影響を受けているので、子どもたちの振る舞いや考え方の違いと人種は関係ないと思います。


☆子どもたちに夢中と出会わせるアプローチとは?

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夢中の下位概念に集中があると思います。本人のやりたい・やりたくないという意思や、それが自分の人生にどう関わるか関係なしに集中することはできると思いますが、夢中になりなさいって言われて夢中になれることってあんまりないと思うんですよね。

夢中へのアプローチ方法は、領域によりますね。職業を選ぶという領域におけるやりたいことと、趣味におけるやりたいことというのは全然次元が違う話なので、どこにアプローチするかによって変わると思います。

学校の先生として好きな教科を作らせたいというときのアプローチだったら、まずは各先生にお願いして、楽しいと思えるようなアクティビティーなり問題なりを紹介してもらってとなるだろうし、人生のことであれば、5年先を歩いている人たちに会わせてみるとか、全然その子が見たことないような世界の人たちと接点を持たせるとか、そういうことになるんじゃないかなと思いますね。

趣味の場合は自分が楽しいと思ってる趣味に、一時的に巻き込んでみるのはありかなと思います。楽しいと自分が思っているときって、そういう雰囲気が相手にも伝わるし、それで相手が共感してくれるなら、一緒にやろうかみたいな感じになると思います。

反対に夢中になれるものに触れる機会が少ない場合、水泳しかやったらあかんよって言われて、それではまったらいいんですけど、はまらなかったら水泳の世界しか知らない状態で進んでいくじゃないですか。サッカーもバレーも、なんでもあるよって選択肢を与えてくれる親やそういう環境があれば、やりたいことが抑圧されない可能性はあるけど、初めから水泳しかさせないと決まっていたら、抑圧される可能性があるんじゃないですかね。


☆夢中のきっかけはどこにある?

写真とか動画とかのメディアがきっかけになるのは良いと思いますが、夢中の中で本人が一番感じたい喜びとか楽しみって、自分が一人称として何かやったとき、主体として何かやったときに感じるものだと思います。

実際楽しいという気持ちになるのと同時に、その気持ち以外にも「こういう自分になりたい」や「それを通して変わりたい」とか、そういう副次的な要因が重なることもあると思います。

あとはそういう社会制度の中に入り込まないとイメージがわかないものもあると思います。たとえばオリンピックのテニスの選手に会ったから、テニスの世界がわかるわけではなくて、それはあくまでもその選手の魅力に気付いただけであって、本当にそこからテニスの楽しみやテニスによって得られるものを実感していこうと思ったら、テニス業界の中に自分が入り込んで、社会制度の中の一員にならない限りはわからないと思いますね。

その中でやれることなのか、やりたいことなのかというバランスを考えながら、自分で選んでいくものだと思うんですよ。

将来のことに関しても、インターンやボランティアがいいというよりかは、そういう制度やコミュニティの一員になったっていう自覚を持つのが大事なのかな。いろんなあり方が可能性としては考えられますが。

たとえば高校生を大学に連れていって、一緒にワークショップをやったりして、一つの目標に向かってみんなで協同しながら、機能しながらやっていくっていうプロセスをたどることで、短い時間だけかもしれないけど、感じられるものがあると思います。


☆最後に時任先生が考える夢中の魅力とは?

『夢中自体が本人のやりたいっていう気持ちと密接に繋がっている』という僕の考えに基づくのであれば、それはすごい幸せなこと、すなわち自分の豊かな人生に繋がると思いますね。

それは集中と夢中に僕は先程言ったような定義づけをしているから、そう思います。私は何となく仕事してお金をもらえたらそれが幸せやねんって人もいるだろうから、その人にとって僕の人生はあまり豊かじゃないかもしれませんが、僕の場合は集中してるだけの人生は面白くないと考えています。

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時任先生、ありがとうございました!

私たちの研究テーマである「夢中と集中の違い」や「夢中へのアプローチ方法」などのお考えが聞けて、とても勉強になりました。

夢中ジャーの研究はまだまだ始まったばかりですが、これからもたくさんの素晴らしい方々の考えに触れ、夢中への問いを深めていきたいと思います!

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