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2024/03/27【梅】

梅の花を摘んで集める。
枝の棘は指を刺す。

夢の中で、奥の間の襖を開けると春の庭が見えた。
裸足のまま庭に出ると、古い平屋がある。
縁側には白い着物の女が座っている。
女は自分の横を指さして座れという。

花をすすいで沸騰するシロップと一緒に瓶へ詰める。
梅の花は透明なガラス細工に変わる。

襖の向こうはいつ開けても春だった。
季節が明け、再び春が来て、また冬になっても女の外見は変わらなかった。
毎年私を待っている。
私はそのうち、襖を開けることを忘れていった。

梅の花が馴染むころ。
瓶の液体は次第に赤くなっていく。
花の香りがより強くシロップにうつる。

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