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トランスレーションズ展を咀嚼する

最近「何でもかんでもやってみよう、動いてみよう、参加してみよう」と色んなことに手を出している。手を出したはいいもののやりっぱなしで、身になっていないような気もする、

食べる行為に置き換えてみると、ただ丸飲みしてる感じ。一生懸命シェフが作ってくれた美味しい料理もしっかり咀嚼しないと、素材にもシェフの創作にも感謝することができない。

というわけで、しばらくの間「咀嚼」をテーマにnoteを書いていこうと思います。

よく噛み砕いて、隅々まで味わって、自分の身体に消化させていきます。

今回はトランスレーションズ展の参加の所感まとめです。

〈トランスレーションズ展 「わかりあえなさ」をわかりあおう〉

【所感まとめ】
「翻訳」とはーある言語で表された文章を他の言語に置き換えて表すこと。また、その文章。(goo辞書)

辞書にも綴られているように、言語同士の翻訳は馴染み深い。旅先の国で分からない言葉をGoogle翻訳にかけるとか、洋画に日本語字幕がついているとか。

トランスレーションズ展では、生活世界の様々な場面を切り取り、多様に翻訳を定義している作品が展示されていた。そうか、それも翻訳と言えるのか、と。

例えば
■ontena
音を振動に翻訳し、振動で音を聴くという、音の聴こえない人たちでも音を感じられるデバイス。音の聴こえない人に限らず健聴者の音の感じ方にも変化をもたらし、ともにコミュニケーションを切り開く可能性を持っている。


■翻訳できない世界のことば
イラストレーターのエラ・フランシス・サンダースが、世界中の翻訳できない表現を集め、イラストともに紹介する本。本展示会では作家本人が厳選したイラストが展示されている。あまりに感動してしまい、本購入。


■モヤモヤルーム
こころのモヤモヤ(複雑な気持ち)を語り合うワークショップにて、参加者のこころの内側を翻訳するためにグラフィックレコーディングを実施。語る→視覚化する→グラレコを囲んで対話する様子が映像にまとめられている。


■・・・のイメージ
手で雲の形を作ったり、雨を降らす動作をすると、スクリーン上に雲や雨のビジュアルが生まれる映像作品。音の言語では「雨が降る、雲が生まれる」と名詞や動詞が分けて表されるが、視覚の言語では一体となって表現されていく。

紹介しきれないが、この他にもたくさんの作品があり、また冒頭で展示されていたGoogle翻訳の示唆は非常に考えさせられた。

展示会冒頭のパネルに掲載されていたことを咀嚼してみる。私たちには身体があって、外界があって、いつも外界から何らかの刺激を受けて生きている。「ああ今日は何て素敵な日なんだろう」こういう感情ひとつとっても、外界の情景を自らの文脈に落とし込んでいる=翻訳しているのだ。

でも、その時の情景や状況、事実をうまく言い表したり、表現できないこともある。何でか分からないけどムシャクシャしたり、モヤモヤすることもある。というか日常そんなことばかりだなあとも思う。

この展示会は異なる性質を持つもの同士の分かり合えなさを許容している。例えば「英語のこの単語は日本語で直訳するとニュアンスが変わってしまうんだよなぁ」とか。分かり合えないことやそこに生まれる誤解、溝、そんなものもまた翻訳の醍醐味だという。

そうか、翻訳の本質は結果にあるんじゃなくて、過程にあるのかと気づく。

分かり合えないことを許容しつつ、どのような言語を使って情報を伝達・受信し、相互に新たな関係性を働かせてみるのか。送り手と受け手の架け橋になる言語というのは、絵かもしれないし、振動かもしれないし、匂いかもしれないし、ジェスチャーかもしれない。

グローバリゼーションやテクノロジーの進歩により、世界に境界線がなくなり始めている。同時に、パンデミックにより世界は新たな秩序を作り上げなければならなくなっている。また、差別問題、多様性の尊重、生態系の維持など、異なる性質を持つ動物・人・モノの関係性を再構築するにあたって、翻訳という行為は非常に重要な役割を担うのではないか。

でもそれは、翻訳の結果を急ぐのではなく、翻訳の本質はあくまで過程だと認識し、「ちょっと私たちわかり合ってみない?」と様々なアプローチに取り組むことが重要なのだと感じた。

そんなアプローチを多々見て、デザイナーのお仕事って翻訳そのものだよなぁと感じたり、現在ビジュアルプラクティショナー講座というものを受講していることもあり、ビジュアルやグラフィックの力を信じ続けてみようと勇気をもらったりした。

こちらの展示会、会期が3月までということで、会期中あと2回くらい参戦したい、そんな気持ちになりました。

もぐもぐムシャムシャ、咀嚼できたかな?
また別の機会にも、咀嚼してみようと思います。

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