2021.12 良かった新譜

8枚、A→Z順、日付はリリース日です!


xEDENISGONEx - The Cold Tomb Of Decomposed Utopia
(Album, 2021.12.3)

正体不明の覆面エッジメタルバンドによる2nd。個人的な年間ベストリリースのひとつでもあった昨年リリースのEP「Scattering Of My Malice」により発売前より上がりまくっていた期待にバッチリ応える快作。厳格な単音リフの応酬もさることながら、#5「Never Sleep」では邪悪さだけではない叙情性も存分に放ち、今後の作品で更なる発展を遂げる可能性も感じさせてくれます。
余談ですが、ミュージシャンが「覆面」で活動するのって、何かしらマーケティング的ないやらしさを感じるので個人的にはあまり好きじゃない。が、エッジメタルっていうかなり固い主義が要求されるジャンルに、これまた複雑な思想が絡むブラックメタルの要素を取り入れ、それを覆面でやるという彼らの場合、何か明確な意図があるのかもしれない。主義・主張を超えたエッジメタルやブラックメタルの音楽的価値をアピールしようとしているならば、それは良い試みだと思います。自分はエッジメタル好きだけどストレートエッジを実践できてるわけではなく、そんな人間がバンドの音源を聴いたりマーチを買ったりしていることは搾取的なのでは?と後ろめたさを感じることもあるんだけど、一方でこんなにカッコいいジャンルを放っておける勇気もない。xEDENISGONExのミステリアスさは、そんな自分を試しているような緊張感がある。


Former Hero - footpaths
(Album, 2021.8.27)

俺も聴き逃してたけど、Porter RobinsonやSan HoloにEDMの未来を感じた人ならば必聴ですね。ただオーガニックな要素を取り入れたEDMというよりは、ポストロック〜エモをEDMのサウンド・組み立て方でやってる、みたいな印象強め(局所的に完全にバンドサウンドになる部分もある)。ブラストビートが飛び出す#7「Endseeker」や長尺の#8「Gone Dream」(8分)、#10「Viaduct」(7分半)など前述の2人にはない振り切り方、気持ちが良い。


life - coma garden
(EP, 2021.12.18)

Sadness名義での活動で知られるDamián Antón Ojedaによる激情。前作まではローファイな録音が特長でもあったようだけど、今作では#4「coma garden」にその名残がある程度で、その他は割と聴きやすいサウンドにまとまっている。#3「i want to go home」などはエモっぽいイントロからモッシュパート的な箇所もあり取っ付きやすいが、作品全体では5曲28分とこの手のサウンドにしてはやや長尺気味?で、ひたすら陰鬱なムードが漂う時間も長い。その分、鋭い演奏が静けさを切り裂くカタルシスは大きい。闇をさらに深い闇で塗り潰すような、絶望の美しさ。


No Bragging Rights - No Bragging Rights
(EP, 2021.12.3)

一撃必殺・叙情/Melodic Hardcore。開始10秒でガッツポーズ確定。テクニカルでエモーショナルなギターフレーズに一瞬で胸打たれること間違いなしでしょう。クリーンボーカルもいやらしくなくキャッチーで素晴らしい。2021年はCounterpartsのリリースがなかったけれど、これで安心して年を越せますね。


Reol - 第六感
(EP, 2021.12.15)

スマッシュヒットしたシングル「第六感」収録の2ndミニアルバム。1stミニアルバム「虚構集」がそうだったけど、さまざまなクリエイターと関わるほど他でもないReolさんのスキルの高さ・器用さがこれでもかというほど証明されていくのが本当にカッコいい。巧みなフロウ・やりたい放題の多重影分身コーラスワーク・鋭い言語感覚と押韻など、Reolさんの声一つで作品がどんどん転がっていく爽快さ。でもやっぱりGigaとのコンビが抜群にハマるね。


Sadness - _____
(EP, 2021.11.5)

ワンマンデプレッシブ・ブラックゲイズ。前述のlife名義などでも活動しているDamián Antón Ojedaのよるプロジェクト。この手のサウンドにしてはかなりキャッチーだと思う。てか、思い切って言ってしまうとBMTHを彷彿とさせるものあると思う。#2「orange love」は「Throne」だし、#4「i can't say goodbye」のアンビエントなシンセパートは「Sempiternal」期っぽいテクスチャ。あとアニソンみたいな転調あるのも面白い。メタルコアリスナーにとってのブラックゲイズへの入り口になり得る作品かもしれません。凄く良かったから他のアルバムも聴きたいんだけど、2014年活動開始で既に30作以上リリースしてるってどういうこと...。


Situasion - I would prefer not to
(Single, 2021.12.13)

こういう作品に対して、「アイドルがコアな音楽やってる」というだけで高い評価を下すようなことはしたくないと思っています。で、それを踏まえた上で、各曲の純粋なサウンドの快楽性の高さ・4曲シングルながら作品としての構成の美しさ、素晴らしいですよね...。アイドル離れしながら、「アイドルならでは」でもある。これが単なる企画盤的立ち位置だったら寂しい、是非この方向性でフルアルバム聴きたい。アイドル界の「OK Computer」ないし「KID A」の誕生を心待ちにしています(タイトル曲はRadioheadライクなロックバラードなので、アイドル聴かない人も是非チェックしてみてください)。


So Hideous - None But a Pure Heart Can Sing
(Album, 2021.12.3)

オーケストレーションや時にジャズのエッセンスを加えたポスト・ブラック〜スクリーモ。ブラックゲイズ以降の時代において、ストリングスやホーンなど室内楽的なサウンドにこだわって壮大さを演出するのは意外にも珍しい?コンサートホールで聴きたいエクストリームミュージック。

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