2021.08 良かった新譜

7枚、A→Z順、日付はリリース日です!


Billie Eilish - Happier Than Ever
(Album, 2021.07.30)

前作と比べ、統一されたムードがあり、アルバム通しての聴き心地がかなり良くなった印象。そして、これまでのBillie Eilishのイメージ全てを前振りにしたかのような、タイトル曲「Happier Than Ever」の美しさは筆舌に尽くしがたい。ほぼ同時期リリースのglaive「all dogs go to heaven」エンディングでの壮大なコーラスと、「Happier Than Ever」のスタジアムフレンドリーなサウンド。パンデミックの中、それぞれのベッドルームから開けた空間への共通の欲望が浮かび上がってくるのは面白い。


G.Brenner - Brushfire
(Album, 2021.08.20)

アートワークが示す通り、土臭くもあるが、超現実的でもある。多くの楽曲で、気候変動への不安や環境災害への無力感がテーマになっているとのこと。確かに、途方もない美しさと、それに突然突き放される無残さがそのまま音になっているような、壮絶な作品。


KANDARIVAS - BLOOD SURGICAL DEATH
(Album, 2021.05.21, Grindcore)

和太鼓を取り入れたエクスペリメンタル・グラインドコア。前のめりなパーカッションサウンドでの疾走は、Slipknotを思い起こさせる迫力あり。「This album was created on the frontlines of the medical systems collapse fighting COVID-19」とのことで、医師でもあるメンバーからの声を含め、ある立場を選んだ上でのポリティカルなメッセージが込められているのかと勝手に推測していたけど、叫ばれる日本語詞は、より生々しい死への接近の描写であり、もはやホラー的な内容と言っても良い。そりゃ本来、感染症への恐怖に右も左もないわな...。


Phinehas - The Fire Itself
(Album, 2021.08.27, Metalcore)

Sailing Before The WindのBitokuさんが「ディレイ」に着目したレビュー記事を上げていたけれど、確かに聴けば聴くほど、細かいプロダクションへのこだわりがこれでもかというほど感じられる、丁寧に組み上げられた城のように隙のないアルバム。リフの構築、パンの振り方、ミックスの押し引き...他のどのジャンルでもそうなんだけど、メタルコアは、作曲と同じくらい、サウンドメイクを聴くべき音楽なんだなと気付かされた(今更?と言われそうですが今更です...)。


Serpent Column - Katartisis
(Album, 2021.08.27, Avant-Garde Black)

昨年リリースのEP「Endless Detainment」は、オールタイムベストクラスの超傑作で、ブラックメタルへの興味を大きく広げてくれたという意味でも、文字通り僕の人生を変えるレベルの作品でした。今作は、よりメロディックかつグルーヴィーになり、人智を超えたようなカオスさはやや減退した印象(それでもなお意味わからんけど)。このクオリティのリリースを毎年続けているのはただただ恐ろしい。あと、#4「Subduction」の終盤で嫌がらせとしか思えないような鬼音量でのノイズが響くの、こんなのアリなんだ...って笑っちゃう。本当怖いよ。


Tinashe - 333
(Album, 2021.08.06)

音数の少ない先鋭的なビートに対して、常に正解のフロウとメロディーを回答し続ける様がとにかく快感でしょうがない。大手レーベルを離れインディペンデントでの活動を選んだスタンスもカッコいい。みんなもこれ流して踊り狂いながら皿を洗ったり洗濯物を干したりしましょう。


Turnstile - Glow On
(Album, 2021.08.27, Hardcore Punk)

ストレートなハードコアパンクに、R&B・ドリームポップを交え、ラテンのエッセンスを練り混ぜたサウンドは、わかりやすくも斬新。異ジャンルの融合が当たり前に求められる現代の音楽シーンでは、折衷とは円熟であり、技術の獲得であり、「ハイブリッド」と「プリミティブ」は対義だと誤解しそうになる。それだけに、ハイブリッドな感覚とプリミティブな衝動は当たり前に共存し得るということをハッキリと示すこのアルバムにはとてつもなく打ちのめされた。かつてフュージョンのコピーを演奏していたBad Brainsは、ラモーンズに胸を打たれパンクを志し、ボブ・マーリーのライブに衝撃を受けてレゲエの要素を取り入れたという。そんな先達すらも軽やかに飛び越えんとする傑作。






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