2021.10 良かった新譜

10枚、A→Z順、日付はリリース日です!
メタルコアやエモなど多め


Archspire - Bleed the Future
(Album, 2021.10.29, Technical Death Metal)

ビックリ人間メタル。個人的にもオールタイムベストの一枚である前作「Relentless Mutation」にはインパクト・キャッチーさでやや劣る(前作より一聴では掴みづらい)とは思うが、そのテクニックは更に向上してる。向こう3年分くらいの大量の音数を30分で味わえるのでコスパ良し。何より相変わらずOli Peters(Vo)の早口吐き捨てボーカルスタイルのオリジナリティは凄い。ギターベースドラムどれを取っても超人的な超絶技巧にも関わらず、メロディーをなぞらないデスボイスボーカルで1番目立ってしまっているのはちょっと異常。


Dying Wish - Fragments of a Bitter Memory
(Album, 2021.10.1, Metalcore)

KsEやAILDを彷彿とさせつつ、さらにアグレッシブで獰猛に突進し続ける気持ちの良いピュアなメタルコアアルバム。出てくるリフ全部カッコいい。要所で差し込まれる甘めのクリーンボーカルも、かなり良いバランスで絶妙なアクセントになっており好印象。


Ice Nine Kills - Welcome To Horrorwood: The Silver Scream 2
(Album, 2021.10.15, Metalcore)

タイトル通り、前作「The Silver Scream」の続編に当たる、ホラーコンセプトのアルバム。全曲思いっきりカッコ良すぎて、逆に評価難しい。
Ice Nine Kills、奇跡のようなバンドだと思う。
10年超やってきたバンドが、これだ!って路線を決めて活動し始めて、それがカッチリハマるって、とても簡単なことじゃないでしょう。そもそもホラーとメタルコアの食い合わせの良さを活かしすぎてる。曲中でも自虐的に?語ってるけど、 "Scene"なサウンドをやる上で、ホラーを演じることで、若造りをせず思いっきりメタルコアできる=「シャバく」ならない理由付けが出来たのは強すぎる。セルアウトするのか、オーセンティックさを獲得するのか、そのどちらでもない新たなメタルコアバンドのあり方を発見してしまった、稀有なバンド。


Johnny Football Hero - Complacency
(EP, 2021.7.16, Emo)

DoglegやOrigami Angelなどに代表される5th Wave Emoからの刺客。5th Wave Emoって要するに「お笑い第7世代」的な意味の言葉なんだけど、こういう括りが当たり前に使われるようになったということが、Emoが流行として消費されるフェーズを既に通過したことを表してるように思います。ほんでこのバンド...良すぎる!!!!!!! 拳突き上げ・合唱系のファストでハードコアなナンバーから、トゥインクルでテクニカルなマスフレーズ、Mineralのような低音調理の泣きチューンまで、("Emo"という括りの中で)幅広い楽曲に、激烈に熱いシュレッディングギターソロを搭載。何度も大声を出しながら聴きました。情熱的なサウンドにソウルフルな歌唱で、NOT WONK「dimen」とも共振する瞬間あり。


Knocked Loose - A Tear in the Fabric of Life
(EP, 2021.10.13, Hardcore ~ Metalcore)

実は今までそんなにKLにハマってなかったんだけど、今作は1曲目のイントロからガッチリ掴まれた。デスコアに片足どころか両足膝くらいまで突っ込む不穏で重々しいサウンドで、コンセプトアルバムらしい緊張感が全曲通して保たれている。The Beach Boysのサンプリング(?)やSEも、映画を観てるような没入感の演出に寄与してますね(本EP全曲を使用したアニメーションショートフィルムが公開されてます)。暴れるだけじゃなく浸れるビートダウン。


Ringwanderung - synchronism
(Album,2021.07.28)

2019年結成のアイドルグループによる1st。全曲に通底するサウンドスケープから、とにかく「歌を立たせたピアノロックをやりたい」という意志がビシバシ伝わってくる。そして、やりたいことがハッキリしてるというだけでもライブアイドルシーンにおいては大きな強みになると思うんだけど、それにしてもとにかくこの方向性が上手くハマっていて素晴らしい。
オリジナルメンバー・唯一の一般公募以外での参加である「みょん」は、結成前にカラオケバトルの番組にも出演経験があり、デビュー前から歌唱力のついては折り紙つきだった模様。つまり、演者の武器を活かしたサウンドが適切に選択されているわけだけど、コンセプトが先行することが多いシーンにおいてこういう健全なプランニングは意外と珍しい。
そして、ライブ映えを意識するあまりアレンジの情報量や音響的なバランスがトゥーマッチになりがちなロック×アイドル楽曲というジャンルでありながら、派手な装飾のない鍵盤を中心に据えることでそこに絶妙なブレーキをかけて、ギリギリピークを超えずにアルバム1枚をするりと聴かせるバランス感がとにかく巧みでクセになる。
ライブも最近3回ほど観る機会があったんですが、やはり歌を立たせるパフォーマンスで、メンバーさんがそれぞれの見せ場をバッチリ決めていく様がとてもカッコよかったです!


Save Face - Another Kill For The Highlight Reel
(Album, 2021.10.29, Pop Punk ~ Emo Pop)

マイケミの新譜です。...って言われて聴かされたら疑わずに全部聴き通しちゃうかもね。そのくらいの開き直りが感じられて面白いんだけど、実際この「開き直り」っていうのがまさに今、現代のシーンのムードなんだろう。
オーバーグラウンドではAvril Lavigne再評価・ポップパンクとヒップホップの蜜月のクロスオーバー、アンダーグラウンドではSeeYouSpaceCowboyとIf I Die Firstが牽引する00年代メタルコア・スクリーモ回帰やHyperpop世代の強引なジャンル横断、全部「好きなんだからいいじゃん!」っていう無邪気な欲望(そして、その開き直りの極地が、"お父さんルックス"で自身をネタにし続けた挙句「Still Sucks」なんて名前を冠したLimp Bizkitの新譜!)。
でも去年ラブサマちゃんの「THE THIRD SUMMER OF LOVE」やTORENAの「PURE FIRE」を聴いた時に実感した通り、ルーツや興味に素直にぶつかった作品ほど素晴らしいものはない。
他のアーティストの話ばっかりしてしまったけど、「Three Cheers for Sweet Revenge」と「The Black Parade」の良いとこ取り的な、全曲マイケミのリード曲に匹敵するキラーチューン揃いの満点シアトリカル・エモ・ポップアルバムです!


The World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To Die - Illusory Walls
(Album, 2021.10.8, Emo)

エモリバイバル代表格。ながーーーくて感傷的なバンド名とは裏腹に、音楽性はそこまで取っ付きづらいわけでもない。Owen〜近年のAmerican Footballライクなメロディーと歌唱に、キャッチーで時にアグレッシブなリフ、いずれも良質。
トラックリストで目を引くのが、クライマックスの15分39秒と19分44秒という2つの大曲で、この2曲だけでアルバムの尺半分近くを占めている。ただこれらも構成自体は至ってシンプルで、展開も少なく、美しいながらも地味でやや引き伸ばし感もある...んだが、それがかえって、曲中の"I can't live like this, but I'm not ready to die"というフレーズのような、生へのネガティブな執着のリアルさを際立たせているし、それによってバンド名に逆説的な意味を持たせているのが凄い(世界は美しい場所で、私はもう死ぬことを恐れない→でも世界って本当に美しい場所か?)。この感覚は、Parannoul「To See the Next Part of the Dream」の、中盤以降大きな盛り上がりを見せることなくそれでもアルバムが続いていくあの気だるい心地よさに近い(あのアルバムは、燃え盛ることなく尽きてしまう虚しさみたいなものを描いていると思うので)。


Wage War - Manic
(Album, 2021.10.1, Metalcore)

前作までに引き続き、とにかく緻密で良質なプロダクションに圧倒されるメタルコアアルバム。聴くたびに新たな仕掛けを発見する深い作り込みに驚かされるし、特に個人的にはボーカルの処理がめちゃくちゃ良いと思う。それが顕著なのがクリーン主体のミディアムナンバー#9"Never Said Goodbye"、サビのコーラスワークがめちゃくちゃ良くて、メタルコアのアルバムにこういう曲いらんねん!と言いかけた口を思わずつぐみました。


Wave Racer - To Stop From Falling Off The Earth
(Album, 2021.10.29)

Future Bassシーンの立役者による、活動8年目にして初のフルレングス。Porter Robinson、San Holoに続いて、「2021年=ポストEDM(あるいはポストFuture Bass)元年」の印象を決定付ける一枚(新木場ageHa終わる前にこの3組でイベントやりましょう)。ただ、EDMのサウンドと方法論を内側から解体し、オーガニックな音世界に未来を見出したPorter、ポストロックやEmoとの親和性を発見したSanと比較すると、Wave Racerのアプローチはやや異なっているかもしれない。あくまで主軸はThe 1975印のギターポップで、一歩離れたそこから、Future Bassを見つめ直しているような印象(ちょーーーーーー印象論)。そして純粋に良い曲多すぎて凄いよ。

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