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服飾専門学校には行くな!

おそらくこの記事を読んでいるあなたは服やファッションが好きで服飾専門学校への入学を考えている真っ只中。でもなんか気になってこのノートをクリックしてしまった。
あなたは運がいいです。
私はこれからあなたのことを救います。

では最初に軽く自己紹介をします。
私は大阪のある服飾専門学校に4年間在籍し、2年生が終わったタイミングで1年間休学しました。その休学期間中は東京のファッション系の私塾に半年間通っていました。なので実際に服飾専門学校に通っていたのは3年間です。そして卒業し、専門士の資格を頂きました。(ちなみに4年間通うと高度専門士という資格が与えられます。)

ざっと私の自己紹介を終えたところで、タイトルには"服飾専門学校には行くな"と書いたものの、もちろん専門学校が合っているという人もいてるので、まずどういう人がそれに当てはまるのかを説明します。

服飾専門学校が合っている人

縫うのが好きな人

この方は専門に通うことをお勧めします。縫製が好きでオートクチュールのような細かい手仕事で作られるジャケットやドレスを自分の手で作りたい。または、将来縫製工場で働きたい、国内有名ブランドの縫製に携わりたい。そんな人は専門学校の卒業という資格による信頼や、学校からのパイプもあるので希望する進路に進むことに生きるでしょう。

パタンナーになりたい人

こちらも専門学校に通うと良いと思います。
パタンナーとは服を作る際の型紙(パターン)や設計図を作る仕事のことです。だいたいの学校にはパターン専攻など、パターンに特化したコースが設置されていると思うのでそこに入ると良いと思います。日本のファッションは洋裁が文化の根幹にあるので、自分の服を自分で作る人が昔から多かったこともあり、型紙を引くことに関して言えば専門で多くを学ぶことが出来ると思います。

それら以外、

特にファッションデザインをしたいという人は"専門学校には行くな"と私は強く言いたい。


では私が服飾専門学校をお勧めしない理由をこれから説明します。

学生のレベルが低い

まず受験がないのでもちろん専門の学生のレベルは低いです。例えば、イギリスのセントラル・セント・マーチンズ(CSM)はまず受験があり、その後ファウンデーションコースというコースで約1年間アートの基礎的なものをすべて経験します。そして先生からの勧めを参考にしながら自分の希望する学科へ再度出願、受験をし、その学科へ入学して大学課程が始まります。つまり学校や学科側が一定の基準を満たした者を選抜している+世界中から受験者が集まるのでもちろんレベルは高くなります。
それに対して、日本の専門学校はそういった美的感覚に関するセレクションは一般的には行われないので、基本的に誰でも入学できる状態にあります。つまり自分の作品を持っていない、全く絵が描けないといった初心者がクラスの大半を占めます。学校は「入学時は絵も描けなくて」とか「初心者からでも教えてもらえる」という生徒の声も売りにしながら学生を集めますが、もっとレベルの高いクラスメイトと切磋琢磨して自分を磨きたいという人には専門学校は全くおすすめできません。

教員のレベルが低い

これに関しては私の主観をかなり含むのですが、問題だと感じていたのは、学生の感覚と教員の感覚に差があり、どういう採点のされ方をしているのかが曖昧であるというところです。
しかもその採点基準が本質的で世界基準で結果を出しているのであれば信じて従えば良いのですが、そういうわけでもないのです。
(例えば学生が中心の国際的なコンペティションではITSが有名ですが、そこのファイナリストになるのは日本人だと私の通っていた私塾からか海外の学校に通ってる日本人がほとんどで、それらに通わず日本の専門学校だけ通ってファイナリストになっている人はほとんどいません。)

まず教員の平均的な年齢は40〜50歳ぐらいだと思います。この年齢の人たちが20歳前後で見てきたファッションというのは、今から20〜30年前のものだとすると、90年代のファッションが中心だと思います。つまり90年代のファッションが彼らの良いファッションの基準となっていて、その基準で課題を課し採点をするので、今のファッションとはやはり良し悪しの基準が違います。

(90年代と言えばマルタン・マルジェラやアントワープ6、フセイン・チャラヤンなどが中心でした。特にマルタン・マルジェラやアントワープ6は日本のファッションに大きく影響を受けたと公言しているので、80年代の日本のブランドであるコム・デ・ギャルソンやヨウジヤマモトに対して過度なリスペクトをしているのが今の専門の教員世代であると言えます。この時代はギャルソンの流れからコンセプチュアルの時代でした。当時のギャルソンのコンセプトは、西洋のファッションシステムに対してカウンターを狙ったもので、煌びやかなモードに対し黒くてボロボロの服をフランスモードに持ち込み一世を風靡しました。つまりギャルソンは発表の仕方に重点を置いてこのコンセプトを当てているわけですが、なぜか日本の専門の教員はコンセプトを一貫させすぎる弊害も考えずにファッションの本質的な部分を無視して"服を作る段階"にコンセプトを強く要求してくるのでファッションを現代美術か何かと履き違えているのです。Lyst Index調べでも2023年第4四半期のブランドランキング1位のPRADAや2位のMiuMiuなどがコンセプト頼りであの服になるわけがないので、コンセプチュアルの観点から見ても今のファッションとは考え方から大きくズレています。)

また今の時代特有ですが、インターネットの影響も大きいです。これから入学を考えている方は特にインターネットネイティブと言われる物心ついた時からインターネットに触れてきた世代の方がほとんどだと思います。ここで学生と教員との日々触れている情報量の差が良し悪しの判断にも影響してきます。時間があればInstagramやYouTubeをみて無意識にでも情報を大量にインプットしている学生の世代と、スマホの操作もままならない世代では良し悪しの判断基準の参考になる情報量が圧倒的に違います。このせいで学生は教員の採点基準に疑問を抱いたり、曖昧だと感じりするのです。
自分の能力を発揮できない歯痒さを感じたくない方、ファッションを分かってる人にしっかりしたアドバイスを貰いたい方は専門学校への進学は今すぐやめましょう。

図書館がない

これは驚く人も多いかと思いますが、専門学校は大学と違って研究機関ではないので、図書館が制度上作れないのです。だから必要だと感じた書籍や資料は全て自費で用意する必要があります。
リサーチは物を作る人間にとって必要不可欠であり、一番大切であると言ってもいいプロセスです。しかし、インターネットやPinterestでの検索は狙った物を調べるには優れていますが、本棚で偶然見つけたり、インターネット上にない作品の画像や写真、テキストにはもちろん触れることはできないので、もっと深掘ったリサーチがしたい場合やはり図書館は学生にとって必要だと言えるでしょう。
(東京文化だけは例外で、文化学園大学が母体にあるので図書館が存在し、最新の国内外のマガジンや、かなり前まで遡れる雑誌のアーカイブや買うと数万するファッション関連の本はもちろんファッション以外の分野の本や資料が大量にあります。)

さいごに

ここまで読んでいただきありがとうございます。
私が実際に3年間服飾専門学校へ通った率直な感想としては、私の目指している方向と専門学校の方針がマッチしていなくて、頑張ろうとすればするほど自分の成長の邪魔をされているのではないかと感じるくらいの環境でした。
上記を参考に服飾専門学校への入学を考えている方は、熱意のあるあなたこそ、今一度よく考え直してみてはいかがでしょうか?

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