Oasis再結成

と聞いて、中島みゆきとOasisしか聴けないという恩師のことを思い出す。

歌詞について考えすぎてしまうので、その2アーティストの音楽しか聴けなくなってしまったらしい。

先生ひとりで教えている個人塾。思い出せる先生の顔はいつもげっそりしていた。最近はようやくアルバイトを雇うようになったらしい。過労死を勝手に心配していたので、勝手に安心した。

わたしが中学受験をしたときから先生にはお世話になっている。

「何を教えられるの?」という質問に、「なんでも教えられます。」と答える人。

わたしが本を読むようになったのも、哲学科に進学をしたのも、Oasisを聴くようになったのも、ぜんぶ先生の影響だ。

何を考えているのか分からない、淡々と教える物静かな人、というのが最初の印象。心の中でうわ〜、京大生っぽい〜!とか考えていたと思う。ただ教え方は学校にいるどの教師よりも上手だった。学校の先生は自分の得意な1科目しか教えていないはずなのに、理解できないことしかなかった。でも、恩師の教え方で理解できないことは今までに一度もなかった。

そんな先生と授業の合間に話をすることが小さなたのしみだった。色々な話をした。先生の家族の話、わたしの家族の話、先生の学生時代の話、わたしの学校生活の話、音楽の話、政治の話、愚痴、相談、諸々。

気がつけば人生の半分以上の付き合いになっていた。わたしは先生のような賢い人になりたいと思っていたし、今でも思っている。

死にたかったとき、その域をもう越えたと笑った先生の顔が忘れられない。はやくそこに追いつきたい、その一心で先生と同じ哲学科に進学した。きっとなにか変わるだろうと信じていた。

鷲田清一の文章が出てきたら一緒に文句を言いながら解説してもらう時間が好きだった。

世界史の資料集にでてきた遺跡を眺めながら、いつか見に行きたいと思いを馳せる時間が好きだった。

先生がわたしの言うことを否定したことは一度もなかった。どんなに最悪な感情も、頷いて聞いてくれた。そして必要最低限の言葉だけをくれた。

高校生のとき、パソコンを持った大学生がレポートを教えてもらいに教室に来ているのを何度か見かけた。先生は自分でやれ〜とか言いながらも、ちゃんと手伝っていた。あのとき、わたしは先生に頼るような大学生にはならないぞ!と強く誓ったけど、実際にそうなってみると先生に泣きつきたい気持ちでいっぱいで、何度もLINEでメッセージを打っては消すみたいなことを繰り返している。

家族でも友だちでも恋人でもない、ぬるま湯みたいな温度感で保たれた先生との距離がとても心地いい。

Oasis再結成と聞いて、そんなことを思い出した。

はやく追いつくよ、がんばるよ

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