雑詠・その他の投句など/川柳（2022）

■ジャイアンフェスティバル

「ジャイアンフェスティバル」だけで通じる国

Wi-Fiの弱いジャイアンフェスティバル

フロッピーディスクにジャイアンフェスティバル

■兼題「踏む」

桔梗草踏めば昭和が盆踊り

■雑詠

有象無象祭り囃子の日が暮れる

■兼題「チーズ」

鳴き声がアンパンマンを悩殺し
（推敲案：犬小屋にアンパンマンの骨隠し）

こんばんは挑戦的なチーズっ子

遅刻した華美な大人の風と乳

写真にはハンダ付けした八木宏

徹夜明けカマンベールに彼岸花

■兼題「飲む」

戯れに孤独をお湯で割ってみる

蝉鳴けばあなたがワインだった頃
（推敲案：蜩にあなたがワインだった頃）

■連作「宝塚」

脳みその炭酸の泡夢うつつ

瞼合わせれば蹄音響かせて

ピンボケの甘い香りの遊園地

電車館ボクらの真のボスでした

鼻の奥残る立体動物園

■兼題「怖い」

ころすしかないのあのこを守らなきゃ

梅田駅透けた右手に気がついて

■連作「どんな漢字だっけ？」

やって来るパーマをかけた虫刺され

隙あらばパーマをかけたティーカップ

帰省するパーマをかけた万馬券

食べかけのパーマをかけたペガサスに

月跨ぎパーマをかけた抽象画

傷ついたパーマをかけたかき氷

申請者パーマをかけたレインボー

井の中のパーマをかけた糸電話

特売日パーマをかけた私小説

ネタばらしパーマをかけた我が命

■兼題「滝」

築古の我が家に月は出ているか

スイートにデニールの滝　本部長

グラスにはまだエメラルド・フロウジョン
（推敲案：グラス拭くまたエメラルド・フロウジョン）

午前二時人生サロン江戸瀑布
（推敲案：陽も落ちて水戸黄門の江戸瀑布）

思い出の滝の壺焼き滝じゃらし

川川川川川　川　川　※心

ミズカラヲミズミズサヨウナラワタシ

うたれたことでうまれ変わるか

■雑詠

幸せな悪戯　虹の向こうでも

■兼題「数」

いちにのさん飛び込んだ夏　遠い夏

虚数って意味フメイってキミ　近い

■席題（写真を見て）

苔むした未来で開くジャンプ傘

なお遠く山のあなたのサンタたち

初恋は赤いキノコの森でした

■兼題「白」

ありがとねモフモフだった白い骨　※第5回ゆにゼミ句会 特選

一番手はじめましても下ろし立て

■兼題「コーヒー」

ロケットを缶コーヒーのもみあげで

追憶のココア珈琲ココは肘
（推敲案：追憶のココア珈琲ここは肘）

知っている違いのわかるダバダバダ
（推敲案：残酷絵違いのわかるダバダバダ）

雪しぐれ京平さんの淹れたてを
（推敲案：淹れたての京平さんに雪しぐれ）

熱湯粉紙並雫一休み

胸張ってクリープなんてなくたって

メタリカハメリタカリタカメリハリオ

切り裂きジャック豆から挽いて
（推敲案：豆から挽いた切り裂きジャック）

■連作「金木犀」

回り道金木犀の誘いに

思い出も金木犀を纏う風

金木犀に時と戯れ

金木犀はわたしになって広がって

終えたのは金木犀の夜でした

■兼題「館（やかた）」

出られない指名手配の美術館
（推敲案：出られない吉川さんの美術館）

原子力屋形舟ならペット不可

沈まない方舟　夏の武道館

おむすびころりんの館ココ上ガル

次に出来る平和記念資料館

ヤカタから輩やからや片や過多

切らないで　わたし羽化するサラダ館

閉館のお時間ですよ帆立貝

■兼題「魚」

塩焼きを綺麗に食べる人でした

シャッターに微かに残る鮮魚店

■兼題「川」

元栓は川に沈んだ海の上
（推敲案：箱舟は川に沈んだ海の上）

十二月賽の河原にオリンピア

匂わせと映えのウォータースライダー

きれいやろ祭りの夜に燃える蟹

旧姓も急な増水丼ブラ子
（推敲案：旧姓は旧字增水丼ブラ子）

朝礼のミャクミャク母に会いたくて
（推敲案：朝礼のミャクミャク母をははと書く）

どうせまたサンボンガワで消すんでしょ

淀みに浮かぶシフォンケーキ屋

■雑詠

火曜日は確かペンギンでしたよね

まつりぺきん　現代川柳　川柳