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夕暮れ、エモーショナルの意味

言葉の意味は時間が経つと変わっていくものであることを、成人してから知った。
国語辞典でも新明解は積極的に語句の意味をアップデートしていると聞く。その中にも本来の意味とはかけ離れた意味で使われている言葉が複数ある。

意味が変わって衝撃を受けた語句を挙げると「エモ」がそうだ。
いわゆる若者言葉と言われる「エモい」は例えば夕暮れに立ち会ったときのなんとなくいい感じがそうだというのを聞き及んだ。
それはそうかもしれない。わかる。
以下、引用。

エモいは、英語の「emotional(エモーショナル)」を由来とした、「感情が動かされた状態」[1]、「感情が高まって強く訴えかける心の動き」[2]などを意味する日本のスラング(俗語)、および若者言葉である。
Wikipediaより

Wikipediaの記事の中では「2016年に入り若者の間で「エモい」が使われるようになった要因として、「ストレートに感情を表現できないモヤモヤが増えたため」との指摘がある」ともある。

ストレートに感情を表現できないモヤモヤ、それはある。そしてそれもエモだと。
それをモヤモヤをどう落とし込むか、読書や対話で多少は解決しそうなものだが、まあそれは内省的な自分だからそう言えるのかもしれない。

エモか。
思うところがあってこの記事をしたためた。


私の中のエモのシンボルはロックバンドのeastern youth(以下、イースタン)だ。
伝説的ロックバンド。
知らない方はイースタンの名前をぜひ覚えて帰っていただければ、それだけでこの記事を書いた意味があります。


葬式で流してほしい「青すぎる空」、アルバイトで店長に理不尽なほど怒られた帰りに自転車に乗り泣きながら歌った「夏の日の午後」。
ただでさえイースタンはエモなのに、己のしょうもない思い出に乗せたことでさらにエモくさせてしまった。

ライブで青すぎる空が演奏されると周りの方々がだいたい涙している。わかる。
前述で表記しリンクを貼った「青すぎる空」は、『いずれ暮らしの果てに散る』で曲が終わる。
聴いたときの衝撃は「いずれ暮らしの果てに散るんだよな…」と鸚鵡返しでしか言葉にできなかった程だ。
生活を、日々の暮らしを、こんなに美しく表せるか。私にはできない。
これこそイースタンだ。

また、前述の夕暮れっぽいというエモの意味に寄せると、これも伝説的ロックバンドであるNUMBER GIRL(以下、ナンバガ)。
夕暮れ感を全面に出した曲がいくつもある。たとえば「DRUNK AFTERNOON」や「U-REI」。歌詞中で明確に夕暮れを表し、風景に佇む姿をも鋭いギターに乗せる。
エモだ。あれは、エモーショナル。
公式らしい映像が見当たらなかったので「日常に生きる少女」を上げた。

他にも人気曲の「OMOIDE IN MY HEAD」は飲んだ後、始発で帰ると朝焼けが白昼夢色に染まる曲。「鉄風 鋭くなって」は夕暮れが夜に過ぎ去って、夏から秋に変わるような冷たさがあるのに感情が、こう、ブチ上がる。そういう曲。

ROCK IN JAPAN 2002のライブ映像が観たくて観たくて、記録シリーズというライブアルバムBOXをお小遣いをはたいて買って、擦り切れるほど観ていた。ナンバガはずっと伝説として語り継がれる。


イースタンは最高で、ナンバガも最高。

話を戻す。

そもそも私が認識している「エモ」とはエモーショナル・ロックの略称である。
叙情的な歌詞が乗り、美しいメロディに魂の叫びが乗るような、とにかく感情を揺さぶられるバンドがエモだ。美しいメロに感傷が乗る。

しかし、イースタンを観た私が使う「エモ」とイースタンとかけ離れた場所に生きている方々が言う「エモ」はまるで違うらしい。
特にファッションの文脈でのエモが音楽性と違いすぎて、未だなおよくわかっていない。パンキッシュでゴシック。

これはイースタンでもナンバガでもない。パンクの要素はイースタンにあったし、ナンバガは特にベースの中憲さんがハードコア寄りの重さがあったのでポストハードコアとは言えるだろうが、どちらにせよ間違いなくゴシックではない。

たとえばNirvanaを代表とするグランジはバンドシーンでもあったし、ナード感のあるだらっとしたファッションを指すものでもあった。カート・コバーンが亡くなった後にそれらが少しずつ下火になっていった。
そういうものとも違う気がする。
グランジをリアルタイムで追っていないので、有識者から見たら的外れだとぶん殴られるかもしれない。
認識の差異があれば、ご教示ください。学びたいです。

ここまで書いておいて今更だが、バンドシーンはともかく、ファッションのムーブメントを理解していなさすぎるのか?という気付きを得てしまった。
My Chemical Romanceがそうならそうだな。

エモ系のバンド総まとめ!な記事を読んで、これは盤で聴いたものを挙げてみた。

At The Drive-In、Mineral、The Get Up Kids、Jimmy Eat World、Panic! at the Disco…

この中だとAt The Drive-Inが頭抜けて好きだが、どこがエモかと考えるとメロディックな部分か。
土台はハードコアと思う。
このバンドはMars Volta(うるさくて最高。2ndの『Frances The Mute』のジャケットの衝撃たるや。音の洪水と緩急。頭が痛いときに爆音で聴くともっと頭が痛くなりそう)のボーカルのセドリックがいて、そこから遡って聴いているバンドだからかもしれない。

どれもエモとして聴いていないが、聴き直すとエモ部分がありそう。
現時点で強いていうならMineral。mineralからBraidに行った。ポップ・パンクとして聴いていたかもしれない。
The Get Up Kidsはエモか…
他はエモか?エモなんだろうな。
エモ難しいな。

ライブを観ていたら「エモ!」となりそうだけど、ライブで熱量浴びたらだいたい「エモかったな〜!」とうきうき帰るので、ジャンルとしてのエモとして捉えてはいない。
スクリーモならまだわかるけど、エモを捉えるのはとても難しいことなのかもしれない。

それでも自分の中にあるエモは明確にエモだよ、イースタンとか、Climb The Mind(別の記事で書きたいすばらしいバンド)とかそういうのだよ、とぐるぐるしている。

雛鳥効果というだけの話をしているのかもしれない。

すべてを塗り替えられはしなくとも新たな知見を得たぞ!と今回の件でひとつ賢くなった気になれた。
言葉の意味は変わる。そして多重の意味を持つ、そもそも知らない言葉も出てくる。己の辞典に新たな単語が刻まれては使える語句が増えていく。
そして、言語化できないモヤモヤは、どこかで解決しておかないと知らない間に堆積して雪崩れ込んでくる。
いつか決着をつけたほうがいい。

総じて、価値観のアップデートができない人間はだっせえから、こいつだっせえな!と思ったら教えてもらいたいし、教えてもらえるような大人になりたい。

それだけ!
あとはイースタンユースのことを覚えて帰ってください。
ナンバーガールは今年また解散します。

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