【天声人語】数十年残っていた”魚の小骨”は辛かろう【感想】

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数分の”小骨”ですら辛いのに、数十年となると…。
誰しも昔の失敗は恥ずかしいし、思い出したくない。できることなら、忘れ去りたいことばかりである。
村上春樹さんは、40年という長い時間ずっと残り続けていた”小骨”を自力でとった。この世の中、大なり小なり”小骨”が残る人はいるだろうが、それを自分でで取れる人は何人いるのだろうか。

村上さんに残っていた小骨は、ご飯を飲み込んだり物理的な手段で取ることができない。自分の失敗や見たくないところと向き合い、戦わなければならないからだ。
この、「自分と向き合い、戦う」ということがどれだけの難易度か。

過去の失敗や後悔は、時間が助けてくれることがある。
学生時代の失敗、友達に言ってしまったあの一言、社会人時代のあの選択…。どれも思い出すと体の中がなんともいえない”じわじわ”感でいっぱいになるし、できることなら思い出したくない。
想い出がフラッシュバックするたび、なんともいえない感情になる。

私たちは、このような失敗や後悔を繰り返さないために学ぶ。ある意味、それが”小骨を取る”ことになるのかもしれない。
しかし、結局は学ぶことで失敗や後悔を上書きし、忘れようとするのだ。

村上さんは、これを新作として書くことで上書きし、決着をつけた。
新人時代から40年という時間。村上さんは「書き直せてホッとしている」と書いているそうだが、あえて40年間という長きにわたって”小骨”を残し続け、「今だ!」というタイミングで一気に抜いたのではないだろうか。

内容に納得できず、終止符を打つことができなかった、「小骨vs村上春樹」という40年間の戦いの決め手は、このタイミングだったのだと思う。
私たちも、村上さんのように”小骨”とうまく付き合い戦える人生を送りたいものだ。

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