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理想のフライドポテト

こちらは、「稀人ハンタースクール Advent Calendar 2023」に参加するために書いたエッセイです。カレンダーをクリックすると、「クリスマス」をテーマにした書き手のnoteを見ることができます。

誰しも居酒屋に行くとついつい頼んでしまうメニューがあると思う。枝豆、唐揚げ、冷やしトマトスライス、タコわさ、だし巻き卵・・・。私の場合は断然、フライドポテトだ。そう、聖なる夜にぴったりのメニュー、フライドポテトだ。

フライドポテトはじゃがいものカットの仕方によって、6〜10種類ほどに名称が分かれているらしい。ここではまちで出会う確率が高い2つのタイプについて考えてみる。細いポテト(通称マックタイプ)と太いポテト(通称三日月タイプ)だ。

マックタイプはどんどん手が伸びる。塩だけで十分おいしい。たまに細すぎるポテトがカリカリに揚がりすぎて、これはポテトというより油を食べているのでは・・・? という気持ちになるのが残念なところ。

三日月タイプは皮付きでホクホクしていて、しっかり芋を食べている気持ちになる。ただ細タイプと比べてカリッと揚がりにくいというかしんなりしやすいというか・・・ケチャップがあるといいなあと思うことも少なくない。

どちらのタイプにも、よいところとほんのちょっと残念なところがある。と、思っていたら、昨年ついに理想のポテトに出会ってしまった。家から徒歩5分、某店の「トスカーナフライドポテト」。スタイル的には太めの三日月タイプだ。注文が入ると店主はじゃがいもをザクザクと切り、ニンニク、タイム、ローズマリーとともに低温の油で30分かけてじっくり揚げる。

食欲をそそるニンニクの香ばしい匂いが店内に漂う。ジュワジュワ。パチパチ。あの鍋の中でなんとも言えないジューシーな音を立てているのは、時間がかかるのを見越して席に着くやいなや注文した、私のポテトである。みんなさんすんませんね。あなたたちも30分待てば食べれますよ。頭の中でせせこましい妄想を繰り広げている間に、ポテトが揚がる。ニンニクとハーブも揚がる。全部一緒に豪快に皿に盛られる。

お待たせ〜! 店主の元気な声が響き渡る。黄金色のポテト。これ以上ないくらいこんがりと揚がっている。かぶりつく。あふっカリッふはっ。絶妙な塩加減。ニンニクの匂いが鼻に抜ける。至福のため息が漏れる。うまい熱いうまいっと言っているうちに、あっという間に皿が空になる。カリカリとほくほくの、完璧なまでのバランスよ。名残りを惜しんで指についた油と塩をなめる。行儀が悪いと言われようと、フライドポテトは箸やフォークより指でつまんで食べる方が100倍おいしい。

みなさん聖夜にフライドポテトはいかがでしょうか。

(ちなみにこのポテト、定番メニューのはずなのに、2回に1回くらいの割合で「ごめーん。今日はじゃがいもないの~」とあっさり振られる。ああ、がっくし)


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