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TomoPoetryー友野雅志の詩

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日々書きためた詩の中から、noteスタートしてしばらくしてからの最近のものをのせています。それ以前は、下をご覧下さい。   …
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2019年11月の記事一覧

白いページ

白いページ

空は無言のかなしみであふれ
きみは星を見ることができない
昼 降ってくる物干し竿にあたらないように
きみの歩みは
くねっている

たどり着くべきところはどこ
扉をあける老女の手
部屋の奥には
生の次の時間の入口
時がくると
もう一方の手が哀れみをもって
開くだろう

テーブルに書きかけの手紙
愛しているの一行
わたしたちの生活にはそのあとの夢がない
毎夜 夢を千切って燃やし
生きのびたのだ

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娘からの手紙

娘からの手紙

娘が手紙を
もぐもぐと書いている
封筒に宛名はない
行き先は生まれる前の風
樹をカサカサ鳴らし
岩を絵の具にけずる爪
腕はない
顔もないだろう
見たことがない果実のような
熟する日はない人生のような
実が割れている地球のような
時を引っかく
ゆびさきで
果実のあいだに這い
いろいろとからまっている蔓をたどる
脈打つ緑が
興奮している

もうひとりの娘が手紙を
愛撫しながらめくる
手のひらには
父親

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眠るこころ

眠るこころ

眠りつづける
電車はどこにむかうのか
河をわたり地下をはしり
眠りの下をくぐっていく
太陽系の寝息
溶岩の波音
氷河のように割れるガラス窓
眠りつづける
金を生む鶏
核実験にゆれるスカート
ひたすら眠ってきた
ウィンクするように わたしたちの片方の目

アフリカからの奴隷船
大西洋に投げこまれる肉体
肋骨に金具を入れるイギリスの紳士
殺されるひとびと
埋められたひとびと
波音を聞きながら
肉を刻む

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幸せな生きかた

幸せな生きかた

幸せな生きかたそれはね、と大将はフライパンをくるくる回転させた上に行っても下に行ってもわたしはまんなかと思って死ぬこと生きることはチャーハン死ぬことはザーサイ東京は雨中近東はまっかな雨理由が空を割かないときは殺さないこと宇宙はフライパンよりまるいあるいは熱いまるい星がころがり炭になるわたしのまえにまるいチャーハンが出てきたフライパンを回転させる眼がかたる死んだのは誰によるのか犯されたのは誰によるの

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