シェア
友野雅志の宇宙ーTomocosmosー作品いろいろ
2019年11月25日 04:00
空は無言のかなしみであふれきみは星を見ることができない昼 降ってくる物干し竿にあたらないようにきみの歩みはくねっているたどり着くべきところはどこ扉をあける老女の手部屋の奥には生の次の時間の入口時がくるともう一方の手が哀れみをもって開くだろうテーブルに書きかけの手紙愛しているの一行わたしたちの生活にはそのあとの夢がない毎夜 夢を千切って燃やし生きのびたのだ
2019年11月23日 10:47
娘が手紙をもぐもぐと書いている封筒に宛名はない行き先は生まれる前の風樹をカサカサ鳴らし岩を絵の具にけずる爪腕はない顔もないだろう見たことがない果実のような熟する日はない人生のような実が割れている地球のような時を引っかくゆびさきで果実のあいだに這いいろいろとからまっている蔓をたどる脈打つ緑が興奮しているもうひとりの娘が手紙を愛撫しながらめくる手のひらには父親
2019年11月22日 20:21
眠りつづける電車はどこにむかうのか河をわたり地下をはしり眠りの下をくぐっていく太陽系の寝息溶岩の波音氷河のように割れるガラス窓眠りつづける金を生む鶏核実験にゆれるスカートひたすら眠ってきたウィンクするように わたしたちの片方の目アフリカからの奴隷船大西洋に投げこまれる肉体肋骨に金具を入れるイギリスの紳士殺されるひとびと埋められたひとびと波音を聞きながら肉を刻む
2019年11月20日 16:10
幸せな生きかたそれはね、と大将はフライパンをくるくる回転させた上に行っても下に行ってもわたしはまんなかと思って死ぬこと生きることはチャーハン死ぬことはザーサイ東京は雨中近東はまっかな雨理由が空を割かないときは殺さないこと宇宙はフライパンよりまるいあるいは熱いまるい星がころがり炭になるわたしのまえにまるいチャーハンが出てきたフライパンを回転させる眼がかたる死んだのは誰によるのか犯されたのは誰によるの