空は無言のかなしみであふれ
きみは星を見ることができない
昼 降ってくる物干し竿にあたらないように
きみの歩みは
くねっている
たどり着くべきところはどこ
扉をあける老女の手
部屋の奥には
生の次の時間の入口
時がくると
もう一方の手が哀れみをもって
開くだろう
テーブルに書きかけの手紙
愛しているの一行
わたしたちの生活にはそのあとの夢がない
毎夜 夢を千切って燃やし
生きのびたのだから
それ以後
地を走りまわるのは
悲劇語りのビラ配り
白紙のまま
残っている時間は永遠だ
語られないまま過ぎていく言葉は川
枯れた花と骨は
過去の恋愛
きみの涙は宇宙のオアシス
きみの眠りは陽射しのなかで消えゆくオリーブ
きみの生は万華鏡のなかの衣類
どこにきみは書いたのだろう
わたしは続きをどこに書いたらよいだろうか
海の底
密林の羊歯の間
洗剤で洗うビルの陰
きみはすきとおって歴史的詩をかたる
最後のページに真っ白い空をはさむ
誰を
何を
愛しているか
どこまで書き続けるか
愛している
その前はいつもスペース
ノートを抱えて
扉をくぐると
綴りがほどけて
きみが立っている
愛しているか
愛していないか
わたしはノートで
ズボンの埃をはたく
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