死に向けて漕ぐ

実は、僕たちの船というのは、壊れているわけではない。
僕たちは自らの意志で一目散に、ただ海へ漕ぎ出そうとしているだけ。

ところが、
実は、寄り道をする人たちというのは、漕ぐのが下手なわけではない。
むしろ僕たちよりもずっと、陸の景色や、川の流れの違いを楽しむのが上手い。彼らは、時に座礁してしまったり、道を間違うこともあるけれど、僕たちほどその事に怯えてはいない。それもまた旅路なのだと、乗り越えて何度でもまた船を出す。何度も船を泊めながら、ゆっくりと海へ出る。

実は、僕たちは誰もが皆船を出し、最後には必ず海へ辿り着くようになっている。
ところが、なぜだかこうして差ができる。

でも実は僕たちも、心からこの船を泊めたいと思う場所がどこにあるのかを、必死に探している。

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