各国の雇用労働者産業別割合と一人当たりのGNI(国民総所得)の関係

比較対象として抽出した各国の雇用労働者産業別割合と一人当たりのGNI(国民総所得)の関係を、ウェブ上で公開されていたデータを用いて示したのが、次のグラフである。
一人当たりのGNI(国民総所得)が高い国から順に並べている。折れ線グラフは、各国のGNIを示している。まて、棒グラフは、各国の雇用労働者の全体を100%として、第一次産業から第三次産業まで割合に応じて分割している。

各国の雇用労働者産業別割合と一人当たりのGNI(国民総所得)

帝国書院

この図を見ると、もはや産業の構造と、GNIに相関関係を見出せない。
第3次産業の割合の低い国が、GNIも低い、という傾向はあるものの、必ずしも相関関係があるとは言えない。ロシアやブラジルは第三次産業の割合が、韓国と同等レベルであるが、GNIは1/3に満たない。
また、第二次産業の割合も、この図で最も低い値となっているシンガポールの14%を除くと、18%~33%に収まっており国ごとに大きな違いはない。

それよりも、目立っているのは、相変わらずこれまで「先進国」と呼ばれてきた国が、上位を占めている点である。
シンガポールを除くと、スイス(84,310ドル/人)、アメリカ(64,530ドル/人)、デンマーク(63,070ドル/人)、スウェーデン(54,060ドル/人)、オーストラリア(53,730ドル/人))、ドイツ(47,060ドル/人)、など「先進国」=過去の工業国が、上位を占める。
また、アジア中で数少ない先進国だった日本(40,540ドル/人)は、それらの下位に入る。

南ヨーロッパに位置するフランス(39,400ドル/人)、イタリア(32,200ドル/人)、スペイン(27,320ドル/人)は、それらのグループより下位に位置し、韓国(32,860ドル/人)は、それらと同等レベルである。

そして、2000年代以降に著しい経済発展を遂げたといわれるBRICsやベトナム、メキシコも、相変わらず下位に位置している。

結局、一度定まった各国の経済的な関係は、簡単には崩れない、ということなのではないだろうか。
これまで、「先進国/開発途上国」などの言葉により、科学技術の発展段階により各国の貧富の差を説明してきた。

また、昨今労働生産性の向上を日本国内の労働者には求められており、それを口実にして労働者の賃金が削減されている。

しかし、このグラフが示す通り、それでは今現実に起こっている現象を理解できない。
現実に起こっている所得を生み出すメカニズムを把握するためには、従来の産業構造や生産性とは異なる視点が必要である。

先進国・開発途上国・後発開発途上国


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