処理水の放出について

電気事業者連絡会ウェブサイトより

放射性物質の多くは、分解するまでの時間が極めて長く、長期にわたって放射線を出し続ける。
その為、放射性物質は、他の廃棄物のように焼却したり埋め戻すことなく、密閉して保管することが原則である。

今回、その原則を破って、原発事故現場で発生した放射性物質をやむを得ず海洋に放出することになった。

政府は、放射性物質の濃度が安全基準値以下であることを根拠にして、安全性が確保されていると主張している。
確かに、その説明は、分解しやすい物質に対しては妥当かもしれない。
分解しやすい物質であれば、環境に悪影響を与える前に分解され、有害性は消滅する。
そのために、一般の廃棄物は、多少の毒性があったとしても、焼却や埋め戻しにより処分することができる。
しかし、放射性物質は、そうではない。
ALPS処理水に含まれる、とされている放射性物質の半減期は、トリチウム12.32年、セシウム30年、ストロンチウム29年などと言われている。

加えて、この説明で用いられる放射性物質の濃度に関する安全基準は、原発事故のような大量の放射性物質が放出されることを前提にして定められたものではないだろう。

ごく微量の放射性物質が、低い濃度で放出された場合ならば、長期にわたって分解されないとしても、ゆくゆく地球全体に拡散し、自然界に与える影響はほぼ無視することができる。

ところが今回の処理水の海洋放出は、そうではない。
原発事故の結果生み出された大量の放射性物質が放出されようとしている。

分解されづらい放射性物質の大量放出の有害性は、濃度により測ることはできない。
本来問題は、放出される放射性物質の総量である。

今回の処理水の海洋放出を、放射性物質の濃度により、安全性を説明しようとするのは詭弁でしかない。
もちろん、多くの賢明な人たちは、今政府が行なっている説明を詭弁として受け取っているはずではある。
しかし、これらの詭弁が、科学的として罷り通ってしまう事態に危機感を感じる。

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