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4. Essayと推薦状(MBA受験)

(1)Essay

どのMBAスクールでもEssayという論文の提出を求められます。質問内容や指定語数は学校ごとに異なりますが、「Why MBA?」「Why XXX(学校名)?」「What is your career goal?」など、典型的な質問も多くあります。Essayは選考プロセスにおける最重要項目であり、合否に与える影響が極めて大きいことから、通常エッセイカウンセラーというプロの専門家に添削を依頼します。日本で活動するカウンセラーには日本人も外国人もいますが、人数はそれほど多くありません。それぞれの受験生は、合格実績を調べたり、過去の受験生から評判を聞いてカウンセラーを決定します。Essayの課題自体は似通ったものが多いのですが、学校ごとに選考方針は異なり、同じ質問に対するEssayであっても学校ごとに内容を書き換える必要があるため、カウンセラーなしで、独力でEssayを書くことはお勧めしません。

日本で活動するカウンセラーに依頼する場合、複数のカウンセラーに依頼している受験生はほとんどいません。一方、アメリカ等で活動するカウンセラーの中には特定の学校に強みを持つカウンセラーもいるため、その学校のEssayだけその人に見てもらうという受験生もいるようです。ただし、日本のカウンセラーと全く違うアドバイスをしてきたり、Essayを一から書き直させられたりする可能性があることから、時間に余裕がある場合のみにした方が良いと思います。

私は江戸義塾という名前で営業しているEdというアメリカ人に依頼しました。私の場合、タイトなスケジュールの中での依頼であり、依頼時点でTOEFLスコアも100点に到達していなかったことから、精神的に厳しいと評判のカウンセラーへの連絡をする心の余裕がなく、優しいと評判のEdにコンタクトを取ることにしました。

カウンセラーとのやり取りは面談またはメールで行われます。私の場合、時間の制約もあり、最初に面談した後はEssayの添削も含めほとんどメールでやり取りしましたが、毎回面談を希望するクライアントが一般的だと思います。中にはメールでのやり取りを認めないカウンセラーもいます。面談時に英語力に不安があることを伝えていたため、Edからは日本語で書いて翻訳業者を利用することも選択肢として勧められたのですが、決断できないまま、結局はなし崩し的に最初から英語で書くことになりました。結果的にこの方式でも特段問題は発生しなかったため、極めて英語力が低い受験者以外は、翻訳業者を使う必要性は低いと思います。

EdにEssayを送ると、早い時は当日中、遅くとも4日程度(繁忙期にはEdも多忙になりレスポンスが低下)で添削結果が戻ってくるので、再度書き直し送り返すということを繰り返しました。私の場合、カウンセラーとの初面談から出願までわずか2ヶ月程度と時間が短かったこともあり、書き直しは全て当日中に行っていました。12月の平日はこの作業に1日2~4時間かけていました。TOEFLやGMATとの両立は難しいと思います。

Edのサービスには概ね満足しているのですが、今振り返ると、彼とのコミュニケーション不足がやや悔やまれます。2ヶ月で8校分を順次作成したのですが、最初の方に作成したEssayはEdが私のことを十分に理解しない状態で添削していたはずです。私の場合スケジュール的に不可能でしたが、本来は、ある程度仕上げた段階で、再度カウンセラーと全Essayをレビューした方が望ましいと思います。

Edは極めて親切で面倒見が良い一方、TOP校以外受験者(TOEFL100点未達者など)にも人気があり、クライアント数が極めて多いのも特徴です。そのせいか、クライアントを何としてもTOP校に入れようという気概がやや薄いようにも感じられます。クライアントの書いたEssayを全否定して書き直させるようなことも稀です。厳しくガツガツ指導してほしいという人もいあるので、この辺りは好みが分かれるところです。ただし、彼の名誉のために言っておくと、EdのクライアントにもHarvardやStanfordの合格者は何人もおり、彼の能力が低い訳ではないでしょう。私は、彼との相性が非常に良く、揉める事もなくEssayの準備ができました。

私は無茶な受験スケジュールだったので出願に2ヶ月前にEdと初めて会いましたが、Essay作成は本来極めて時間のかかるものであり、カウンセラーにはなるべく早期にコンタクトをとっておいた方が良いでしょう。カウンセラーによってはセミナー等を開催しているので、実際に話を聞いてみて、相性が良さそうか確認すると良いと思います。

(2)推薦状

HarvardやStanfordは3通、通常は2通の推薦状が必要です。また、多くの学校において、少なくとも1通は直属の上司からの推薦状が求められます。
MBA受験における推薦状では、質問内容が予め定められています。したがって、推薦者には、予め質問を伝えたうえで、推薦状を作成してもらう必要があります。質問は学校ごとに異なるため、受験する学校が決まらないと、推薦状の内容も決まりません。典型的な質問がある点はEssayと同様であり、多くの質問は重複しているため、受験する学校の質問を類型化し、類型化した質問ごとに、推薦者に文章作成を依頼すると良いでしょう。

上司等に依頼することになるため、なるべく早めに依頼をしておく必要がありますが、上述のとおり、受験校が決まっていない段階で依頼すると、受験校決定後に追加の依頼をすることになってしまいます。書き足しを依頼すると、どうしても書き手の集中力が当初よりも落ちるため、文章の質が下がる傾向があります。また、日本語の文章はどうしても意味が曖昧になる傾向があり、英訳するとほとんど内容がなくなってしまう場合もあるため、依頼する際は「具体例を入れてほしい」「質問に対する直接的な回答を記載してほしい」などと趣旨を明確にしたうえで依頼する必要があります。

推薦状についてもEssayカウンセラーに添削を受けます。通常、Essayほどの熱意を持っては添削されないため、Essay以上に元の文章のクオリティが重要となります。本来ルール違反なのですが、一部受験生は、推薦状を自分で書いて、上司から名前だけを借りています。むしろそれが一般的なのかもしれません。

推薦者にはあれこれ無理をお願いしなければならないことに加え、推薦状にできるだけ具体的なエピソードを盛り込んでもらう必要があることから、自分に極力近い人物を選んだ方が良いでしょう。失敗例として、何年も前に卒業した大学の教授に依頼した例などがあります。そのような人にお願いしても、熱意を持って推薦状は作成してもらえません。推薦者の役職が重要という意見もあり、受験生の中には自分の勤務先の役員などに推薦状を依頼する人もいるようですが、日本企業の役職などを学校側がどの程度理解しているかは不明であり、推薦者の地位や役職に拘る意味はそこまで感じられません。推薦状は、Essayに書き切れない自分の良いところを、人の名を借りてアピールするものくらいに捉えておけば良いでしょう。

(3)その他の出願書類

ほぼ全てのMBAスクールにおいて、出願はオンラインで行われます。学歴や職歴に加え、学生時代の課外活動などを記載する必要があります。GPAの計算や成績表の提出も求められます。一部の学校においては、学生時代に取り組んだ学業以外の活動等に重きを置いていることもあり、これらについては、Essayではなくオンラインの出願フォームに記載することになります。Edは出願書類の記載内容も添削してくれました。なお、最終的には、合格校に成績表等を提出する必要があるため、GPA等について虚偽の記載をしてはいけません。英語の成績表の手配などはかなり面倒なので、早めに動いておくと良いでしょう。

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