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3-2. 英語のListening(聞く)

英語を学びたい人で、映画などを楽しむために、別に話せるようになれなくても良いので、聞けるようになりたいという人は一定いますよね。また、聞くというのは受動的な行為ですし、英語をただ単に聞くということは特段頑張らなくてもできてしまうので、SpeakingやWritingに比べて取り組みやすいという方も多いでしょう。しかし、大人になってから英語を学び始めた人にとって、Listening能力を向上させることは想像以上に困難です。たとえば、英語が聞ける(理解できる)といっても、いくつか段階があります。
・日本人の話す英語が理解できる
・日本に住んでいる外国人の英語が理解できる
・映画を字幕付きで観ていると時々理解できる英語表現が出てくる
・英語のニュースが理解できる
・自分に話しかけてくる人の英語が理解できる
・他人同士の会話を横で聞いていて理解できる
・大勢が同時に話している内容を理解できる
・英語のドラマや映画を字幕なしで理解できる
人によって得意不得意は違うので、順番は必ずしもこの通りとは限りません。大人から英語の勉強を始めた場合、どこまで到達することが可能でしょうか。私の感覚で言えば、残念ながら英語のドラマや映画を字幕なしで完全に理解できる人はかなりの少数派です。英語を何年も勉強してTOEICが900点を超えるような人でも、初めてネイティブの中に放り込まれると、会話の10%も理解できないということが普通に起こり得ます。したがって、英語学習者があまり高い目標を設定し過ぎると、現実とのギャップに悩み、英語学習を続けることが困難になるでしょう。現実的なラインとしては、英語のニュースが理解できる、自分に話しかけてくる人の英語が理解できる、くらいを目指すのが良いと思います。

それでは英語を聞くのは何故こんなに難しいのでしょうか。

日本ではネイティブもゆっくり話す

日本に住む外国人は日本人が英語が苦手なのを知っています。本人が意識しているかは分かりませんが、日本人が理解できるようにゆっくりはっきりした発音で話をする傾向があります。この英語に慣れていると、ネイティブ同士の自然な英語についていけなくなるのです。

英語が聞き取れなかった時には"Could you say that again?" "Pardon?"などと言いましょうと教えてもらったことはないでしょうか。たしかに、日本に住む外国人にこう言えば、ゆっくりはっきりとした発音で言い直してくれます。ただ、海外で同じことを言うと、全く同じスピードで繰り返されたりします。これは、日本人がそもそもゆっくり話さないと英語を理解できないということを知らないためです。ゆっくり話してほしい場合は、"Could you speak more slowly?"などと、直接的にお願いしましょう。

発音ルールを知らない

発音については別記事で詳しくふれる予定ですが、英語がどのように発音されるか知らなければ、当然ながら英語を聞き取ることはできません。英語が全然理解できなかったのに、後でスクリプトを確認すると驚くほど単純な文章だったという経験をした方は多いと思います。これは、その英単語や英語表現は知っているにも関わらず、その英語がどのように発音されるか知らないために起こります。また、単語と単語がつながって発音されるLinkingや、特定の音が省略されるルールも理解していないと、英語を正確に聞き取ることはできません。

語彙や英語表現を知らない

口語表現に用いられる英単語は文章で使われるものに比べれば限定的です。しかし、最低限の語彙力がないと、英語を聞き取り理解することに苦労するでしょう。また、人間は聞いたこともない言葉をいきなり言われても理解できません。たとえば、ファーストフード店では”Here or to go?"とよく聞かれます。こう聞かれると知っていれば対応できますが、聞かれることを想定していないとこんなに短い文章にも意外と反応できないものです。英語のListeningにおいては、相手の話していることを一言一句理解するというよりも、シチュエーションなども踏まえて、相手の言っている内容を理解することが重要なのです。そのためには、どのような場面でどのような英語表現が使われるのかといった知識を蓄えておく必要があります。

Listening能力の向上は何故必要か

さて、いかに英語を聞き取るのが難しいかという話を続けてきましたが、英語のListening能力向上は何故必要なのでしょうか。
まず、当然のことながら、英語のコミュニケーションにおいて、相手が何を言っているか分からないというのはかなり致命的です。「英語が聞き取れなければ言い直してもらえば良い。それくらいの積極性を持つべき。」という意見もよく聞きます。ただ、考えてみてください。日本の会社で外国人が働いていて、会議中に誰かが発言するたびに「もう一度言ってください。」と言っていたら仕事になるでしょうか。英会話の目的が、六本木にいる外国人と話すことであればそれでも良いかもしれません。ただ、留学したい、海外で働きたいということが目的なのであれば、分からなければ聞けば良いというスタンスは通用しないのです。
また、英語が上達する手段として、ネイティブがどのように話しているか聞き、それを真似して吸収するというものがあります。最低限のListening能力がないとこれができません。留学中に授業を聞いていても、周りが何を言っているか全く分からなければ、時間がただ流れていくだけで、英語はなかなか上達しません。したがって、Listening能力は、留学や駐在などで英語環境にどっぷり浸かる前に極力高めておいた方が良いのです。もちろん、英語環境にいれば、慣れるだけでListening能力は一定向上します。ただ、Listening能力を事前に高めていれば、英語の上達スピードがより増しますよということです。

さて、それでは最後に、具体的な学習方法について紹介します。

ナチュラルな英語を字幕なしで聞く

上で説明した通り、日本人向けの英語はネイティブが実際に使用する英語と似て非なるものです。したがって、たとえばNHK英語や日本語で書かれている英語教材の付属CDを聞くだけではListening能力は十分には高まりません。ナチュラルな英語を聞くにはNetflixやHuluで英語のドラマを観ると良いでしょう。英語字幕が付けられるので、後で何が聞き取れなかった確認できる、簡単に何度も巻き戻せる、そして何より楽しみながら英語学習ができるといったメリットがあります。私の場合、有名なFriendsをヘビーローテしています。Friendsはスクリプトや解説記事がネットのそこら中に落ちているという点でも、英語学習に向いています。
そして、英語だろうが日本語だろうが、まずは字幕なしで観ましょう。字幕があるとどうしてもそれを読んでしまうため、Listening能力の向上に結びつきません。字幕なしで観る、英語字幕付きで意味を理解する、もう一度字幕なしで観るということを繰り返すと、徐々に字幕なしでも英語が聞き取れるようになっていきます。

英語を音読する

発音にしても、語彙にしても、英語表現にしても、自分が実際に身につけていないものは、聞いても中々理解できないものです。したがって、英語を音読することは、Listening能力の向上につながります。英語音読の効能についても、別記事で詳しくふれる予定です。
私の場合は、Friendsのスクリプト音読と字幕なしでの視聴を繰り返し、字幕なしで完全に理解できるようになってから次のエピソードにいくという方法を取っています。Listening能力だけでなくSpeaking能力の向上にもつながるのでお勧めです。

Listening能力のための勉強方法として、ディクテーションを勧める人が多くいます。ディクテーションは集中してリスニングを行い、それを書き起こす訳ですから、一言一句聞き取れるまで終われないというハードな勉強方法です。私も少しやったことがありますが、勉強方法としてはかなり効果的です。
一方、ディクテーション極めて難易度が高いです。上で述べたとおり、英語を一言一句聞き取るというのは、英語を聞いて内容を理解するというより、もう一段次元の高い行為です。初心者や中級者は、そもそも何回聞き直しても終わらないという状態に容易に陥ります。したがって、ディクテーションについては、留学が控えていたり、駐在に絶対行きたいなど、高い志を持った人が集中力を持って取り組むのが良いでしょう。

本記事は以下のマガジンの一部です。


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