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7. 予備校の評価(MBA受験)

TOEFLもGMATも予備校の費用は極めて高額です。パッケージの購入が求められるケースも多く、その場合、受講前に数十万円を支払わなければなりません。受験までにある程度時間がある場合は、パッケージでの購入が必要のない予備校(私の通った予備校ではYESやE4TG)からスタートし、自分の苦手部分を把握した上で、追加で通う予備校を考えれば良いでしょう。一方、時間がない場合は一旦パッケージを購入してしまい、自分に合わないと判断したときには、金をどぶに捨てたと思って止めてしまうくらいの潔さも必要です。個人的な見解ですが、私の様に出願まで数ヶ月間で結果を出さなければならない場合、金を出し惜しむのは避けるべきです。一瞬の逡巡が命取りになり得ます。

また、MBA受験においては情報収集のために、MBA受験生の知り合いを増やすことが重要です。一部の受験生は、School Visitを複数回行っていたり、同じ会社に複数のMBAホルダーがいたりと、相当量の情報を持っています。予備校に行けば知り合いができると思うかもしれませんが、予備校の中にも知り合いができやすい予備校とできにくい予備校があります。私の行った予備校の中では、AGOSとYESは知り合いができにくく、E4TG(Donald)はできやすかったです。知り合いができるという点ではアフィアンスという予備校が最も有名ですが、拘束時間が長いという噂があったので、私は利用しませんでした。

(1)AGOS

TOEFL(Speaking)
私はビデオ講座を中心に受講しましたが、TOEFLのSpeakingをビデオ講座だけに頼ることはやめておいた方が良いです。ビデオを見ながら1人で話すことにほとんど意味はありません。AGOSでは、オンラインで自分の声を吹き込み、それを講師がチェックしてくれるというシステムがありますが、これも的確なアドバイスがもらえず、あまり役に立ちません。そもそも、自宅で話している時は、失敗すると途中でやめたり、うまく言えるまで何度もやり直したりと、本番と環境が違いすぎます。TOEFL Speakingで最も難しいのは、15秒から30秒の準備時間に何を話すか決め、それを45秒から60秒の発言時間内に話し切ることであり、これに対応する能力を養わないかぎり、高得点は望めません。

AGOSではAdvancedのプログラムに進むにはスコア20点以上の獲得を求めていますが、Basicはレベルが低く、具体的な試験対策としては内容が不足しています。大学学部留学を目指す高校生向けとも感じられるレベルであり、MBA受験生が取り組むようなプログラムではありません。日本人講師が担当していましたが、30秒くらいゆっくり話した後に「今ので15秒くらいですね。」と説明するなど、全く信用できないという印象を受けました。

Advancedはネイティブ講師が担当です。説明していること自体はそれなりに役立つ内容なのですが、短時間で結果を出したい私としては、どうすればスコアが上がるのかをもっと直接的に教えてほしいと思っていました。ビデオではない通学型の授業はほとんど受けていないので詳細不明ですが、こちらも得点を上げるための明確な方法論を持っていない印象です。また、ネイティブ講師も複数おり、質にもばらつきがあります。

TOEFL(Writing)
Writingはテンプレを覚えることが最重要なので、通学する必要性は低く、本来ビデオ講座との愛称は良いはずです。Speaking同様、Basicは初心者向けでテンプレさえ提供されません。文章の基本的な構造など基礎の基礎から学びたいということであれば受講しても良いかもしれませんが、すぐにスコアを上げたいという人にはお勧めしません。

あくまで当時の感想ですが、AGOSの問題点は、テンプレの使いにくさにあります。まず、Integratedはテンプレで字数を無駄に稼ごうとしているきらいがあります。Integratedは内容が重要なので、長いテンプレを書く必要性を感じません。むしろシンプルなテンプレを用い、内容を充実させた方が良いでしょう。また、Integratedは、PassageとLectureが逆のことを言っている問題しか出題されませんが、PassageとLectureが同じことを言っている問題に対するテンプレも提供されていました。出題の可能性がゼロとはいえませんが、直近(受験当時)では全く出題されていなかったので、出題傾向の変化が確認できるまでは、このタイプの問題に対するテンプレは覚える必要がなく、この点でも時間の無駄を感じました。

Independentは逆にテンプレが短すぎるため、字数を稼ぐのに苦労します。また、Bodyパラグラフを2つとしていることも、字数を稼ぐのに苦労する要因となっています。文章の導入部分と結論部分があっさりしており、Bodyパラブラフをかなり自分で頑張って書かなければいけないので、英語力の低い人には不親切なテンプレという印象です。

GMAT(Verbal)
AGOSは何人かGMAT講師を抱えているはずですが、Verbalについては、中山先生という方が有名です(他の講師がどの講義を担当しているかは不明)。中山先生の教科書は、SCで求められる文法知識やCRの問題類型等を分かりやすく記載しています。また、Official Review(公式の過去問集)を使用して授業を進めるため、授業を受け終わると、それなりの量の演習を網羅的に行っていることになります。

欠点としては、文法の説明がやや適当な部分があり、その点においてはYESに及ばないという印象です。教科書もよくまとまっていますが、それのみを覚えれば必ず高得点が取れるというものではありません。GMATの予備校はAGOSだけという受験生も多いのですが、授業に出てさえいれば点数が上がるといった内容ではなく、授業の内容を踏まえて、それなりに自習することを前提にしているように思われます。私の場合、YESと並行して受講していたため、YESでは習わない短時間で解かなければならない場合のテクニックなどが学べ有意義でした。

GMAT(AWA)
GMAT受験よりも1か月ほど前に受講し、その後復習等もしなかったため正確な評価はできませんが、あまり印象は良くありません。誹謗中傷になるので名前は伏せますが、ネイティブの講師が担当で、話がまわりくどく、どうすればAWAのスコアが伸びるかという方法論を直接的に教えてくれないという印象です。宿題の添削もしてくれるのですが、書いてある主義主張にコメントを入れてくるなど、正直相性が合わないと感じました。おそらく論文を添削するという点からすれば正しい指摘だったのかもしれないのですが、私が求めていたのはどの様にすればスコアが上がるかであり、その期待に答えてくれませんでした。偶然かもしれませんが、受講生のレベルも低く、それも受講時のストレスとなりました。

(2)YES

吉井先生という方が開いている個人塾です。TOEFLのListeningやWritingも教えていますが、GMATのSCの授業が最も有名です。

文法コース
文法コースはSCコースの予備コースのような位置付けであり、吉井先生が必要だと考える文法知識を教える全5回の授業です。それぞれの授業は独立しており、どの回からでも参加は可能です。5回5万円(受験当時)と比較的手を出しやすい価格なので、YESの実態を知るために試してみるのも良いでしょう。これを受けずにSCコースを受けても特段問題がないのですが、SCコースで説明される文法はランダムであるため、文法知識をまとめて学ぶには良いコースだと思います。

SCコース
SCコースはSC専門のコースで、毎回25問の問題を3時間かけて説明するものです。問題の種類は40種類程度あり、こちらも各授業が独立しているため、週に複数回ある授業のうち自分の好きな回に好きなタイミングで参加することができます。授業に順番がないことから、参加者も毎回ばらばらであり、問題を解くのに必要な文法知識は繰り返し説明されることになります。毎回参加していると、同じ説明をされることが何度もあるのですが、そのおかげで参加を繰り返すごとに知識が刷り込まれていきます。

問題を解いたうえで授業に参加しないと効果が薄れてしまうため、受講生はかなり時間をかけて予習をしています。私も25問の問題(本番では30分程度で解かなければならない問題)に、2時間近くをかけて予習していました。吉井先生は文章を精読することを勧めるタイプで、適当に読み飛ばしてテクニックで解くことを良しとしません。受験生によっては、本番では時間の制約から精読などできないのでYESで教わる方法は使えないと考える人もいる様です。しかし、私は精読し考え抜きながら問題を解くことによってSCを解くための文法知識が身につくと考えており、YES方式は肌に合いました。

いつでも自由に参加できることから、出たり出なかったりの受講生も多いのですが、効果を実感するためには、連続して受講することが望ましいと思います。私は週2、3回の受講を継続していました。講師は20回以上の受講を勧めていますが、10回程度受講すると吉井先生の教えたい内容は一通り網羅できます。ただし、人により上達速度は違うので、何回受講するかは自分で決めてください。授業は妥協を許しませんが、決して怖いタイプの講師ではなく、話も面白いです。私は予習が大変なことを除けば、YESの授業は楽しみでした。吉井先生の教える英語は、教養あるネイティブスピーカーの使う英語であり、GMAT対策以外としても勉強になります。当時習った英文法は今でも実務で使用しています。

(3)Web TOEFL(eTestPrep)

オンラインのTOEFL講座です。私はWritingを利用しました。提供しているテンプレがAGOSのテンプレの弱点を補う内容であり使い勝手が良く、コストパフォーマンスも極めて良いと思います。当時は、Integratedのみビデオでの授業があり、Independentはテンプレの提供のみでした。まず初めに取り組む内容としては理想的だと思います。ビデオ講座も分かりやすく、かつシンプルであまり時間がかからないのも良いところです。

当時感じた唯一の欠点は添削者の能力の低さでした。講師とは別の外国人が務めており、講義やテンプレの内容を理解していると思えない指摘をしてきました。誤字・脱字くらいのチェックしかなく、テンプレ自体に文句をつけてくるなど、添削に納得感がなかった記憶があります。ただ、これを踏まえても、受講する価値はあると思います。

(4)Jack

メールで英作文を送ると添削して返してくれるサービスです。メールのみでやり取りをするため、何者なのかはよく分かりません。Jackには体調不良説があり、私もJackに連絡をとったのですが、代わりに息子のJohnを名乗る人物にサービスを受けることとなりました。現在は、さらに別人に事業が受け継がれているはずであり、サービスの詳細は不明です。誰かから紹介を受ける必要はなく、ただメールを送ればサービスが開始されます。

TOEFL WritingとGMAT AWAに対応していますが、私はTOEFLのみ受講しました。月$200で、48時間に1回(受験当時)というルールさえ守れば、無制限に添削を行ってくれることから、コストパフォーマンスは良いと思います。Writingは自分で書いても添削してくれる人がいないと意味がないので、この手のサービスは非常に有意義です。

TOEFL Writingはがちがちのテンプレで、テンプレから少しでも外れた内容を書くと、かなり厳しいコメントを返してきます。コメントのきつさに心が折れてしまいそうになることもあるのですが、添削の丁寧さは随一で、かなり細かい指摘もしてくれるため、ファンが多くいました。現在のサービスが同等の内容かどうかは分かりません。

(5)E4TG(Donald)

Donaldというアメリカ人が営む個人塾で、TOEFL Speakingを教える予備校としては圧倒的な人気を誇ります。1クラス5人に参加者数を制限しているため、申し込んでもWaiting List行きとなることが多かったのですが、現在は講師を増やすなど、かなり事業を拡大している模様です。

授業の内容は、各自ボイスレコーダーを持参し、1問1問、全員がボイスレコーダーに解答を吹き込み、それを全員で確認し、Donaldがコメントをくれるというものです。毎回、本番と同じSpeaking全6問が出題されるため、かなりの練習量になります。実際、このように自分の解答内容を全てネイティブスピーカーに丁寧に確認してもらえるサービスはまず存在しません。

営業妨害になるのであまり詳しくは書きませんが、ただ漠然とこちらが話た内容にコメントをくれるだけではなく、どの様な内容を話すべきか、そのために何を準備すべきか明確なアドバイスをくれます。ネイティブ講師なので、英語力の低い受験生は敬遠してしまうかもしれませんが、彼の方法論は、英語力が低い受験生にこそ有効です。迷わず門戸を叩くことをお勧めします。ただ、彼もあまりに生徒の発音が悪いと、そもそも聞き取りができないので、その場合は発音矯正の講師を紹介され、一定発音が矯正されてからの受講となるようです。

Donaldは気さくな人物で授業は楽しく、参加者(MBA受験生がほとんど)とも仲が良くなるため、ネットワーキングの場としても有用です。私は、11月から1か月のみの参加でしたが、もっと早く参加しておけば良かったと後悔しています。

(6)Math Academy(マスアカ)

GMATのQuantitativeの教材です。正確には予備校ではありませんが、最後に模擬問題の解答内容を送ると予想点数を教えてくれるサービスがあります。教材はかなり手作り感があるものの、知らなければならないことが一通り網羅されています。数学が苦手でなければマスアカをやっただけでもそれなりの点数が取得できるようになるため、多くの受験生がQuantitativeは予備校に通わず、マスアカのみで対応しています。ただし、GMATの出題傾向が若干変わってきていることもあり、満点を目指すのであれば、Official Guideの問題は別途自分で解いておいた方が良いでしょう。

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