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4-4. 英語の発音

大人になってから英語を勉強する人にとって、英語の発音は大きな壁です。当然です。何故なら多くの人は英語の発音をそもそも習ったことがないのです。たとえば、catという単語について、中学校などではこれがキャットと読むと習います。場合によっては、キャットではなくキャットゥの方が英語の発音に近いなどという頓珍漢なことを教わった人もいるでしょう。ただ、この英語をカタカナに当てはめて音を認識するというのがそもそもの間違いなのです。catという単語を正しい音で発音するためには、子音のk、母音のǽ、そして子音のtがどの様な口の動きで、どの様に発声されるか理解しなければなりません。英語を正しく発音するためには、全ての母音と全ての子音についてどの様に発音するか理解する必要があるのです。しかし、中学校などでそんなことを習った人が何人いるでしょうか。私の5歳の息子はシンガポールで英語教室に通っていますが、そこでは繰り返しこの各母音と子音の音が教えこまれ、正しく発音するまで次のクラスには進級できません。それくらい各音を正確に発音することを重要視しているのです。また、子どもは教師の真似をしているだけで、それぞれの音を次第に理解していきますが、大人にはそんなことはできません。したがって、大人が発音を学ぶには、口や舌の動きがどうなっているのかなど、理屈をしっかり学ぶ必要があります。

さらに、単語の発音というのは必ずしも辞書に載っている発音記号どおりとは限りません。たとえば、toという単語の発音記号はtuːですが、文章の中でtoはあまり重要な意味を持たないことが多く、結果弱く発音され、təという音になります。このəのことをschwaと言います。英語は、一語一語がクリアに発音される訳ではなく、弱くなる音や省略される音があることも理解しておく必要があります。それを知らないと、何回聞き直しても、音が聞き取れないという状態に陥ってしまいます。

アクセントとイントネーション

ナチュラルな英語を話すためには、アクセントやイントネーションが正しくなければいけないというのは多くの人がご存知だと思います。しかし、全ての英単語のアクセントを丸暗記することなどできませんし、イントネーションのルールを理屈として完璧に理解するのもほぼ不可能です。発音と違い、アクセントとイントネーションの勉強をするのは難しく、英語を多く聞き、ネイティブの真似をしながら話すというのが上達の一番の近道です。
一方、アクセントやイントネーションにも覚えておくべきルールが一定あります。たとえば、アメリカ大統領の住むWhite Houseと、白い家という意味のwhite houseではアクセントが違うというのはご存知でしょうか。前者はWhiteが、後者はhouseが強く発音されます。イントネーションで言えば、疑問文の語尾が上がることは多くの方が知っているでしょう。では、A, B, or Cという時に、 AとBは語尾が上がりCは下がるということはご存知でしょうか。ナチュラルな英語を話すためには、これらのルールを知っておくことも重要です。

Linking

英語は単語単語を区切って発音するのではなく、単語の最後の音と次の単語の最初の音がつながって発音されることがあります。これをLinkingと言います。たとえば、アナ雪の主題歌に以下の様なパートがあります。

I'm never going back♪ The past is in the past♪

このThe past is in the pastの部分で、最初のpastの最後のtとisのiがつなげられ、isのsとinのiもつなげられます。結果として、The pas tisin the pastという発音になるのです。試しに音をつなげずにメロディに乗せて歌ってみてください。おそらくうまく歌えないはずです。このLinkingはネイティブであれば誰もが行っており、これを理解しなければ、英語のListeningもSpeakingもできるようにはなりません。

まずは日本語の本で発音を学ぶ

英語の発音はネイティブの真似をした方が良いのですが、初級者にはハードルが高いので、まずは英語の参考書で学ぶのが良いと思います。英語耳という本は、母音と子音について、口の動きや舌の位置なども丁寧に解説しており、初級者にとって取り組みやすい良書です。

また、以下の本は、音が省略されるルールやLinkingなどについて説明しており、こちらもお勧めです。

慣れてきたら英語の本をやってみる

中級者以上は英語の本に取り組むことをお勧めします。以下の本はいずれも発音ルール、アクセント、イントネーションなど、押さえるべきポイントを一通り網羅しています。ただし、取り組むのはどちらか一つで良いです。

外国人Youtuberの動画を観る

本やそれに付属の音声で学習するデメリットは、実際に口の動きなどを見ることできないことにあります。そのデメリットを払拭するのがネイティブのYoutuberです。親切にも無料で動画をアップしているので、それを見て真似するだけで、かなりのトレーニングになります。私の観たことのあるものの中では、以下の2人がお勧めです。

あとは音読で練習あるのみ

上記で発音のルールを学んだら、あとは実践あるのみです。発音は理屈が分かっていることと、実際にそれを使いこなすのは全く異なります。たとえば、LとRの発音の違いを理解したとしても、その使い分けは極めて困難です。舌の動きを意識しながらreallyという言葉を言ってみてください。多くの人がきちんと発音できないはずです。

以前、TOEFLのSpeaking講師に、reallyを使うことは避けるべきと教えてもらいました。日本人に馴染みのある言葉で、多くの人が使いたがる一方、正しく発音できる人がほとんどおらず、減点対象となりやすいためです。

発音を意識すると返って自分がうまく発音できないことを認識してしまい、話しづらくなりますが、毎日音読を繰り返すことで、徐々に口が慣れて、ナチュラルな英語が口から出てくるようになります。音読する際は、口の動かし方や舌の位置なども注意しましょう。LとRの違いだけでなく、たとえば日本語で言えば同じ「ん」でも、英語のn、m、ngでは口の動かし方も舌の位置も異なります。これらのことは意識しないとなかなかできるようになりません。

英語の中級者から上級者の方で、英語を早く話そうとしてもうまくいかないので、大事な場面ではゆっくり話すことにしている人はいないでしょうか。英語の勉強を長く続けていると、ネイティブの英語に慣れてくるので、自分も同じようなペースで話そうとし、結果的に技術不足によりおかしな英語を話してしまうということがあります。これではたしかに本末転倒なので、英語を話すときは自分の身の丈に合ったペースで話すことが重要です。
一方、ゆっくりと言っても、Linkingを使わず単語を一語一語区切って話すと、ネイティブからすると不自然で、自分としては理解しやすいようにゆっくり話しているつもりが、返って理解しづらい英語を話しているということにもなりかねません。英語を音読する際にLinkingを積極的に使ったり、海外ドラマのシャドーイングをすることによって、Linkingがより自然に使えるようになりましょう。話す速度は慣れで徐々に上がっていきます。

本記事は以下のマガジンの一部です。


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