見出し画像

6. TOEICの勉強は必要か

結論から書きます。必要に迫られていない限り、TOIECのスコアを上げることを目的とした勉強は避けるべきです。何故なら、TOEICのスコアは英語を自在に操る能力に必ずしも直結しないからです。これを説明するために、まずは私の経験をご紹介します。

全く聞き取れなくても高得点が出せる

私が初めてTOEICを受験したのは、就職活動を控えた学生時代でした。当時はTOEICを受験することは必ずしも一般的ではありませんでしたが、高スコアを取ると就活に有利だという話を聞き、受験英語は得意だったこともあり受けてみることにしました。準備は全くしなかったので、どんな問題が出るかも分かっておらず、Listeningパートはほとんど何も聞き取れず完全にパニックに陥りました。受けたことを後悔しながら帰路についたことを覚えています。感覚的には3割くらいしか取れていないと思いましたが、結果スコアは645点。予想外の高得点にかなり驚きました。この時点でTOEICというテストの信頼性に疑問を持つことになります。その後、TOEIC用の参考書に取り組むなどし、数ヶ月後の受験では730点が取れました。この時もListeningパートはほとんど聞き取れていません。ただ、準備をしていたこともあり、聞こえないなりにこれが答えではないかという予測は付けることができました。TOEICというテストは、出題者の意図を酌み取ることで、答えが予想できるようにできているのです。
その後、社会人になりMBA留学を目指すようになったので、社内選考に通るためにTOEICを何回か受験しました。この時期は毎日何らかの英語学習を継続していたこともあり、徐々にスコアは伸びていき、最初は800点台から、最終的に留学直前に960点まで到達します。この段階だと流石にListeningはかなり聞き取れるようになっており、自分自身としても、それなりに英語ができるつもりになっていました。

英語ができるという幻想が打ち砕かれた留学時代

実際留学するにあたっては、たしかにSpeakingなどに苦手意識はあったものの、アメリカで生活すればそのうち慣れて、英語がペラペラになるに違いないと考えていました。しかし、この幻想は留学して早々にすぐ打ち砕かれることになります。まず、周りが何を話しているのかさっぱり分からないのです。自分に話しかけてくれる時はまだ大丈夫なのですが、他人同士の会話や複数人の会話には全く付いていけません。また、MBAという場所は英語が話せることが前提の世界です。自分の能力不足により英語が聞き取れなかった場合、相手に甘えて「もう一回言って。」とは言えないのです(友人同士の会話では可能ですが、授業中は本当にNGです)。これにより英語には徐々に慣れていけば良いというプランが早々に崩れ去ることになります。この英語が聞き取れないというのはかなり致命的で、打ち合わせをしていても内容が理解できませんし、聞き取れないので、ネイティブの真似をして話すこともできません。
Speakingも壊滅的でした。もちろん全く英語が話せない訳ではありません。ただ、MBAではディスカッションの場で教授や他の学生と意見をぶつけ合います。そんな場面で一人だけたどたどしい英語で、小学生でも言えるようなシンプルな意見しか言えないことを想像してみてください。本当に惨めな気持ちになってきます。アメリカ人の意見を聞いて、頭には日本語で自分の意見が浮かぶのですが、それを英語化する能力がないのです。また、たとえばプレゼンで3分間与えられたとしても、一人だけ話すのが異常に遅いので、アメリカ人の5分の1くらいの情報量しか話せません。
それでは、TOEICで960点も取っているのに、何故このような事態になってしまったのでしょうか。

TOEICの英語はクリア過ぎる

まず、TOEICに限りませんが、日本で使われる日本の英語音声というのはネイティブ同士のナチュラルな会話とは全く別物で、非常に聞きやすくなっています。たとえば、TOEIC900点を超えている人でも、海外に滞在経験のない場合、映画やドラマを字幕なしで理解できる人はほとんどいないと思います。しかし、よく考えてみれば、字幕なしで映画が観れないのに、MBAで周りの会話が全て理解できる訳はないのです。

アウトプットの能力が鍛えられない

TOEICで測られるのはListening能力とReading能力のみです。Speaking等の英語をアウトプットする能力を測ることはできません。TOEICで高得点を取るための勉強をいくらしたところで、英語が話せるようにはならないのです。

英語を勉強する時間は有限

もし時間が無限にあるのであれば、TOEICの勉強に加えて、Lestening能力やSpeaking能力を高める練習もすれば良いことになります。ただ、実際には時間は有限です。TOEICでスコアを取るための勉強をするということは、英語を使いこなすために必要な勉強する時間が削られることを意味します。これまでも英語の学習方法に関する記事を書いてきましたが、これらに取り組むためには、TOEICの勉強をやっている暇などないのです。

ただ、私もそうでしたが、会社の所定スコアをクリアするためであったり、MBA留学に向けた社内選考を通るために、TOEICで一定以上のスコアをどうしても獲得する必要がある人もいるでしょう。そのような場合どうしたら良いでしょうか。

一般的な英語力を高めてTOEICスコアを上げる

普段はTOEIC専用の勉強はせず、一般的な英語の勉強で能力を上げていきましょう。もちろん、TOEICスコアだけを考えるのであれば、TOEIC専用の参考書などに取り組む方が効率的です。ただ、ここは敢えてのんびり構えて、TOEICにこだわらない勉強をします。当然、一般的な意味でのListening力やReading力が付いていけば、TOEICスコアも徐々に上がっていきます。

短期集中でテクニックを磨く

上記を続けていても必要スコアに届かなかった場合は、短期集中でTOEIC専門の参考書に取り組みましょう。TOEICテストを受験するにあたってのテクニックを紹介する参考書はいくつかあります。テストは所詮テストなので、出題者の意図を酌み取るだけで、スコアはかなり上がります。また、受験直前には模試に取り組むと、慣れによってさらにスコアがさらに上がりやすくなります。今の出題形式で有効かどうかは分かりませんが、私の取り組んだものの中では、以下が役立ちました。

一定のスコアが出たらすっぱりやめる

これまで記載してきた通り、TOEICスコアを取るための勉強は、英語を使いこなすための勉強とは乖離しているため、ダラダラと続けるべきではありません。必要スコアが獲得できたら、すっぱりTOEICの勉強はやめましょう。個人的には、900点が取れれば、それ以上のスコアを目指すことにあまり意味を感じません。本当は860点でも良いのですが、キリ良さから、860点と900点は能力差があるような錯覚を起こします。日本においては、900点から上は全て「(実際にそんなことはないものの)すごく英語ができる人」と判断されます。それ以上のスコアをとっても評価はさほど変わりません。TOEICを生業にしようと思っている方以外は、990点を目指して勉強を続けることは時間の無駄です。

本記事は以下のマガジンの一部です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?