見出し画像

4-5. 文化の共有

英語を散々勉強してListening力もSpeaking力もそれなりになったはずなのに、ネイティブに混ざると無口になってしまうという方はいませんか。学校で隣の席に座った人と雑談を始めたは良いが、一通り自己紹介などを終えると話すことがなくなってしまう。私はMBAに留学した当初がまさしくそんな感じでした。心の中で、「アメリカでは隣に座っただけで会話しないといけないなんて面倒。」「そもそも、日本でもおしゃべりな方ではなかったので、アメリカに来ただけで突然おしゃべりになる訳がない。」などと思っていました。ただ、たまに日本人と会うとゲラゲラ笑いながら話していり、駐在先に日本人から電話がかかってくると普段外国人とは決して話さないような複雑な話をしていると、(社交的かどうかは別にして)日本語において自分は全く無口ではないことに気づきます。それでは、英語がある程度できるにも関わらず、会話が弾まない理由は何でしょうか。

文化を共有していない

会話というのは、面白いことを言って相手を笑わせたり、相手を気遣って慰めてみたり、愚痴を言うことで共感を求めたり、相手との関係性において成り立つものです。外国人との会話の場合、相手が何を考えているのか分からないので、相手に対して何を話せば良いのか分からないのです。たとえば、日本ではよくしていた笑い話を外国人にしたら全くウケなかったという経験をした方はいませんか。私は、このようなことが起こるのは、広い意味で相手と文化を共有していないからだと考えています。文化を共有していないと、相手が何を考えているか、どう言ったらどのような反応が返ってくるかが分かりません。相手を理解し、心を通じ合わせない限り、その人との会話が盛り上がることはないのです。

相手の国の文化が分からず会話が弾まないという現象は、日本に住んでいる外国人との会話ではなく、外国における外国人との会話においてよく起こります。日本に住む外国人の場合、そもそも日本に興味があったり、日本文化を理解していたりで、相手から日本人に寄ってきてくれるので、会話が盛り上がりやすいのです。

それでは、こうしたことを解消するためにはどうしたら良いでしょうか。

その国に興味を持つ

留学や駐在で行き先の国が決まっている場合には、その国のことを事前に学ぶと良いでしょう。米国であれば、ドラマや映画を観ることによっても、米国文化を学ぶことができますね。他の国の場合は、その国の近代史などを学ぶと良いと思います。また、その国に留まらず、世界的に有名な映画や音楽に興味を持つことも、外国における相手との共通のネタになり得ます。

プライベートの時間を共有する

外国文化を理解し、相手と打ち解けた会話をするためには、とにかく外国人と多くの時間を過ごすことです。日本で英語の勉強を始めた方は、留学や駐在で外国に行きさえすれば、このような環境を手に入れられると思うでしょう。しかし、現実はそんなに甘くありません。
たとえば、留学し授業に出たとしましょう。たしかに教授の話は英語です。たまには質問もされるでしょう。グループディスカッションもあるかもしれません。ただ、自分が英語を話す時間を合計するとどれくらいでしょうか。おそらく数分にしかならないはずです。そのまま家に帰れば、1日に英語を話す量はその数分のみです。しかも、話している内容は授業関連のみで、外国文化を知る要素はほとんどありません。一方、自身の学生時代を思い出してください。日本語でどれくらい話していましたか。家族や友人との会話を含めると、おそらく毎日数時間話をしているはずです。しかも、様々な人間関係の中で、会話の内容も多種多様です。したがって、英語でも日本語と同じように相手と心を通じ合わせて話せるようになるためには、プライベートの時間も含め、外国人との会話量を増やす必要があるのです。

ランチと飲み会はネイティブと行こう

海外に住んでいると授業や仕事が英語環境なので、ランチの時間や夕方以降は日本人と過ごしたい、あるいは、一人でまったりしたいという方は多いのではないでしょうか。ただし、このようなことをしている限り、外国人があなたに本音で話しかけてくることはありません。留学前にネイティブの友人に囲まれていることを想像していたのに、気づけば学校以外ではほとんど日本人とつるんでいたという方はかなりたくさんいると思います。外国人は皆親切ですが、ランチを別で食べて授業が終わるとそそくさと帰っていく人を友だちとみなしてくれるほど甘くもありません。
重要なのはとにかくその場にいることです。全く話せなくても、その場にいれば、徐々に仲間として認識されるようになります。会話に入れるようになるのは後からでも問題ないのです。特に飲み会は、酔っ払うことで羞恥心がなくなり、相手と会話がしやすくなるのでお勧めです。外国人も酔っ払うと、普段あまり話さない日本人にも話しかけてくれます。学校にいるだけでは決して分からない、人間関係の裏側などを教えてくれます。パーティなどの誘いはなるべく受けるようにしましょう。

MBA留学時に東欧への研修旅行に参加した時のエピソードをご紹介します。内容に興味があったので参加表明したものの、後になってから知り合いが誰も参加していないことに気づき、行く前は不安でしょうがなくなりました。2人部屋というのも憂鬱になった原因です。最初は旅行期間をどうやり過ごそうかということばかり考えていましたが、毎日の飲み会にはとにかく付いていきました。初めのうちは、あまり話しかけられませんでしたが、次第に自然と話すようになり、最後の方は、毎日夜中の4時くらいまで一緒に大騒ぎしていました。この時の友人たちは、彼らが日本に来る際に連絡が来るなど、仲間意識が今でも続いています。

専門知識を英語で言えない

文化の共有以外では、英語における専門知識の不足も会話ができない原因となります。私は保険会社に勤めているので、たとえば日本語で「異常危険準備金の取り崩しができるので利益は確保できる。」「利益の半分を配当と自己株式取得で株主還元する。」といったような専門知識だらけの会話をしたりします。一般的な英語の勉強をいくらしていても、TOEICが990点でも、これらを英語で話せるようにはなりません。結果、英語はそれなりにできるはずなのに、ビジネスでは通訳に頼るような事態に陥ってしまいます。
これを解決するのは経験しかありません。駐在の有無に限らず、社内で英語の資料を書く、外国人との打ち合わせに参加するなど、とにかく経験値を稼ぎましょう。これは勉強ではどうにもなりません。逆にここは慣れの問題なので、自宅学習などの努力も基本的には必要ありません。

今からの努力でどうにかなる話ではないのと英語と直接関係がないので本論からは外れるのですが、外国人との会話を弾ませたり、一目置かれる存在になるためには、特定の文化に依存しない特技を身につけておくと有利です。たとえば留学であれば、ダンスやDJができる人は、英語が話せなくてもクラスの人気者になります。私の場合は、アメリカ人に比べ、数学や経済学などで知識があったので、留学中チームで一緒に課題に取り組む際などには重宝がられました。あとは、ただ単に相手に親切にする、相手の期待に着実に応えるというのも、相手の信頼を勝ち得る方法の一つです。

本記事は以下のマガジンの一部です。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?