桜の名所は日本にいくつあるのだろう。 おそらく軽く100は超えているだろう。 毎年お花見をしたとしても、 死ぬまでに名所を回り切ることはできない。 そう考えると、一年に一回の この花咲く機会が非常に大切な気がしてきて、 必ず毎年お花見に行っていた。 だが、今年は行けていない。 もちろん、あの世界を脅かしている ウイルスのせいだ。 まさか、お花見すらできない日々が来るなんて 想像もしていなかった。 改めて「普通の日常」の尊さを 実感する機会となった。
連れて行かれたのは焼き肉だった。 なぜ焼き肉?と思ったが、 黙って彼の後ろをついてお店に入った。 * * * * * * * * 「ランチでも食いながら話そっか。」 彼は、そう言いながら私の顔を見た。 主張をしろと言う割には 主張をすると否定されることや、 売上とかスキルアップとか 自分の興味から最も遠いもので 評価されることにも疲れていて、 私は少し渋い顔をしていたのかもしれない。 彼はそれに気づいたのかわからないが、 あっけらかんとした口調で
このチョコレートの賞味期限を、 この恋の期限と決めていた。 会う予定もなく、 渡せる見込みも全くないまま、 チョコレートを買った。 彼のように、 落ち着いた優しい甘さのチョコレートだった。 このチョコレートの賞味期限が切れるとき、 この恋も終わらせるつもりだった。 ふらっと入った喫茶店で偶然彼に会って、 そのときたまたまこのチョコレートを持っていて、 余ったのでどうぞくらいのさりげない感じで チョコレートを差し出すという、 現実には起
その日はあまりにも寒くて、 せめて身体だけでもあたためようと、 一駅手前の銭湯「小杉湯」へ向かった。 東京へ来て銭湯へいくのは初めて。 小さい頃、おじいちゃんの家の近くの銭湯に、 よく連れて行ってもらったなあと ぼんやり思い出した。 なんとなく高円寺のお店はどこも、 一見さんお断りみたいな雰囲気が あるような気がしてたから、 (完全に偏見なんだけれども) 入るのに少しの勇気が必要だった。 中に入ると、わたしのそんな不安には まるでどうでもいいとでもい
2月1日、快晴。 2月とは思えないほど暖かくて、 今見ているのは写真か絵かと思うくらい、 空が青かった。 昼間に浮かぶ空の月は、 居場所を間違えたんじゃないかと、 少し恥ずかしがっているように見えた。