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左右わからなくなるので、識別を支援する装置を作ってみる

右と左がわからないときってありますよね。
わたしはあります。

俗に言う「左右盲」

です。うちの家族はほとんどこれです。
少し前に左右盲について書いた漫画が話題になったりして、知名度がそこそこ上がったかもしれません。

わたしは右利きの21歳、大学4年生です🙋‍♀️(自サイトはこちら

小さい頃から左右の識別が苦手だった覚えはないのですが、15歳くらいからじわじわと悪化したように思います。
ついでに、「押す・引く」「吸う・吐く」といった、対立する概念全般が苦手です。そして方向音痴。
とはいえ重症ではないので、平常時は安定して識別できます。
緊張しているとき、焦っているとき、疲れているときなど、コンディションが悪いときに発症します。例えば...

🥋 少林寺拳法の実技試験

基本的な技術の確認の中で、口頭で指示された方向(前後左右)・足捌きで移動するというものがあります。
これがはちゃめちゃに苦手でした。今まで7回試験を受けてきましたが、間違えなかった記憶がない...。

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試験です、緊張しています
そして、指示を出す試験官さんは受験者に向かい合うように立っています。たぶん、これが追い討ちをかけています。
私たち受験者から見た方向で動けばいいのはわかっていても、あなたは逆向きに立って指示しているよねっていう意識が、潜在的にむしばんでくるような......。

🚪 初めましてのドア
初めて訪問した建物のドア、開け閉めに苦戦することがあります。
バイトの面接で初めてオフィスを訪れたとき、入り口には観音扉系のドアがありました。

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面接が終わって、「さぁ出るぞ」と思ってドアに手をかけたが、......これ、動かすのは、どっちだったか......。
お見送りに来てくださっていた方が、「左を押すんだよ」と教えてくださったのですが
左を!!押す!!
ダブルパンチ!!!!
緊張して疲れてたので、受け止め切れず、右を引いたと思います。

🧘‍♀️ ヨガ(オンライン)
こちらは、「左右」「吸う・吐く」が登場します。しかもオンラインなので、先生は鏡なのか否かを考えるところから始まります。非常にまずい。

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左右については結果的にバランス良くできてれば良いはずなので、最悪ずっと逆でやっていても良いのですが、途中で破綻すると、同じ側を2回やってしまったりして、瞑想どころでは、ない......。

👁 視力検査
生涯 指差しで回答していたんですが、親父に「小学生か」って言われました。え、みなさん口頭で回答されてるんでしょうか。

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でも、言葉で伝えて正確に測定できなかったら元も子もないです。そして、検査に立ち会ってる人、自分と同じ側にいるとは限らないですよね。あと、ランドルト環の立場になると、彼らは我々に見える方を表にして生きていると思うので、そこも引っかかってきます。ああ...。


どうにかしたい

できるものなら、どうにかしたいです。
訓練で治るかなと思い、簡単なテストを継続してみました。
5〜20秒のランダムな間隔で再生される「左」「右」の音声に対して、対応する方向キー(←/→)を押す試行を10回繰り返す というもの。
音声が再生されてからキーを押すまでの反応速度と、ミスした回数を記録しました。
反応速度については、ただの瞬発力のテストみたいになってしまうなと感じ始めたのですが、判断に時間をかけすぎていないかという参考程度に。ミスが減っているかを重視します。

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1ヶ月ほど毎日継続してみたのですが、間違える時は間違えるという感じで、明らかな改善は見えず、また感じませんでした。一度間違えると焦ってしまい、連続で間違えやすくなることははっきりしたのですが。
そもそも、わたしはこれから左右を識別するぞ!っていう状態になっているときのパフォーマンスなので、実用的でないようにも思います...。

難しさの考察

音(ことば)としてのやりとりが難しい👄👂 😵
左右を口頭で指示される、つまり聴覚にインプットされるのが、他の感覚から入るよりも数段難しいと考えます。
左右という空間的・相対的な概念を、脳内で言葉として処理して、現実空間の位置関係にアウトプットしないといけない。逆(しゃべるとき)も然り。

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うーん、処理が多い。
「こっちだよ」って方向を教えるとき、手とか肩をトントンすることありますよね。ああいう人が常に味方についてくれていたら、非常に心強いです。触覚で伝えてもらえるとわかりやすい。
ならば、音声で来たものの識別は外部に委ねて、触覚フィードバックを得ればいいのではと思いました。


左右を教えてくれる装置を作る

手始めに、「左右」に関する言葉を音声認識したら、触覚フィードバックするウェアラブルデバイスを試作してみました。
juliusをインストールしたラズパイで、「左右」関連語を収録した自作の辞書を使って音声認識し、サーボモータを動かします。

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家にあったゴムに3Dプリンターで出力したサーボモーターの土台を取り付けて、腕時計チックな体にしています。ハードの設計は不慣れなので、ツッコミどころが多いと思いますが...... 試作は早いのが一番!

動画は、「右」「左」の音声がランダムに再生されるのに対して、サーボが応答して手を叩いてくれてるというものです。
サーボでやった後に、これ、振動モーターでいいじゃんか!となったのですが、当時持ち合わせていなかったこともあり...。音声認識にラグがある上に、サーボが回るのに時間がかかってるので、せめてアクチュエータは爆速なやつの方がよいですね。

課題

音声認識に1秒弱くらいラグがある

さすがに冷静な私が判断した方がまだまだ早いです。でも、判断の正誤を後から教えてくれます。合っていた場合、私は自信がついて、自己肯定感が爆上がりします。成功体験が苦手意識を払拭してくれるかもしれません。

文の切れ目が来るまでFBがこない

「右」とか「左」とか単発なら、比較的すぐにフィードバックを得られます。文中に登場した場合、拾えはするのですが、文の切れ目がくるまでFBが来ない処理になってしまっています。こちらは実装頑張れば解消するかも...??(技術力...


左右識別困難に関する研究

先に触れるべきかなと思ったのですが、本編までが長くなりすぎてしまうので後にしました。

「left right confusion」などでググると、左右識別困難に関する研究は一定数見つかります。とくに海外では盛んなようです。
最近だと、2020年に出版された、健康な人の左右混乱の大規模調査に関する論文があります。前書きで、これまでにこの界隈で行われた研究をざっくりさらえます👀  ↓

Distinguishing left from right: A large-scale investigation of left–right confusion in healthy individuals

国内だと、愛媛大学教育学部の2006年の論文に、日本の大学生での調査結果があります🔍 ↓

健常大学生における左右識別困難

女性の方が識別が苦手な傾向があるだとか、発達障害との関連性とか、そういう議論は多いのですが、識別を支援しようみたいな研究はあまり見つからず...(あったとしても気付けていないので、教えて欲しいです)。
「お箸持つ方だよ」とか、「ミサンガつけよう」とか、「タトゥー入れたよ」とか、民間療法的な対処法は見つかるのですが。
思い出したり、見たりして考えないといけない。不確実だし、あまり根本的な解消になっていないと感じました。

この取り組みの意義

わたしが当事者として、この識別支援の取り組みをするのは、以下のような意義があると思っています。

課題(WHAT):
左右の識別が苦手な人が、混乱や事故を引き起こしている可能性がある
なぜやるのか(WHY):
・瞬時かつ正確に判断を提供しないと役に立ちにくいところが難しい
・左右を自分で判断するのではなく、外に委ねるところが面白い
効果(Effect):
・ヒューマンエラーによる事故の防止
・左右識別の苦手意識の排除
・そもそも自力で判断するという枠組みから抜ける

左右なんて、前後がないと決められもしない、すごく微妙なもので、実はこだわる必要はないのかもしれません。
「触覚でFBを」という時点で、言葉としての左右はもはやいらなくて、単に「あっち」と「こっち」という「方向」がわかりたいだけなのだなと思いました。
でも「左右」は、私の生活圏ではあまりにも日常的に利用されているし、自分も含めてこの概念を敷いて生きてしまっている。
左右が苦手な人もそうでない人も、便利で醜い左右を味方にできる世界を見てみたいなと思ったのでした。

こわいですね、賛否?両論あると思うんですが、ある程度やってみないとわからない...。
工学の専門でも、認知科学の専門でもないので、アウトプットには苦戦すると思いますが、引き続き探っていきたいと思います。

いろんな声を聞いてみたいです🙏

左右識別困難は、当事者にとってどんな課題があって、非当事者にはどう見えているのか...
身の回りとネット上の知見しかないので、下記のアンケートに答えていただけますと、大変参考になります🙇‍♂️

アンケートに回答する(Googleフォームが開きます)

ちょっと長めの記事になりましたが、ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。💖 😊



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