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連載小説【DRANK】4/23

谷崎潤一郎の春琴抄と痴人の愛、それから蝶々夫人。

子供ながらに男を翻弄することを悪と感じられない天性の魔性。感情の根っこにある争うことができない寂しさが彼女たちを魔物にする。

川端康成の伊豆の踊り子では聖女の色が濃すぎてしまう。
彼女が求めているのは純粋な父性ではなく、自分に翻弄されることを演じられる男のパートナーなのだから。


オリオンが読み進めるごとに、かぐやの本質をつかみはじめていた。
ふらふらと男の間を行ったり来たりしている?いや、選びかねている?誰に操建している?誰に遠慮して最後の膜を突き破らないようにブレーキをかけている??

むさぼり読み漁るオリオンの隣に女性が座る。ふと顔を上げた。
かぐやだった。

「こんにちは」
遠慮がちなかぐやに、痴人の愛のナオミも春琴抄の春琴も重ねることができなかった。蝶々さんか?踊り子ならかろうじて重ねることができたであろう。

抱きしめてしまったらどうか?
オリオンは思案する。考えあぐねて挨拶をして、にっこり微笑んでみた。すごく緊張している。

異国の中心都市のサラリーマンが行き交う公園のベンチで、俺はようやくかぐやに会うことができた。

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