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消息からのあらすじ【Epi2-1】

「麻酔ってしたことありますか?」
調査団の私は彼女たち3人と会うことになった。季節がもうすぐ冬から春になるから何を差し入れたらいいのか迷って、日本人女性の友人たちに色々と相談をした。「生理用品なんかどうかしら?」「お化粧品も喜ぶかもしれないわよ」「そうね、ちょっとした春物のカーディガンとか」。母であった人、姉であった人、娘であった人、過去に思いを馳せれば彼女たちは離れていても家族のように可愛い存在なのだとすぐに感じられた。
会議室から戻ってきた男性陣は私たちのおしゃべりに気づいて、凍てつくような声色で言った。
「食い物だろうな。それから保冷剤、脱脂綿とか、綿棒とか」
女性たちが俯いた、自分を恥じているかのようだった。

麻酔は、そうね、一度だけ。子宮筋腫の手術をしているから

「それは病院ですか?」

ええ、もちろん。
変なことを言う。日本は世界から見ても類いまれなる国民皆保険制度がある国だというのに。

「麻酔医という専門医がいることを私たちが知ったのは最近だった」

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