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税は年貢ではなく社会を支える利用料

所得税とか消費税とか、会社なら法人税とか、その他いろいろな税金。それは「納める」のですが、通常の会話だと「取られる」と言いがちです。金額が小さい人も大きい人も、あまり払いたくないという人が多いのでしょう。自分だってそうです。歴史的にずっと、お上に取り立てられるという意識が強いのではないかと思います。とは言え、です。

社会を維持するにはお金が必要です。戦争にならないように、犯罪から身を守れるように、道路が通れるように、水道が使えるように、ごみを収集してもらうために、働けなくなったときのセーフティネットのために、などなど。これらが無くなったらと思うとぞっとしますし、誰かが勝手にやってくれるわけでもないですよね。建前としては国民が主権者ですから、お金も国民が出すということになります。そのお金を誰がどの程度負担するか。納税について少し考えてみます。

収入が最低限度の生活をしているのに税金を納めるのは難しいですよね。ですから所得税にも住民税にも納め始める最低金額が設定されています。消費税にはそのような設定は無く、誰もが同じ税率が納めなければなりません。そして所得税は累進課税です。所得が高くなればなるほど、税率も上がっていく仕組みです。かつては所得税の最高税率が70%、住民税の最高は18%という時代があったようです(今では所得税最高45%であり、住民税は10%固定ですが)。これは金持ちへの嫌がらせでしょうか。いいえ、納める能力がある人に多く負担してもらおうと言う考えなのです。

法人に掛かる税金はどうでしょうか。中小企業かどうかとか、いろいろと条件が異なるのですが、国や地方合わせて、おおむね30~35%といったところです。こちらも昔はもっと高かったのですが、諸外国が、自国から出ていかないように、あるいは誘致するように競争したおかげで、どんどん下がっていきました。一部には法人税を下げて税収が減った穴埋めとして消費税を上げているのだと言う論調もあるくらい、下げることに疑問を感じます。法人に掛かる税金を上げるという意見に対しては、国際競争力だとか、外国に逃げるだとか、反対する力が強いようです。果たしてそうなのでしょうか。法人に掛かる税金を下げても、実態としては社員に還元されるわけでも成長のための投資に向かうわけでもなく、内部留保に回ったり株主に還元される割合が多いようです。法人の実効税率を下げる当初の目的とは違うのではないでしょうか。法人税の高かったバブル期の方が世界と戦えていたという意見もあり、確かにそうだなと思います。

法人は日本で活動しています。安全な社会で、整備されたインフラ(電気ガス水道、道路鉄道、等)を使い、高い教育水準の労働者や消費者を相手にして、です。これらは基本的に税金で賄われています(民営化されたものだった元は国費でした)。それらを使うのだから、利用料を払うのは当然です。払わないとしたらタダ乗りですね。法で認められた節税は権利ですが、それを超えた脱税はいけませんね。そしてレベルの高いサービスを受けているのですから、利用料(税金)も高いのが当然です。売上から経費を引いた利益に対して税金はかかるのですから、儲けたお金の一部を利用料として納めるのは、「喜んで」ではないでしょうか。それがまた、回りまわって自社の営業に好影響を与えるのですし。

個人の所得税についても、やはり同じ考え方でしょう。高い収入を得られているのは、良い環境・社会を利用しているからともいえます。そうであれば、利用料を払うのは当然です。たくさん儲けているのだから、社会の恩恵もたくさん受けているはずなので、税率が高くなっても見合うでしょう。それを不満に思うのは、現在の状況が自分の努力だけで得たものだと思っているのではないでしょうか。もちろん、高い収入を得ている人は努力しているのでしょう。しかし努力だけではなく、能力と運も重要な要因です。運とは、生まれ育った環境、周りの人々、社会の状況、などです。それらを無視して自分だけの力と考えるのは驕りではないでしょうか。儲けたお金の一部を社会に還元することに、なぜ抵抗するのか不思議です。もちろん、アメリカの富豪のように大金を寄付することが状態になっていたら、それはそれで政府よりも自力で民間でという思想でもあるので、素晴らしいと思います。しかし日本で、どれだけの人が寄付しているのでしょうか。

人間は一人では生きていけません。社会からの恩恵を受け、逆に社会に貢献し、生きています。払える力のある人や法人が、利益に見合った利用料を払うのは、当たり前だと思うのですが。こういう考え方は、自分が高所得者ではないからなのでしょうか。高所得者や高い利益を上げている法人代表者の生の声を聴いてみたいものです。税金の使い道に不満があるという意見もあるようですが、それは主権者として声を上げるべき話であり、だったらどれだけ寄付なり社会貢献投資なりをしているのかということですしね。

昔は高額納税者が発表されていました。今は個人情報だということで秘密にされていますが。法人の場合は損益は公表されますが支払った税金は明確ではありません。一方で、明確になると、金持ちや高利益企業には嫉妬の声があることもあるでしょう。個人や法人について、税金を公開し、高額の場合は表彰すればどうでしょうか。それだけ社会に貢献しているということで。

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