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山便り (25)

屋根の葺き替え

 丸太小屋も10年経って、最近雨漏りし始めた。野地板の上にアスファルトルーフィング(厚手の防水紙)を張り、その上に杉皮を五、六層重ね、割竹で押さえてある。先々山のごみにならぬよう、自然素材にこだわった。だが、自然素材は生き物に優しすぎて、杉皮の表面には、杉やこけが生えている。もう少し持つかと思っていたが、雨漏りするので修理することにした。

 竹を止めてある釘は五寸釘である。野地板を打ち付けてある垂木までしっかり届いていて簡単には抜けない。こんなことなら、もっと短い釘を使えば良かったと愚痴をつぶやきながら、腐って釘抜きのテコも効かなくなった竹をはずした。竹をはずしてしまえば、スルスルと杉皮皮は落ちていくと思っていたが、そうは問屋が卸さなかった。杉皮に生えた杉の根は、杉皮を通り越しアスファルトルーフィングを突き破っていた。雨漏りの原因は杉皮の上に育ち始めたこの幼い杉だったのである。この杉が屋根の上で大木になれるはずもなく、引導を渡してすべてを取り去りトタンに葺き替えた。

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