2020秋アニメ総括|アニメ
せっかくいい素材がそろってるのに、調理法に味付け、それで合ってる?
……と言いたくなるような、もったいない作品が目立ったように思います。プロがよってたかって制作するアニメ作品なのだから、ストーリーの部分ももうちょい頑張れ。
ごちうさ3期はそんな中でも出色の出来。きららが自分の守備範囲というのもあるけれど、話・絵・音のアニメ三本柱がうまく機能し合い、これまで積み重ねてきた物語の集大成的な素晴らしい出来栄えになっていました。
ダークホース的オリジナルアニメの体操ザムライですが、ストーリーは大味だけれど、序盤に抱かせてくれた期待におおむね応えてくれた良作でした。主人公の娘・玲ちゃんは断トツで今期ヒロイン賞獲得。
アニメ界にもじわじわと忍び寄る「百合」。今期は安達としまむらが魅せてくれました。ささやかな日常と心情の機微。話毎の前後半で語り手を変えるスタイルも、シンプルだけれど巧みで飽きさせない。
魔女の旅々はキャラクターや全体の設定などは悪くなかったですが、連作ショートショートとしてはやはりお話が弱い。戦翼のシグルドリーヴァもキャラデザがいいのでだらだら見てましたが、後半は流し見程度になってしまいました。おちこぼれフルーツタルトはかわいいキャラクターの下品な言動をどこまで許容できるか。個人的にはちょっとやり過ぎな印象。神様になった日は残念。やなぎなぎのOPやPAworksの絵はすばらしかったが。ひぐらしは初見ではきつかったので中途脱落。
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以下、ごちうさ、体操ザムライ、安達としまむらの感想。ネタバレあり。
ご注文はうさぎですか?BLOOM(3期)
いわゆる「ごちうさ」。まんがタイムきららMAXに2011年より連載中。2014年にアニメ1期目、2015年に2期目、2017年新作アニメーションの劇場公開、2019年にOVA。そして今回、満を持してテレビアニメ3期目の到来となりました。
ここまで見ておいてお前それ言うかですが、実のところ、自分はこの作品の楽しみ方がいまいち分からないでいました。
ストーリーらしいストーリーもなく、ただただ流れ行く日常。ストラスブールの街並みをモデルにしつつも、なぜか日本的な慣習が色濃く反映された謎の世界観。延々としゃべりたおし、ボケたおすキャラクター。
今回、この3期目のアニメを拝見してようやく、本当にようやく、自分にもこの作品を支える美しい通奏低音が聞こえてきたのです。長い道のりでした。
母を亡くし、笑顔と自信を失った内気な女の子が、親元を離れひとり移り住んできた明朗な少女との出会いを通して、ゆっくり少しずつ立ち直っていく。そんな心温まるガール・ミーツ・ガール。
クリスマス回、すばらしかったですね。涙出ました。3期目にして、こんなに見事な景色が広がっているとは……こういう作品を見ると、物語はやはり積み重ねだと、つくづく思い知らされます。
傑作です。
体操ザムライ
小説やマンガの原作によらないオリジナル作品。
舞台は2002年の日本。主人公・荒垣城太郎は、五輪のメダルまで獲得した日本体操界のエースでしたが、妻の死、またケガもあり、近年では思うような成績を残せないでいました。引退を決意した城太郎は、娘・玲との思い出作りにと日光江戸村へ旅行に出かけ、そこで不思議な外国人・レオと出会います。なんやかんやで荒垣家に居候することになったレオは、城太郎のことをよく知っている様子で……
レオとの出会い、玲の気持ち――城太郎は、引退会見のその最中に、自ら現役続行を表明するのでした……
最終的には城太郎が日本チャンピオンに返り咲くまでを描きますが、その流れはちょっと強引でもまぁよしとしましょう。作画は作品全体を通して高水準をキープしていました。
キャラクターがいいですね。どのキャラクターも非常に立っている。城太郎はバカだけどストイックで憎めない。世間ずれした不思議ちゃんのレオも、本当の顔はバレエダンサーという設定はまったく悪くなかった。
そして玲ちゃん。とにかく健気で元気で優しくてかわいいのだ。
2020秋アニメでは間違いなくヒロイン賞の筆頭、2020年全体で見ても優勝候補。エピローグで描かれた、髪の伸びた玲ちゃんもよかったです。
原作付きアニメはもちろんいいのですが、オリジナルアニメこそが本来のアニメだと思っています。
来年もまた、すばらしいオリジナルアニメとの出会いがありますように。
安達としまむら
ライトノベル原作。アニメ界では比較的新しい潮流である「百合」をテーマとした作品です。
BLにしろ百合にしろ、これまで自分はどこか誤解していたところがあって、これらは必ずしもリアル世界の同性愛・LGBTQの恋愛を描いているわけではないのですよね。もちろん、たとえばゲイカップルの生き様を丹念に描いた作品もBLに含まれるでしょうが、それはBLの一様式に過ぎない。BLも百合も本来、キャラクターとキャラクターがしだいに仲良くなり、強い絆で結ばれる、その過程を楽しむ作品であって、それはあらゆるジャンルに普遍的なものです。
少しうがった見方をすれば、リアル世界で崇め奉られている男女間の「ふつうの」恋愛に疲れた人、見たくない人が、そこから逃避する場としてのBLや百合を求めるのかもしれません。
本作の二人、「安達」「しまむら」は、もしも現実にこんな人いたらただ面倒くさいな、というキャラクター。文芸にはありがちだけれどアニメにしては珍しい、多過ぎる独白シーンがそう思わせるのかもしれない。
授業を抜け出し、体育館の隠れスペースで出会った二人は似た者同士ですが、粘着質で独占欲の強い安達は、いつもそっけないしまむらの対応にいらいらしては、ほんの少しの優しさ、たとえば手をつないでもらったり、プレゼントをもらったりするだけで喜び、跳ねまわる。
伝統的には安達としまむらは男女カップル。どちらが男でも「よくある話」に見えます。あえてキャラクターを女性にすることで新鮮さを加え、かつリアルへの風刺を可能にしているように思えます。
ラノベ原作は基本的に苦手なのですが、これは割と見られました。