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桃を食べられるようになってからしばらく経った

「一番好きな食べ物は?」という質問に対して

迷わず桃だと答えるようになったのは大学に入って3年目くらいだと思う。
小さい頃から桃が好きだったが、一人暮らしを始めて桃が高級品であることを知った。
2個で798円の桃を横目で見ながら、キウイやりんごやオレンジなど、いつも手頃な価格の果物を買い物かごに入れる。

そんな日々を数年過ごした後、
いつも通りスーパーで桃を素通りしようとした時に、

私は何歳になったら桃を食べられるんだろう?

という疑問が脳裏をよぎった。
だって私って果物が大好きで、果物の中でも桃が一番好きで、
なんなら全ての食べ物の中で桃が一番好きかもしれないのに、
このままだったら40歳、50歳、へたすれば最後の晩餐まで桃を食べられないかもしれない、、、

と思った日から、私は桃を買い物かごに入れるようになった。

CAFE CABARETに行ったのは、白桃とブッラータチーズのカプレーゼが食べたかったから。
ドリンクと3つの料理を注文し、しばし待つ。
大きい窓からは路面電車が走っているのが見える。
くどうれいんのエッセイ本を読んで少し泣く。

耳朶の紫式部という編で泣いた

最初に運ばれてきたのはズッキーニの冷製スープ。
生のとうもろこしが入っていて嬉しい!と思った。
期待していた通り、と書くとあまり美味しそうじゃないけど、
期待していた通りの味がしておいしい。

次に運ばれてきたのは鶏のレバーペーストとパン。
まあバケット3~4枚くらいかな、と思っていたらカンパーニュ3枚分くらいのパンが盛られていて少しびびる。
レバーペーストは塗る量が少なすぎても多すぎても美味しくない気がして、つい真剣になってしまう。

冷製スープ、桃のカプレーゼ、レバーペーストの順番に運ばれてくる、という勝手な予想が外れ、
レバーの途中で桃を食べるのは嫌だなあ、とか勝手なことを考える。

運ばれてきた桃のカプレーゼを見た瞬間に「あ、メインディッシュだ」と思う。
同時に「ああ、順番これで正しいんだ」とも思う。
見た目から、香りから、嬉しくてどきどきする。
いつもはわざと少しゆっくり食べるけど、
閉店が近いからと一度も止まらずに最後の一切れまで平らげる。

Happiness is here

お会計をする時に、カプレーゼはシェアされる方が多いから、
丸ごと一皿食べられるのはとても贅沢ですね、と店員さんが言った。
大学生のうちに、桃を食べられるようになっていて良かった。



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