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バックキャスティングという考え方

「日本は2050年に脱炭素社会になる。」と決めました。脱炭素社会というのはどういう社会か。持続可能な社会とし、地球温暖化を止めるということです。産業革命以来、化石燃料を使う人間の活動から出てしまう二酸化炭素を出す社会からの脱却です。同じような生活をしながら、エネルギーをできるだけ省エネルギー化し、使うエネルギーを再生可能エネルギーに切り替えるということです。ここまでは異論はないと思います。(そうは言ってもまだ日本では地球温暖化に対する懐疑論は根強いですね。)

さて、問題はこれを実現するのは難しいので、ついつい「それって無理だよね」って言って思考停止になることです。どうしたら実現できるかというロジックも大事ですが、それはどんな社会なのだろうと実際の生活を想像する力も大事な気がしています。脱炭素社会では、家は省エネルギーになり、光熱費がかからなくなり、住んでいる人はより健康になれます。電気で走るクルマはガソリンを使わないので、化石燃料の生産量の上下に合わせて燃料費を心配することもなくなります。また、移動をしなくてもいいように、インターネットの会議システムもどんどん加速するでしょう。一方で、人との繋がり、さまざまな体験をするための移動は増えていくでしょう。

そういった理想の社会と現実社会をどう結んで、そちらに近づけていくかが大事で、年限を切って目標にするためにはどうしたらいいか、それを繰り返すのがバックキャスティングという言葉です。実はこの言葉、住生活基本計画に載ってました。その言葉を載せた以上、計画がバックキャスティングされていないのではないか。そうしないと脱炭素社会の実現はないのではないかというのが、東京大学の前先生の主張でした。温暖化の結果、灼熱の夏を迎え、山火事や台風に怯え、農作物の収穫が減ったり、漁獲が取れなくなったりする社会にしないためにも、想像力を働かせて、その社会を考えることが大事です。

インターネットの誕生だって、統合型のコンピュータの仕組みではなく、フラットにつながるコンピュータの社会の実現を夢見て始まり、実際にそうなりました。元々のコンピュータは非常に高価で誰の手にもできないものが、当時のスーパーコンピュータがスマホの中に入るようになってきたのです。同じように再生可能エネルギー、特に太陽光発電の設備に値段がどんどん下がって、他のどのエネルギーよりも安くなってきているということになってきました。

目標は2050年の脱炭素ですが、それをさらに前倒しにしないと1.5℃以内に抑えられないことがわかってきました。2030年46%減をさらに急がなくてはいけないわけです。そこでは、何をどうしていくのかという違う想像力が求められます。

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