現実風味のクロノトリガー

旅立ち!夢見る千年祭


ガルディア建国1000年、長い歴史を持つ国であるものの先進国の中ではあまり目立たない国である。人口約200万。九州程の面積。目立つ観光スポットもなければ特産品もないが資源は豊富にあり自立した国である。昨今の世界情勢、特にウクライナ、ロシア情勢不安から世界経済のマイナス面を少なからず受けるのは避けられない。今だからこそ何かできないかと思案したガルディアは建国1000年を祝う名目にて祭典を開いた。

祭典のテーマは『夢』
主に技術振興を目的とし、世界の基礎的研究を一同に集めて夢を披露し、戦争を続ける無意味さを問おうとするものである。昨今のコロナ情勢も鑑みて祭典の内容は映像配信にこそ予算をかけている。

期間は7月から年越し8月終わりまで。祭典には千年祭会場とは別にオンラインのバーチャル空間が設定され、世界各国(160)から営利、非営利問わず様々な個人、団体が出店する。リアルブースの多くは1~2週間の短期の出店契約を結んでいて、その期間が終わったブースは別の企業に貸し出される。

当日、人々が最も注目しているのはテレポート装置を開発したとの噂が流れていたルッカアシュティアのブースだった。ルッカは大学生でありながらAIに関する技術特許を複数所有する個人発明家である。また機械工学にも詳しく、商業用カラオケロボや軍事兵器に転用できそうなロボを開発したりと、政府や企業が一目置いている。影のファンが数万人規模でいて、当日の会場はルッカのファンでごったがえしている。

ルッカはアイドル的な存在で、ボディガートが必要とされた。千年祭委員会はルッカのブース周辺に警備員を30人配備し、観客がブースに雪崩れ込まない様に非常線をはっていた。

ルッカはテレポート装置のテスト段階から、マスコミのインタビューを受けていて、その装置の完成度報道されていた。当日はルッカ特集の番組も放送され、リアルタイムに公開実験映像が流される。ガルディア人の殆どはチャンネルをルッカに合わせていた。

朝7時、ブルーインパルスが上空を駆け巡り、ガルディア文字が浮かび上がる。風船が上がり、セレモニーや開会式が披露される。セレモニーが終わるとガルディア陛下の挨拶があり、8時丁度に千年祭は開催された。

その日、マールは王族として父の公務に同席していたが祝辞の最中に席を抜けだし、護衛の監視目をふりきった。マールは王族の立場から逃げようとしていた。

マールは現在16歳。王家のしがらみに不満があった。
常に護衛をつけられ監視され何事もスケジュールをSPに管理される生活に嫌気がさしていた。一般人の様に気楽に家族や友達と千年祭を楽しみたかったマール。同年代の人達みたいに友達や恋人を作ったりしたかったし、マンガの様な出会いにも憧れていた。

マールは置き手紙をしていた。一人立ちすると明記され、仕事が決まって生活が安定したら連絡するから安心してね。との一文を添えていた。

16歳なればどこかのバイトで雇ってもらえるはず、と思っていたマール。 髪型をポニーテールにして変装しつつ正装服を脱ぎ捨てる。自由になるオカネを持たされていなかったマールは出店企業の中から当日バイトの面接を受けるつもりで走っていた。マールはキャンディー屋さんや、スイーツ屋さんで働きたかったのでそのブースへと走った。

7時45分、セレモニーが終わり、ガルディア王は演説の最中だった。その隙にマールはキャンディー屋さんで面接を持ち掛けるものの撃沈。履歴書を握りしめて心機一転。別のスイーツ店に走っているところでクロノとぶつかった。

クロノ

クロノはルッカのブースにて実験をサポートする予定だった。寝坊した訳ではない。クロノはルッカの家からテレポート装置のミニチュアを取りに戻っていた。大型装置を作る為の模擬機として小型のサイズを作っていたルッカだが記者からそれを見せて欲しいと頼まれていてクロノは走っていた。

クロノはぶつかったマールに謝ると急いでルッカの元にかけていった。 千年祭会場は開演したばかりで、まだリーネの鐘の前に人はいなかった。とにかく目立つ場所であり、マール自身この場にいては見つかるリスクが高いと思い、クロノと並走しながら走った。

遠目から見ればマールは出店する関係者の仲間に見えなくもない。クロノに紛れてマールはカモフラージュした。

そしてマールが気付いた頃にはテレポート装置に乗せられていた。 ルッカは実験に際してこれまで人物転送は公にしてこなかった。千年祭をサプライズ成功の場にしようと思っていた。実験はクロノでやった後、観客から募集をかける予定だったが怖がって誰も名乗りでない可能性もありえた。

若い女性がやるからこそインパクトがある。そう判断したルッカはバイト代を弾み、マールにサクラをお願いした。マールの仕事はクロノの実験終了後に、人混みに紛れつつ、手を上げて名乗りでる事だった。

しかし、想定外にてマールは15番目になってしまった。ルッカのファン(ルッカの実験ならば殺されてもいいファン)が名乗りを上げて、マールの出番はなかなか来なかった。マールは仕事を終えてオカネ貰った後に次にどこで仕事を貰うか考えていた。

クロノはルッカの助手としてテレポート装置に座る人々を監視していた。万が一装置が誤作動した際、被験者に危険が及ぶと判断された場合、装置から被験者を引きずり離す(守る)のがクロノに与えられた役目だった。

無線機に話し掛けるクロノ。テレポート装置にテスターが入る度、装置から変な匂いや異音がしないか等のトラブルの兆候や、装置にテスターの落とし物はないか等のチェックをしていた。問題がないと判断する都度、それを無線でルッカに報告する。それがクロノの夏休みバイトだった。

テストでは5m離れた台にテレポートするはずだった。 マールが首にかけていた金属に問題があったのか装置が異状音を鳴らし始めた。 クロノが直ぐに異変気付き、無線で報告した。

ルッカは制御装置の電源をオフした。しかし、止まらない。 電力供給を止めたにも関わらず動き続けた。

超次元転送装置は装置間をテレポートするシステムである。成功すれば5m先の装置に瞬間移動するが、もし故障等で装置への転送座標がずれた場合、物体は100%破壊される。瞬間移動により、光を越えた速度で粒子(空気等)と重なってしまい、爆発粉々になるからである。5m先の装置は予め空間の粒子の数を0にした状態(超真空状態)なので衝突による爆発を防げる仕組みになっている

実験の失敗=死
であり、マールを座席から強制的に離そうとするクロノ

しかし機器はショートし、強力なプラズマが邪魔をし、マールに近付けない。

会場がざわめく中、マールは恐怖し、異常な反応をするペンダントを外した。その瞬間、空間が裂けた。

ペンダントは空間に吸い込まれ、マールも吸い込まれようとしていた。

何が起きてるのか分からなかったクロノだが、とっさにマールの腕を掴み、引っ張りあげようと試みる。

~ゲートの先~

ゲートに呑まれた二人。視界が森に変わる。

突然、空気の味が変わった。美味しい空気。状況が飲み込めない二人は、そこが400年前であり大気がまだ科学物質で汚染されていない世界にいるという事実を知らない。

クロノは無線で現在の現状を報告、助けを求める。応答はなく、携帯を取り出すも電波も入らなかった。GPSも受信しなかった。

GPSの電波が入らない場所なんて地球上のどこにも存在しない。もし故障でないとすれば、地球外、異惑星に転送されたという意味になる。そんなのありえない!と考ていとマールから悲鳴が上がった。

頭がツルツル、真ん中から縦に割れた背の低い人。それはヨダレを流しながら迫ってくる。

ここが異惑星で目の前にいるのがエイリアンなのだ自身を納得せざる終えないクロノ

生物から危険を感じたクロノはマールに人を呼んでくる様促し、その場に残った。

敵の正体は魔族であるがクロノ達は魔族の存在を知らない。現代では魔族は空想上の生き物とされ、存在しない事になっている。そうなった原因は中世時代の特別な魔族にある。人間に擬態できる魔族が権力者に成り済まし、人間界の政権を支配した。同時にその魔族らは自分以外の魔族を滅ぼすよう国政を動かした。自分たちの餌(人間)を独占する為である。魔族を滅ぼす事で安心して人間らが繁殖していくのを期待していた。より人を安心させる為に歴史の書物、教科書類からも魔族の歴史を抹消し、世界は急速に人口を増やした。

故に現代人は魔族の存在を知らない。魔族を見た事が無かったクロノは、目の前にいる敵をエイリアンだと勘違していた。

クロノが対峙している敵は魔族の中では弱い分類にある野良魔族であり、知性が低い。とはいえ、魔族は氷河時代から火すら使わず寒い環境に適応し生き残ってきた。その強い遺伝子は人間よりも遥かに上にあり、丸腰で戦えばまず命はない。

マールを逃がしたが魔族の一体がマールを追いかけた。2対1であり、クロノが助かる見込みが格段に増加した。 とはいえマールも放っておけない。マールを追いかける魔族にクロノは石を投げつけた。

ツルツルの頭に当たる。ブチキレた魔族はクロノを追いかける。

クロノが勝っているのは身長差のみだった。身体能力が高い魔族だが身長差によりクロノと走る速度にそれ程の大きな差は無かった。魔族はクロノを捕まえられそうで捕まえられない。クロノは逃げながら橋の下に隠れた。足場は川である。

川の上流へ向かって石を投げ、再び橋の上に戻ると、魔族はクロノとは真逆の方向、音のした方向へ向かいクロノを見失った。 その隙にクロノはマールが逃げた方向に向かった。

山のふもとでマールを見つけたクロノ。マールは甲冑を着た男に話かけられていた。 男はマールを行方不明のリーネ王妃と勘違いしていた。マールは誤解であり人違いだと説明したが、男はクロノを見るなり言った。『きっと、この男に脅されているのですね? だから別人の振りしていて…』

にらみ合いをする二人、兵士はクロノを王妃誘拐の犯人だと思い込んでいた。妃の退路を確保するべく道を見る。マールとは逆の方向を一瞬みた。その一瞬の間にマールは消失した。

クロノも兵士も何が起きたか判らなかった。兵士はマールが消えた瞬間を見なかった。クロノはマールが消える瞬間を見た。マールの顔が見えなくなった。というより、クロノはさっきまで見ていたマールの顔を思い出せなくなっていた。

リーネが死ぬ事でマールが生まれなくなる仕組み。クロノがマールと出会わない歴史が作られる作用からクロノの記憶からマールが消えかけていた。だが、そんな仕組みは今のクロノは知らない。そもそも何故マールが消え、マールの顔が思い出せないのか考える暇は無かった

目の前の兵士は【王妃が突然消えた困惑をクロノを捕まえるという代償行為で解消】しようとしていた。目の前にいる赤髪男の正体は魔族であり、妖術か何かで妃を隠したのではないかと疑った。

クロノは思った。逃げるなら逃げきらないといけない。逃げて捕まってしまえば、やましい事があるとして逃げたのだから、酷い尋問が待っているかもしれない。最悪、拷問されかねない。

想像すると怖くなったクロノは全力で走った。 兵士は武器や鎧を装備していて足が遅い。逃げるのには有利な条件は揃っていた。

その頃、ルッカは青ざめていた。この転送テストは全世界に同時生中継されていて各国政府や国連も強い感心を抱いていた。今世紀最大の発明の披露と共に最大のトラブルを披露してしまったのである。会場にどう言い訳(説明)しようか悩んでいたルッカは叫んだ。『失敗は成功の元なのよ!サイエンスに失敗はつきものなのよ!』

いわゆる開き直りである。幸いクロノと被験者(マール)の死体は見つかってない。殺人罪は適応されないのだ。
怯えなくていいのだ!そう自分に言い聞かせて平静を保つ。

ルッカは二人が消えた瞬間を冷静に思い出していた。まるで映画の様なワンシーンだった。空間の裂け目がどこか異世界に通じているとしたら? もしそうなら更なるサイエンスの発見である。事故の際にペンダントが反応した事を思い出したルッカ。

ペンダントの石の成分、波長に原因があるのではと推理した。転送装置きは、あらゆる金属を試していて危険は無い事が判明していたが、未知の金属に関しては例外であり検証できなかった。再現実験するにはペンダントが必要であだったがゲートに吸い込まれてしまっている。

電磁波波動観測装置をチェックするルッカ。
特殊な電磁波、波動が機器を狂わせたり、事故に繋がる恐れがあるとき、類似した波動を発生させて共鳴させ悪影響を打ち消す為の装置を設置しているのだが、マールのペンダントが異常反応した際も波動は記録されていて、その波動と同じ波係を出せる様に機械にプログラムすればゲートの再現実験をできる可能性があった。事故の原因となったペンダントが今この場にない以上、他に方法がないと判断したルッカ。

検証は転送装置の電力出力を限りなく0にするところから始まった。装置がショートとしかけた事もあって、慎重に検証を開始した。

一回目の実験にて、電力出力が少しでもあれば同様のゲートを再現できる事が判明する。つまり携帯可能な小型の転送装置でもゲートの再現は可能になり、仮に向こう側の世界に電力設備がなかったとしてもバッテリーさえあれば戻ってくる事が可能であった。転送装置の小型の模擬機(サンプル)を作っておいたのが役立ち、1時間程で即席のゲートホルダーが完成した。

ゲートにドローンを入れる。目の前にクロノの死体がないので安堵する。温度計や酸素チェッカー、放射能測定器も使い、向こう側の安全を確認する。

安全そうなので、いざ入ってみることに。

心臓はドキドキ。

実験の一部始終はテレビで全世界に報道されている。ポーカーフェイスを保つ。

カメラ写りを気にして髪をかき上げたり、カメラ目線のままゲートに入る。
つまり後ろ向きでゲートに入ったせいで、お尻にかぶり付きそうな青いエイリアンがいる事気付かなかった。
ふりかえるとエイリアンと目が合い、絶叫するルッカ。 その声のデカさに青いエイリアンも絶叫した。驚いたエイリアンは茂みに隠れた。

すぐさま千年祭会場に戻ってゲートを閉じたルッカ。ゲート先で見た状況をマスコミに伝えるべきか悩んだ。

もしクロノとマールがエイリアンに殺されているとしたら責任問題になる。
悲しむ親たちと業務上過失致死からの警察出動、逮捕⇒牢屋⇒裁判⇒刑務所の流れが見えてしまい、これまでの輝かしい人生が走馬灯する。

今の状況で真実を公言する勇気はルッカにはなかった。

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ゲートの先には危険な生物がいる。武器になるものはないか探したルッカ。千年祭会場にいた刀鍛冶屋さんで日本刀を購入(身分証提示義務あり)しつつ、。サバゲーショップでエアガン(威力が高い物、身分証必要になる)も手に入れた。クロノを捜すのに必要になるだろう無線電波増幅装置も買っておいた(無線機ブースにて)

リュックにはゲートホルダーが壊れた際の修理に必要な工具類が一式入っている。ドリルや半だごて、工業オイルスプレー等、多様なものが入って20kgを背負う。

足りないものというより、あったほうが便利かもしれない双眼鏡を会場にいたルッカファンの一人から手に入れた。

クロノがゲートに入って1時間が経過していた。この間、マスコミや野次馬らは天才ルッカを信じて挙動不審なルッカの行動も温かく見守っていた。しかし現代に生き残っていたコウモリ魔族は違った。ルッカが準備をしている間にゲートの中に入る準備をしていた。コウモリはルッカがゲートに入る隙をついて自身もゲートに入った。このコウモリ魔族はルッカを尾行する任務を受け、派遣されてきた。

刀を背負い、エアガンを構え、エイリアンに警戒しながらゲートに入る。魔族はルッカの様子を伺いながながら距離をとりながらついてくる。

滝の音。ルッカには見覚えのある風景だった。トルース山の滝に似ている。もしトルース山だとしたらガルディア城もそこから見えるはずだった。

城下の景色には道路と車がない。 このガルディアはレンガ調の道で車の代わりに馬や馬車が主役である。双眼鏡を覗くと、人々の姿は中世紀頃の服装をしている。

中世紀頃のガルディアであるなら、ヨーロッパ各地で起きた黒死病(ペスト)の流行の影響を受けているかもしれない。ルッカの知るガルディアの歴史でも国内はペストの影響により経済危機にみわわれ、飢餓で死者を多くだしていた。もしそうなら治安の悪さも推測される。

街並みをみる限り、餓死者がいる様には見えないし、衛生状態も良さそうでペストが流行した形跡も見えない。

ヨーロッパ人口の三割がペストで死んだとされる、もしそうなら沢山の墓があるばすであった。

ルッカの考察は【あくまでここが過去のガルディアであるならば】である。エイリアン(魔族)がいる世界であるから別世界であり、歴史は地続きではないと思っている。

ルッカはリュックから無線電波増幅装置を取り出してバッテリーに繋いだ。クロノが持っている筈だろう無線と繋がる事を期待して言葉を投げ掛ける。

無事に繋がる無線。話を聞くとクロノは街中を逃亡中だった。現代的服装は目立ち過ぎていて、民家から服を盗んで人混みに紛れていたクロノは酒場でマールの行方を聞き込みしようとしたが、兵士らの追っ手が聞き込みにやってきて、それどころではなかった。

クロノは今時代をガルディア歴600年頃と推定していた。盗んだ服の中に入っていたコインに印字された年号からの推測だったがルッカはそれを聞いて、思い当たるふしがあった。その頃、リーネ王妃、誘拐事件があった。 現代の七不思議と呼ばれるもので、王妃はセキュリティの目がある王宮から忽然と姿を消した。王妃捜索の最中、教会を盗賊らが占拠している事が判明した。盗賊は王妃を利用して教会を身代金要求の場にしようと計画していたがガルディアの制圧にて王妃は奪還されるというものだった。

しかし大きな謎、盗賊は監視の目をかいぐくり、どうやって王妃を誘拐したのか、この謎は解けない謎としてしばしば現代では考察されていた。王宮内部から誘拐の手引きがあったとか、王家の退屈な生活に不満していたリーネが教会にて男と浮気していて、その男が誘拐犯人で利用された等、その手の恋愛ドラマが流行った事もあった。

トルース山にてマールがリーネ王妃に見間違われると捜索範囲がガルディア北東部に集中してしまい、教会まで捜索されなくなる。そして王妃は殺される事になり、子孫だったマールの存在が消えてしまうのかもしれない。ルッカが考察したのは、あくまでこの世界が歴史が地続きでありタイムトラベルをした前提での事だった。

ペストは流行っていなさそうだしエイリアンもいる。歴史の辻褄が全く合ってない。その辻褄の合わない歴史は国が捏造したものであり、魔族で滅ぼされた人間の数についての帳尻を合わせる為にペストの疫病を利用した。当時実際にはガルディアではペストは流行せず、魔界との戦争で多くの人間が死んでいただけだった。

ルッカは腑に落ちない歴史をあれこれと疑問を抱きながら、確認の為に教会へ向かう。教会をクロノと合流する場所に決め、山を降りた。人目を避けつつ、ルッカもクロノと同じように、こっそりと民家の庭に忍び込み、服を調達する。

とある家の庭でセンスのいい服を発見したルッカ。 庭では防具になりそうなヘルメットと防弾ベスト的な物も発見し、拝借した。そこはルッカの先祖の庭であった。


消えた王妃

カエルは魔界との国境付近、デナドロの砂丘地帯で兵士達の陣頭指揮をとっていた。

ここ数ヶ月、近隣諸国で魔族との戦争が頻発していた。戦況は人間界が有利であったもののの、ガルディアでも今日明日にでも開戦の兆があるとし、防衛網の強化をしていた。同盟国であったイギリスは表向きは権勢を維持している様だが、一部には陥落したとの噂も広まっていた。人に擬態する魔族らにより王家は乗っ取られた可能性があるとの報告がなされていて、そんな折、カエルの元にリーネが行方位不明になったとの報告が兵馬から届いた。人に擬態する魔族の件もある。人間同士(リーネと知り合い)しか判らない合言葉を決めているとはいえ、無理矢理聞き出す事も可能である。リーネがもし魔族に誘拐され、魔族がリーネの姿をして王宮に戻るのであれは、イギリスの二の舞いになるかもしれない。緊急事態でありカエルは急ぎ、ガルディアへと戻った。

『なに!? 一度見つかったがまた行方不明になっただと??!』

400年前、17世紀初頭のヨーロッパの小国ガルディアにて、奇妙な報告を受けたカエル。報告内容は、兵士の一人が王妃とおぼしき女性をトルース山にて発見するも、その女性は人違いであるとの供述をした。身なりからして異国の服装をしていて、当初は単なる人違いとも思われたが、その女性に近付いてきた同じく異国風の男が王家のペンダントを所持していた為、その男が誘拐犯で王妃は脅されていて助けを求められないだろう可能性を考慮しつつ、兵士はパイク(槍の一種)を構え警戒体制に。しかし王妃から一瞬目を離した隙に王妃は消えていて、側にいた男は捕まる事を恐れたのか逃亡を図った。

王宮は妃の捜索を継続すると共に逃げた男の行方も追いかけている最中だという。

報告を受けたカエルは兵営から飛び出し、民家の屋根にジャンプし、屋根から屋根へと跳び移りながらリーネと男を探した。

犯人の特徴は異国風の容姿かつ、赤髪であり、目立つ様相をしていた。カエルは直ぐにそれらしき犯人を発見した。捕えて尋問にかけるより、尾行して妃の居場所を探るのが得策だと判断した。

男は民家から服を盗み、着ていた衣類を捨て、人混みに紛れた。その後、謎の黒いもの(無線機)に語りかける奇妙な姿についてカエルは疑問視していると、男はその後、人目を避ける様にしながら路地裏を抜け教会の方角へと向かった。

男は女と合流し、話し込んでいる様子だった。話し終わると教会内に入った。カエルは姿勢を低くして忍び込み、教会の壁づたいを登った。

その時、二人が王妃の髪飾りを拾うが、カエルはその瞬間を見ていなかった。二人が王妃の髪飾りを懐から取り出して教会側に渡している可能性についてを考慮してしまった。

シスターが二人に駆け寄る。三人が話し込んでいると、もう一人のシスターは教会の出入り口の扉を閉めはじめ、室内が薄暗くなる。

シスター達が二人を取り囲んだ。その不自然な行動について教会側がリーネ誘拐に関わっているのか、それとも教会側が二人の逮捕に協力しているのかが判断がつかないでいたカエル。


ほどなくしてシスター達は魔族の姿を表し、クロノ達を喰らおうする。

その攻撃に反応よく抜刀し、敵の一撃を防いだルッカ。

しかし、それはルッカの能力によるものではなかった。

※1現代のボッシュが魔力を込めて作った刀の能力であり、それは悪意ある存在が近付くと自動的に抜刀して装備主をサポートする。

勝手に抜刀されて手に収まってきた剣に困惑しながらも振り回してるルッカだが、勝手に敵に命中てくれる。ボッシュの作りだした剣はオートモードで戦う機能があり勝手に敵を倒してくれる。

ボッシュが現代に来た当初、人間に成り済まして罪を犯している魔族が多数存在するのに気付いてからというも魔族への対抗措置として、人間の役に立つ武器を作りだし、影ながら普及させていた。武器といってもその形は普遍的であり、武器に見えないものも多くあり、多くの人々は武器だとは知らずして所有している。

ちなみに魔族に襲われた人々が魔族の情報を世に広めようとすると政府主導によってその人の存在は抹消され、魔族への食糧にされる。
ボッシュ自身、魔族の存在を公にしようとして国から命を狙われている。逃亡している身分であった。

カエルの視点においては仲間割れが始まった様にも見え、継続して様子を観ていたカエル。
二人は魔族ではないにせよ、人間側が魔族に通じている可能性もあり、更に様子をみていた。

ボッシュの刀がオートで攻撃を加えていく光景についてカエルは『女なのに、なかなかやるではないか…』と思ったりした。

しかし死んだふりをしている魔族が奇襲を仕掛けようとしていた。

二人が死ねばリーネの居場所も判らなくなる。そのタイミングで助太刀したカエル

クロノ達は助けてくれたカエルにも驚いていた。シスターが魔族だった事にも驚いていたが、魔族をはじめて見たかのようなリアクションだった。

そりゃそうだ。現代は魔族に支配されている。でも、支配している筈の魔族の存在がそもそも隠蔽されているなんて現代人には思いもよらないだろう。

カエルは二人に剣を向け、事情を聞く。クロノ達は無線機等を見せる事で時を越えた世界からやってきたと説明する。しかし魔族を見たのはこれが初めてであり、この世界とは歴史が繋がっていない異世界かもしれないとも言った。しかしリーネとそっくりなマールが消えた現象が歴史の繋がりを示しているかもしれず、マールを助ける為にリーネを捜索をしていたという。

※教会に目星をつけたのは歴史を知っているからで、そこで何らかの証拠を見つけてガルディアに報告するつもりだったところを魔族にシスターに成り済ました襲われたのだった。

カエルは蛇女(ミアンヌ属ミアンヌ科)の一人を殺さずに制圧していて、リーネの居場所を吐くように脅したミアンヌはリーネの居場所を教える代わりに親玉のヤクラから自身の身を守ってくれる様にガルディア政府の保護を求めた。

『リーネの居場所まで案内するのであれば』と約束するとミアンヌは大聖堂のオルガンを弾いた。鍵盤には血の跡があり、カエルはミアンヌにここの本物のシスターはどうしたのかと聞く

シスターとして成り済ます為、シスターらの交友関係等の情報を聞き出すため監禁しているという。オルガンは隠し部屋を開ける為の仕掛けになっていて、そこにシスターも監禁しているという。

どうやってリーネをさらったのか聞くと、ミアンヌも詳しくは知らされてなく、、しかし仲間内に空を飛べる魔族がいるので、深夜に空から王妃の部屋に忍び込み、誘拐したのではないかという。

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