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【家電修理記録2】 再び、安定化電源

今回は久しぶりに家電修理です。

今回の修理依頼物

HPやNOTEで無償修理の募集をしているのですが、初めて知らない方からメールで依頼を受けました。
偶然にも、1回目と同じ安定化電源。
DAIWAのLM-30Aという10kg弱あるかなり大きな電源です。ご依頼を頂いた方のお話だと、中古品を購入したら故障していたとのこと。

見た目はとても綺麗ですが、年代物ですw

症状

1.出力が出るには出るが約4.1Vで頭打ちしており、13.8Vの設定にしても約4.1Vのまま。ただ、メータ表示は4.1Vなので、メータ自体は正常ぽい。
2.電源スイッチをONすると、スイッチ自体が赤く光るハズなのに、光らず。ただし、電源のON/OFFは問題なし。

左:出力が4.1V程度で止まってしまう
右:ONにしても赤く光らない

分解開始

蓋を外して、分解した全体はこんな感じ。
写真下が手前の表示部で、上が背面のヒートシンクです。
真ん中にどーんと大きなトランスがあり、電子基板は右側に名刺サイズの小さいものが1枚だけ。左側にアルミ電解コンデンサがずらっと10個。

蓋を開けるとこんな感じ

表示部には高級感のある鏡付きのアナログメータ、電圧調整用のボリューム、出力端子、メインスイッチがあります。

ヒートシンクには大きなNPNのパワートランジスタが3つ並んで付いており、このトランジスタで電圧を調整しています。
回路を正確に調べていないので間違っているかもしれませんが、電圧を下げるために熱にしてエネルギーを捨てるタイプだと思います。
効率の関係で、この規模ではあまり使わない回路だと思います。

廃版になることも多いトランジスタですが、このトランジスタは現在でも入手できます。ただ、1つ1000円弱するので、これが壊れていると修理費がかさんでしまいます。

パワートランジスタが3つもついている

症状から推測すると、AC100Vをトランスで低圧にして直流にする部分と、アナログメータに表示する部分は壊れてなさそう。
出力電圧調整ができないので、調整ボリュームとその制御回路あたりが故障しているのだろうと予想

年代物だけにボリュームがが怪しい?

基板には3つのボリューム(可変抵抗)がありましたが、現在は使われないタイプのものでした。
最近は、はんだ付け後にフラックスを洗浄する工程があるのが一般的ですが、載っていたボリュームは洗浄すると溶液が入ってしまう洗浄不可タイプです。
当然、空気中の水分なども入りうるので、時間が経過とともに劣化しやすいです。

左上に1つ、右下に縦に2つあるのがボリューム

まぁ、壊れているだろうなと思いつつ、基板に載っている3つを全て外して確認しました。
案の定、3つとも壊れていました。一番ひどかったもので、本来なら5kΩのところが、約30kΩ。これでは正常に動くハズありませんね。

電圧調整用のボリュームは初めて見るタイプのものでした。
調整範囲の真ん中で一旦止まるというか、スムーズに動かないように軽い山があり、それに引っかかる感じです。
しかも、この真ん中に合わせると、出力電圧が13.8Vに設計されているようで、ボリュームのメモリに電圧が書いてあります。
このボリュームも一応抵抗値が変化するものの、やはり壊れていました
どうも、何か破片をかみこんでいるようで、回転させると時々絶縁してしまいます。
多分、出力電圧が出ないのはこれらのボリュームの故障のせいぽいです。

ボリューム以外のはんだ付けを外さないで済む範囲を調べた限りでは、異常はなさそうでした。
とりあえずボリュームを全て交換して動作確認することにします。

光らないメインスイッチ

スイッチのとしてのON/OFFの機能は問題ないのですが、内蔵されているランプ?LED?が光らない。
分解しようかと試みましたが、分解して中のランプを交換できるタイプではないため断念。
メーカのロゴマークなどもなく、品番も不明。とりあえず、後回しにしました。

故障の原因はほぼ特定

手持ちのサイズ違いのボリュームを付けて確認したところ、正常に動きそうです。
やはり、原因は故障率が高いボリュームだったようです。
光らないスイッチは分解不可で交換しか方法がありません。故障原因はともかく、こちらも交換することははっきりしています。

基板に載せるタイプのボリューム(可変抵抗)3つと、電圧調整用のボリュームの新品を用意すればいいのですが、ここで問題が。

まず、基板に載せるタイプの部品は、洗浄不可品ということもあり、同じものはほとんど流通していません。

そもそも、小型化が進んだ現在では同じピンピッチの大きさのものがないです。見えないケースの中なので、入手できるものをちょっと強引に取り付けて対応することにします。

一番の問題は、電圧調整用のボリューム。
調整範囲の真ん中で一旦止まるものなんて、初めてだったので探しても見つからず。しかも、特性カーブがCカーブ品でした。
流通量の多い、いわゆる普通のボリュームは、抵抗値が回転角度に応じて一定の割合で変化するBカーブ。
Cカーブは変化割合が非線形の少し特殊なものなのです。

ボリューム(可変抵抗)の特性カーブ

光るスイッチは広く流通しているので、頑張って探すだけなのですが、ジャストフィットするものがなかなか見つからず。
既に開いているケース穴のサイズに合うよう大手メーカを中心に探してみたものの、縦横比が微妙に合わないものしか見つからない💧

依頼主さんにご相談

無償修理を標榜しているとはいえ、依頼主さんが希望すれば有償で高価な部品と交換するようにしています。

事前に依頼主さんから、修理を安価にしたいとの希望を聞いていたので、安価にできる方法を相談しました。

具体的には、調整範囲の真ん中で一旦止まる電圧調整用のボリュームを止まらないタイプに、また、光るスイッチは光らないまま(=交換しない)でもいいかの提案です。

どちらも、こちらの提案を受け入れてくださったので、お言葉に甘えさせて頂きました。

新品に交換

基板のボリュームはサイズ違いしか入手できないので、3ピンがあるうちの1ピンを延長させて実装しました。
我ながら、安上がりで、いいアイディアだと思いますw

青い四角いものが交換したボリューム

電圧調整用のボリュームもCカーブ品の同一サイズ(但し、真ん中で止まらない一般的なもの)に交換しました。

結果、無事動きました♬

正常なら、電圧は1V~15Vの調整ができるのですが、0.9V~15.5Vくらいの範囲で調整できるようになりました。
電圧調整ボリュームの真ん中の13.8V表示のところに合わせると、電圧出力も13.8Vに!
メータ表示の回路は故障してなかったので、調整だけしました。

Cカーブにしたので、表示はピッタリ

電流も5V出力時の5Aだけですが、正常にメータ表示されることも確認できました。

左:電圧出力を5Vに設定
右:5V出力に1Ωを接続し、5A表示を確認

最後に

前回もそうでしたが、本来なら電流が最大まで流せるかどうかなども調べる必要があります。手持ちのセメント抵抗では測定出来なかったので、依頼主さんに事前に了承を頂き、省略しました。

年代物なので、アルミ電解コンデンサの容量が低下したり、もしかするとESR(等価直列抵抗値)も上がっている可能性があります。
リップル率なども確認すべきなのでしょうが、適当な負荷がなく電流が取れだせない状況では測ることもかなわず、そのまま返送させて頂きました。

今回の修理にかかった部品費ですが、基板のボリュームが30円×3、電圧調整用のボリュームが60円の計150円でした。

送料は往復とも依頼主さんにご負担頂いていますが、修理自体は無償対応できました!!
ご依頼、ありがとうございました😊

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最後までお読みいただきありがとうございます!
コメントなど頂ければ幸いです。


趣味と実益を兼ねようと、家電修理をしています。今はまだ修行ということで、無償で対応します。修理して欲しいものを募集中です。第1回の修理の状況はこちらに。

詳細はこちらのHPにも記載しています!!
応募はHP記載のメールからでも、NOTEのメッセージからでもどちらでも結構です♪
よろしくお願いします。

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