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【家電修理記録1】 安定化電源

今回は家電修理のお話です。

はじめに

現在は私は電気のエンジニアとしてメーカー勤務しています。リタイヤしたら趣味と実益をかねて、家電の修理でもやれたらと思い、昨年末から、無償で修理を受け付け始めました。(注意:当面はできる範囲の数量しか受け付けられないですが、下記リンクに条件などの詳細説明があります)

今回はファーストカスタマーの修理の様子です。ファーストカスタマーとはいうものの、私同様にDIY好きの父親からの依頼です。

今回の修理依頼物

ものはサンハヤトのDK-806という1chで15V/2A対応の安定化電源。電子工作をするときに電池などの代わりに使う電源です。
突然、表示がおかしくなって、動作がおかしいとのこと。ヒューズは一度も切れていないとの事なので、内部で火花が飛ぶ寸前のような派手な故障ではないことを祈りたい(笑)

症状

電源を入れると、表示が0からだんだん上がって、オーバーフローして表示が出なくなる感じで、出力は表示に関係なく23V程度で固定しています。安定化電源としては全くもって使い物にならない状態です。もちろん、ボリュームも全く機能しません。機能したのはメインの電源ON/OFFのPOWERスイッチだけw

分解開始

分解した全体はこんな感じ。
左側が表示部&制御部かな?、真ん中がトランス、右側が電源?のようです。

上蓋をとって分解

左側の表示部にはICL7107CPLというICが鎮座していました。調べたところ、電圧を表示するためのICでした。試しに、このICに12Vを入力すると、表示部には12Vと正常に表示されました。このICを含む表示部付近の故障ではなさそうです。

表示部のIC(ICL7107CPL)

真ん中にはAC100Vを2種類の電圧に変換するトランスが乗っていましたが、こちらも正常に電圧変換していました。
AC100Vが最初に通る部品なので、もしトランスがショート故障(地絡故障)していたらヒューズが切れてしまうことも多いですし、オープン故障すればうんともすんとも言わないはずなので、この部品の故障はそもそも疑ってもいませんでしたが。

一番右側の小さめの基板が怪しい?

コンセントを差して、1つだけあるメインスイッチを入れると放熱板を兼ねた背面の金属板が暖かい。経験上、ここまで暖かいのは何かありそう。

この安定化電源はスイッチングタイプなので、発熱はかなり少ないはずなのにおかしいと思い、熱源となる部分のICを見てみました。

LM2576T-ADJというICが発する熱でした。このICは品番の末尾からも想像がつきますがAdujstment(調整)機能付きのICです。調べたら、このICがスイッチング動作をして任意のDC出力を作りだすものでした。

放熱板の代わりにケースの金属にネジ止めされていますが、負荷のない状態(電流を取り出してない状態)では、発熱をするようなICではないのです。

蛇足ですが、リニアタイプの電圧レギュレータは変換する電圧と電流次第ではかなり発熱しますが、今回はスイッチングタイプなのでそもそも発熱は少ないはずなのです。

発熱していたIC(LM2576T-ADJ)

故障していそうな部品の特定

LM2576は各社から発売されているロングセラーのようで、テキサス・インスツルメンツ社(以下、TI)のデータシートを参照したところ、ピン配と周辺素子の配置の関係が同じなので、このデータシートを参照して故障箇所を見つけていきます。

LM2576-ADJのデータシートより今回の回路を抜粋(TIのHPより)

故障個所といっても、簡単に検査できる部品か、壊れやすい部品から順に疑うことにします。

トランス同様コイルは故障頻度が少ないので後回し。

コンデンサも内部の電解液が少なくなるドライアップを起こして当初の容量よりも低下することが多いのですが見た感じ液漏れもないので、こちらも後回し。(本来なら低ESRタイプのコンデンサを使うので、ESR異常はあるかも?)

ICそのものと、ダイオード(データシートのD1)を確認しました。

このダイオードはIC内部のFETなどの半導体スイッチがオフの時に、電流を流し続ける働きをするダイオードで、ダイオードの中でもVfの小さなショットキーバリアダイオード(以下、SBD)を選定するケースが多いです。

設計が正しく行われていればまず起こらないですが、SBDは熱暴走で故障する事が知られていて、故障しても不思議のない素子の一つです。

故障部品判明!

確認したところ、やはりSBDは壊れていました。
ICの方も同様に変な動作をしており、故障が強く疑われる状態でした。
そもそも、発熱している段階でおかしいですし。

左:SDB、右:電源IC

元々ついていたSBDの品番がはっきりしなかったのですが、逆方向電圧の耐圧が十分大きいSBDであれば何を使っても動くはずなので、TIのデータシートに載っている1N5822とLM2576T-ADJの新品を手配しました。本来ならICは300円程度、SBDは30円しないくらいでしょうか。今回はAmazonで必要数だけ買ったこともあり、送料込だとかなり割高でした。

購入した新品(SBDとIC)

ICは元々ついていた会社のものでも、TIでもなく、ナショナルセミコンダクタ製です。ダイオードはどこの会社のものかも分かりませんが、1N5822です。

この2つを交換しました。

交換作業時(中央のICの手前にわずかに見えるのがSBD)

正常に動きました(*^▽^*)

調整VOLUMEを最小にしたところ、表示は1.2Vで出力は1.26V。

ダイオードとICを交換したら正常動作

まだ問題が?!

VOLUMEを回したところ、1.2Vから急に15Vくらいになり、中間値の設定ができないくらい一気に変動しました。出力は表示と同じなので、単純にVOLUMEでのコントロールが出来てないと予想し、ボリューム(可変抵抗)を確認。

メカ構造を含むボリュームは故障しやすい部品の一つ。取り外して確認したりしましたが、やはり故障していました。特に抵抗値が大きくなる側が壊滅的にダメでした。

実のところ、最初に修理の話を聞いたときはボリュームだけの故障だろうと思っていたくらいなので、「まぁ、そうだよね」って感じです。

ついていたのは20kΩでした。全く同じものを探しても見つからず、電気特性は同じで別形状のものを買い求めました。こちらも100円もしない部品ですが、Amazonで他の抵抗値のセットの方が割安だったので、定数違いをあわせて10個も買ってしまいました。

左:故障品、右:新品

形状違いの余波を受けて、つまみが真っ黒なものから、水色の矢印付きのつまみに変わりましたが、見やすくなったと言うことで良しとします。

交換したところ、途中の値もちゃんと調整できるようになりました。元々の仕様かもしれませんが、MINからMAXに回す回転割合と電圧上昇の割合が不釣り合いなのがたまにキズ。

故障したボリュームはBカーブ品のようでしたが、もしかするとAカーブ品だったのかもしれません。
ただ、今回は時すでに遅しということで、Bカーブ品のままとしました。

ボリュームを交換して途中の値も正常

電流を表示するための切り替えスイッチがあるので、そちらも動作確認。スイッチの摺動具合が良くなかったですが、何回か切り替えたら自然と直りました。
多分、サビで接点がうまく当たっていなかっただけかと思います。

電流の方にスイッチを切り替えると、表示が0.1A。10Ωのセメント抵抗の両端電圧が1.22V。セメント抵抗には0.122Aが流れているはずなので、表示も正常です。

電流測定機能の確認

最後に

本来なら電流が最大の2Aを流せるかどうかなども調べる必要がありますが、手持ちのセメント抵抗の耐電力では測定出来なかったので、省略しました。

こんな感じで、古くてメーカに修理を断られた家電の無償修理をしていますので、故障品をご提供頂ける方はぜひよろしくお願いします。

詳細はこちらのHPに記載しています!!
応募はHP記載のメールからでも、NOTEのメッセージからでもどちらでも結構です♪
https://masaksg22.wixsite.com/ms-workshop


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