絶望の底【そこのみにて光輝く】
映画1本を通して絶え間なく続く絶望感。
ふと見える希望の裏に
耐え難い状況がどんどんと肉薄してくる。
小さな村で仕事も少ない、
家計を支えるには千夏が体を売って稼ぐしかなかった。
家でも「はるこ」と呼びかける寝たきりの
実父の性処理をして。
そんな環境の中で
寿司の出前を取ることや 定食屋で仲良くご飯を食べること、 素直に愛を伝えてくれる存在がいること、自分のためを思ってくれている存在がいること、
一緒に海岸を散歩することに、少し照れくさそうに微笑む彼女を、わたしはとっても愛おしく感じた。
幸せの為、と実父の首に手をかけ力を入れる、
達夫に制されても止める素振りのない千夏、
そこで実父に初めて「はるこ」では無く
「ちなつ」と呼ばれ、手を止める千夏。
小さい頃の家族4人の思い出、汚い社会の底の記憶で上書きされていたそのもっと昔の思い出。
家庭が壊れていそうでも、
大きな愛に包まれた家族だった。
社長の言葉、
これこそ この家族を象徴するセリフだった。
そしてラストの海辺のシーン、
あの光こそが彼らの、そしてこの作品を見た全員の
希望だった
絶望の「底」で、
窮屈な「そこ」にあるあの街で、
もがき抗い 真っ直ぐ生きていくであろう
この家族を今はすっきりとした気持ちで見ている。
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