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Discordが舞台の実験『d/place-japan』を通して学んだ事

 Sorawafと申します!今回は、Discordを舞台に2020年5月16日から2ヶ月間実施した実験「d/place-japan」の結果と考察をまとめていきます。

1|d/place-japanとは

 d/place-japanは、英語圏の人気掲示板サイトReddit(レディット)にて始動した、実験企画“Place”に着想を得ています。"Place"は白紙の巨大キャンパスに、各々が好きな色を1px配置しピクセルアートを彩る企画。

 各々の意思や希望が鬩ぎ合いながら一つの物を作り出す。これをDiscordのコミュニティ作成で挑戦してみてはどうか。これが「d/place-japan」の始まりです。

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 ルールは単純明快。Discordの利用規約や法律を守った上で、各自自由に行動できます。

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 そして、「心得」として上記の3点を明示しました。運営者はd/place-japanの企画者ではありません。この企画に参加するユーザーが運営である事を示しています。その上で、コミュニティの運営者・傍観者・破壊者、どの役割を選ぶのかはユーザーの自由選択となっています。

2|実験経過

 コミュニティ形成は以下の流れで進んでいきました。簡単に概要を記載していきます。

①宣伝期(5/16 ~ 5/17)
 参加ユーザーが、30件以上の雑談サーバーに設けられている宣伝チャンネルで、d/place-japanの企画を宣伝。様々なサーバーの運営スタッフやBot開発者等が興味を示し、コミュニティ人数が増加、計50名以上参加しました。

②手探り期(5/17 ~ 5/18)
 各々が個人の判断でチャンネル作成を行います。また、自作Botを導入したり、鬼滅の刃(アニメや漫画)の布教を行ったり、各々が自由に活動していました。以下に作成されたチャンネル例を記載します。

[作成されたチャンネル例]
・雑談チャンネル
・しりとり
・数数え
・宣伝場所(Discordサーバー等)
・個人チャンネル(特定ユーザー専用のチャンネル)
・ボイスチャット

③攻防・混乱期(5/18)
 幾つかのチャンネルに関しては、作成・削除の攻防が発生しました。また、幾つかの荒らし行為も発生しました。

[荒らし行為例]
・チャンネルの全削除
・招待リンク全削除
・一部Botのキック
・サーバー名やアイコンの変更
等 

④復興期(5/19)
 荒らしが発生した後、再度チャンネルの整備を行ったり、宣伝を実施したり等、コミュニティの再整備を行う様子が見られました。

⑤壊滅期(5/20 ~)
 入室ユーザーの全キック及び、全チャンネル削除が行われました。数人復帰するユーザーも居りましたがコミュニティは完全に壊滅し、此処から再起する事はありませんでした。

3|d/place-japanから学んだ事

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①コンセプトの重要性
 今回参加者に向けて発信したルールの中に「サーバーのコンセプトを考え、動く」というものがありました。しかし、どの様なサーバーを作成していくのか、ユーザー間でコンセプトの相談や共有は実施されませんでした。「雑談鯖」でd/place-japanの周知が多く行われた事も影響したのか、「雑談用コミュニティ」という傾向が暗黙の中に存在しただけです。その結果、各々が好きにチャンネルを作る状況が続き、コミュニティに一貫性が無い状態となりました。5W1H「コミュニティをWho(だれが)・When(いつ)・Where(どこで)・What(なにを)・Why(なぜ)・How(どのように)利用するのか」といったコンセプトが何一つ定まっていないが故に、各々が考えるコミュニティコンセプトがバラバラとなりました。
 コンセプトの重要性は「一貫性」にあります。コンセプトがあれば、「このチャンネルは必要か・不必要か」の判断が出来るからです。不必要なチャンネル機能を省き、コミュニティの活用用途に合った機能を厳選する事が出来る様になります。

②権限付与の危険性
 利用者やBotに過度な権限を渡すと危険という事が良く分かる結果となりました。特に今回はBotを使用して利用者を一括Banする状況が生まれました。今回のd/place-japanは極端な例ですが「作る側」「壊す側」「見守る側」何処に属するかは、どのコミュニティでも結局、参加者の判断に委ねられます。荒らしの様にあからさまでなくとも悪意のある利用者もいれば、コミュニティの活性化に寄与するような利用者も居ります。権限を付与する時は、悪用される可能性も鑑みて検討する必要性があります。

③アクシデントからの復興
 大きなアクシデントが起こった場合、そこから立ち直る事の難しさが分かります。一括Banにより、一時期50名程いたメンバーは一夜で0名となり、復帰者は10名に満たない現象が起こりました。荒らし等のアクシデントを事前に防ぐ事の大切さが伝わるかと思います。また、「何故Banされたのか」「Ban解除はしてもらえないのか」といったお問い合わせがd/place-japanの企画者宛に増加し、アクシデント後の対策をしっかりと考える事の重要性も、今回の実験を通して実感しております。

④手軽な荒らしが好まれる傾向
 ウェブフック等を利用した荒らしよりも、メッセージ削除やチャンネル削除、メンション荒らし、Banといったユーザー自身が引き起こせる簡単な荒らしが頻発しました。負担が少なく手軽に実施できる荒らしが好まれる様に感じました。サーバーのセキュリティ対策を行う際は、敢えてサーバーを荒らす側の視点に立ち、どうしたら荒しやすいかを想像してみると良いかもしれません。セキュリティ対策の立て方が見え易くなるかと思います。

⑤運営という存在の重要性
 今回の取り組みは「運営はユーザーの皆さん」というものです。しかし、コンセプト統一の難しさ、権限を渡し過ぎる事の危険性、アクシデントが一回起こればそこからの再起が大変という状況下で、非現実的な取り組みだという事がよく分かります。一貫したコミュニティコンセプトを共有している良識あるメンバー = 「運営陣」の存在は、コミュニティを円滑に回すために重要だと考えられます。

その他
 「サーバーを仕切る」ような独裁者タイプは出現しませんでした。全員が対等な権限を持つ状況下において、「傍観する事」が一番生き残りやすい手段である為、目立った行動がし難い事が考えられます。また、サーバー壊滅迄4日"も"日を要した事は興味深く思います。荒らした方によると、「ある程度発展していないと荒らすのが面白くない」との事でした。


〇 運営者コミュニティの紹介

『コミュタン』の紹介
コミュニティ運営者の情報共有・交流コミュニティ。様々な施策や事例の共有、コミュニティ運営に関する意見交換を行います。運営ノウハウをもっと深めたい!そんな運営者は気軽に参加くださいませ。堅苦しい場ではなく、温かい感じで気兼ねなく知見を共有出来たら良いですね~!

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『MSS』の紹介
Discord運営の初歩的な情報が交わされているコミュニティです。サーバー設定やBot操作方法から、運営に関する質問のやり取りなど。『コミュタン』と一緒にご活用くださいませ。

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執筆者:Sorawaf(Twitterはこちら)