取締役会議事録を電子化した話

はじめに

内容はテーマのまんまです。某弊社では、クラウド型電子契約サービスを利用した取締役会議事録の署名が可能という見解が表明されてからほどなく、取締役会議事録の電子化に取組むことになりました。

クラウド型の電子契約サービスについては、リモートワークが進んできた頃から、通常の契約書の締結における利用を検討していたところであっため、比較的スムーズに進めることができました(なお、契約業務における電子契約の状況に関しては以前に書いたこの記事の頃と状況はほとんど変わっていません)。
取締役会議事録の電子化は社内で完結する話なので、契約相手方の思惑なども絡む対外的な契約業務と異なりハードルも低く、また電子化によるメリットも享受しやすいかと思います。

電子化のための事前の対処事項

取締役会議事録の電子化に向けて、社内で対処すべき事項としては、まず社内規程や規則の改訂が必要となる場合が多いでしょう。具体的には、取締役会議事録を書面で作成・保管することを定めている取締役会規則や文書管理規則について、電磁的記録での作成・保管を可能とする内容への改訂です。

契約業務における電子化の場合、印章管理や捺印に関する規程や、捺印業務フローの大きな変更に加え、決裁権などの全社的な業務設計に絡む事項も多く、調整事項が多数ありますが、一方で取締役会議事録の電子化については、規程の改訂の他は、取締役会事務局内での対応事項の変更のみであるため、すぐに取り組むことができました。実際に電子化の検討から、3か月程で実行に移すことができました。

実務上の検討事項いろいろ

まず、どのクラウド型電子契約サービスを利用するかという点ですが、とりあえずメジャーなとこ使っとけば大丈夫だと思います(適当)。後に電子化した議事録を登記申請時の電磁的記録や添付書面情報として利用することを予定しているのであれば、登記申請に利用可能な電子証明書として法務省HPに記載のあるものを利用することが必要です。

大抵の電子契約サービスでは無料アカウントを作成することができるので、あとはそれで試してみたうえで選定すればよいと思います。
サービス間の比較検討においては、料金体系やIPアドレス制限といったセキュリティ面が比較要素として挙げられることが多いですが、実務者目線では、送信者・署名者の会議ルートの設定なども重要です。

書面で作成した取締役会議事録を回付する場合の回付ルートと平仄を合わせるのであれば、そうした設定ができるか(例えば、代表取締役以外の取締役・監査役が捺印後に最後の代表取締役が捺印したり、取締役全員が捺印後に監査役が捺印するなどルールがある場合、それに沿った運用が可能か)確認した方がよいと思います。
電子契約サービスによっては、一人一人順番に署名していく設定のみのもの、複数の署名者に同時並列で回付できるものなどの仕様の違いがあります(役員の数が多い場合、同時並列に回付できる方が署名完了まで早いです)ので、この点はよく確認した方がよいと思います。
その他、フォルダ分けによる閲覧権限の管理ができるかなども確認した方がよいと思います(とりわけ、契約業務と併用している場合)。

また、直感的な操作のしやすさも重要な点です。取締役会議事録の署名者である役員の方々は、特に伝統的大企業であればご高齢の方が多いので(たぶん)、署名操作が煩雑でないものを選択した方がよいと思います。

あとは、署名に用いることが可能なファイルの容量の上限も事前に確認しておいた方がよいと思います。書面で議事録を作成する際に、議事録本体と会議資料を合綴していた場合で、電子化においても同様に取扱うときは注意が必要です。
取締役会資料は、図表やグラフを多く用いてカラフルに作り込むという会社が多いと思いますが、そうした資料はファイルの容量が大きくなってしまうので、議事録の本体と合綴したら、その電子契約サービスで利用可能なファイルの容量の上限数を超えてしまうこともあるためです。

実際に電子化に取組んで

上記のような検討を経て、実際に電子化に取組んだわけですが、業務工数の削減に絶大な効果がありました。これまで書面で作成した取締役会議事は、ひとりひとりに捺印をもらい、遠隔地にお住まいの役員の場合は、郵送してそれを更に返送してもらう必要があったり、また書面決議の場合は、各役員ごとに同意書を作成する必要があったりと、書面の作成・手配にも膨大な時間と手間がかかり、回収にも1か月かそれ以上の時間を要していました。
それが電子化したことにより、議事録作成後、署名完了まで1~2日程度で完了するようになっています。

以上のように、取締役会議事録の電子化は業務の効率化に非常に大きな貢献がありました。今度はこの電子化した議事録を用いて登記に使おうとしている話を書きたいと思います。

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