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眉村ちあき『濾過』(EP "ラブソング史のはじめに" より)に数行毎にコメントしたりする

前回(→リンク)のつづきです。眉村ちあきさんのEP ”ラブソング史のはじめに” に収録されている『濾過』という曲の歌詞に、思ったこと考えたことをコメントしていくというnoteです。前回のnoteではEP1曲目の『朗読』を取り上げたので、本来ならば次は2曲目『季節風』なんだろうけれど、今の衝動に従って3曲目の『濾過』について書きます。『季節風』はそのうち気分で書きます。

夏、見回りがこないビルの屋上でくれた缶ビールは苦かった
阿吽の呼吸で警備員から逃げてもう朝だねって家に帰る
最初にもらった綺麗な石
(このブロックは、冒頭に述べられているように、夏の場面。このときは苦い缶ビール。未成年ではない。きれいな石は宝石か、あるいはそこら辺で拾った本当にきれいなだけの小石か、どちらだろう。濾過に使うのであれば後者だがさて。)

涼しくなってきたからって昼間 芝生で寝っ転がる
仕事のこと考えない時間なんて初めてのことだった
睫毛に乗るくらい軽い石

(このブロックは、涼しくなってきたと言っているところから、秋の場面。普段は仕事のことを考えてる社会人。睫毛に乗るくらい、は小ささの表現ではなく軽さの表現であることに注意。そこそこの大きさ? 軽石ならば濾材に適してる。

この世で2人だけが早起きをして電車に乗った
素直にあなたの胸に顔を埋めてみた
磁力が備わってる白い石

(順番通りならばこのブロックは、冬の場面、胸に顔を埋めてぬくもりを感じるとかかな。磁力が備わる白い石は花崗岩のことか、ならば地下水が濾過される過程でミネラル分を含ませるところ。)

これでもかってくらいの愛情表現はできるけど、されると、照れちゃうんです
だからエスコートはしないでね きょどる姿みせられない
甘ったるいビール キューティーな音色の砂利

(順番通りではここは春の場面か。ここだけ句読点があるのは、可読性のためかその他の理由があるのか。甘ったるいビールは沖縄でメジャーなルートビア? そして濾過するための砂利が登場、キューティーな音色を奏でることから、なんとなく細かいイメージ。最初のブロックの「綺麗な石」よりも小さいと思われる、なんとなく。そうであれば、小石→軽石→花崗岩→砂利の順に小さく積み上げられて濾過装置を構成することになるのかな。)

シャイな二人がキスした夜は
綺麗な蝶が喉を泳ぐ
猫の服が頬擦りしながら
二人は見つめ合うのでしょう

(喉&蝶ときたら、喉仏下あたりに位置する臓器、甲状腺。一般に、羽を広げた蝶のような形と形容される。甲状腺は、新陳代謝を促進したり、大人の脳の働きを維持したりする器官。恋を活性化? さて、猫の服が頬擦りとは一体どんな場面? 猫が胸にプリントされたペアルックを着た二人が抱き合っているとそうなる?)

君がくれた全部が私の体蓄積してゆくのです
泥水も賊心な言葉も時間をかけて濾過してゆく
ゆっくり溶かしてゆく

(君がくれた石や砂利が順に私の体に蓄積され、濾過装置の完成。賊心とは害を加えようとする心や反逆しようとする心のこと。ろかしてゆく→とかしてゆく、の言葉の重なり合い響き合いが好き。)


二人の大人の男女が、徐々に関係を深めていくようすが見て取れる歌詞。単に親しくなっていくだけでなく、相手の言葉とか気遣いとか態度とか、そういったことで自分が徐々に変わっていく様子を濾過と表現するのが秀逸。素晴らしい歌詞。眉村さん、あまり本など読まないとのことなんだが、それでもこういった歌詞を書けるってことは、持って生まれた感受性のその鋭さ繊細さがすごいってことだと思います。

かと思えば、こんな曲もあったりするんだが。

この多彩さ、多様性の権化とでもいうのかな、振れ幅の広さがまた魅力的ではあります。

ではまた。

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