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生コンサートという美しい幻

 アイドルオタクに限らず、人は信じられないものを見たときに、しばし夢だの幻だのと口々にする。それは自分も例外ではなく、日常的に口にする。あまりに自分好みのものを見た時、目の前の光景が素晴らしい時、無意識にこれは現実か?と疑う。


 NCT127の日本ドームツアーの東京公演、場所は東京ドーム、キャパは50,000人とあり、そこでライブができるアーティストは邦楽アーティストでもかなり限られてくる。抜群の知名度と人気と実力を兼ね備えたアーティストのみが立つことのできるステージ。ジャニーズのアイドルでも目標を東京ドームでの単独公演に据えるグループは多い。
そのステージに本国デビューから7年目、日本デビューから5年目で到達したのは、韓国の大手事務所所属のグループの地力のとてつもなさを感じる。ここ2年くらいでファンになった自分ですら、ドームツアーのお知らせには歓喜と称賛の気持ちが湧き上がってきたので、デビュー当初や長く応援しているようなファンの方々にとってはいっそう感慨深いものがあったかもしれない。

 実のところ、NCT127のライブを生で見るのは今回が初めてではなく、以前に一度サマーソニック2019の深夜枠にて、グループ名を聞いたことがある程度の状態で見たことがある。ダンスがとにかく上手くて、顔も良い、気になるな…と感想を記録していた。一緒に見ていたSEVENTEENのファンの方に、日本人の方いるんですねと言ったことも覚えている、それくらい何も知らなかった頃に見たわけで、その頃の自分は、まさかその3年後に単独公演に参加しているなんて思ってもいないだろう。

サマーソニック2019当時に撮っていた写真

 アイドルのコンサートに行くのはかれこれ3年ぶりくらいで、東京ドームはお初お目にかかりましての会場、場内に入った時には、よく映像では見る場所だけど、こんなに大きいのか…と恐れ慄いた。自分はスタンド1階の前から2列目、127も全体の演出もわりと見えやすいところで、3時間半のステージを存分に目に入れることができた。
(ステージ演出オタクも兼ねている私としては、ドームクラスの照明、レーザー、特効は目が足りないくらいの規模で、127も見たいし…演出も見たいし…と常に忙しなかった。)

 127ではマークとテヨン、そしてジェヒョンの顔ペンである私、はじめのモニターに映るメンバーたちに、腹から声が出てしまった。特にマークは、先の名古屋公演では青髪だったところが、この東京公演では黒緑髪になっており、映った瞬間に「エ゛ーーーーーーッ゛嘘!!!」と思わず叫んでしまい、自我の抑制などはじめからできていなかった、厳しい。
ちなみに公演の始まりから終わりまで、マークがモニターに映るたびに嘘…嘘すぎる…しか言えず、目の前に推しがいること、そしてその推しのビジュアルが信じられないことになっていると、オタクは目に見えている光景を認めようとしなくなるということがよくわかった。体格もまじまじと見てしまい、マークの体格ペン私、ますます沼を深くしてしまった。体格が好きすぎる、早くあれになりたい。全部のバランスが私の理想だった。MC中はほとんどマークの体格しか見ていない助平爺さんの人格が働いてしまい大反省会。お話は聞いておりました、ジェヒョンがとにかくチャーミングな男さんということはわかった、でもマークしか見ていなかった、大反省会。

 始まりは大ヒットナンバーのKick it 英雄から、またここでも思わず、ひでおーーー!!!と叫びながら爆踊りしてしまうオタク、本当に黙った方がよかった。爆音で聞くKick it、まさかの初手から特効バリバリ、これクライマックス?と思い始めるくらいに派手な演出で始まり、すげぇー…以外の言葉が見つからない。生のコンサートに来た空気をそこで感じて、身体全体が震えた。2年前に感じることを一切許されなくなってしまってから、ずっと待ち望んでいた空気と一面の景色は、懐かしさもありつつ、またここから始まっていくのだなあ、とライブ冒頭にひとりで終演する勢いのことを考えていた。感極まるのが早すぎる。

 テイルさんとヘチャンの最年長年少メインボーカリストの美しすぎるユニットステージ、パニックで記憶が死んでいるマーク、テヨンソロ、映像演出と合わせて艶のあるステージだったジョンウソロ、50000人のどよめきが広がったジャニさんソロ、しっとりと落ち着いていてジェヒョンの持つ雰囲気に魅了されたステージ、歌声ひとつでドームを震わせたドヨンさんソロ、花は桜、蝶は中本、タトゥーを拝んだ中本さんソロ。
どのソロステージもどの曲も良かったのが大前提で、公演中の個人的なハイライトは、Highway to heaven、マークソロのVibration〜テヨンソロMoonlight〜マーク&テヨン The Himalayas、Back 2 u、Favorite、Promise you。

「Highway to heaven」はNCT127にハマるきっかけになった曲、そのステージを生で浴びることができたのは幸せ以外の何ものでもない。幻想的で少しもの悲しげな曲がドームに響き渡っていた瞬間はたしかにあの場所は天国だったのかもしれない。トロッコのおかげで、メンバーのダンスも肉眼で大方わかる距離で見られたのも良かった。

 マークソロ「Vibration」、何度か映像で視聴済みとはいえ、映像でつけた耐性など生の衝撃の前では何も意味を成さなかった。パニックを起こすレベルで嘘??!!嘘でしょ?!!の連呼。パニックに陥っていたので、もはや記憶がない。たしかに目で見て聞いていたはずなのにまともな記憶がない。嘘みたいなビジュアルの人間が嘘みたいなステージをしていたことしか記憶が無い。彼はやはりエグかったとしか言えない。悔しい。悔しいが、何回見ても感想はそれに尽きるだろうと思う。

 パニックのままテヨンソロ「Moonlight」、頭のてっぺんから足の先まで二次元作画が常のテヨンなので、どんな衣装だろうが演出だろうがカッコよくハマる。東京ドームのステージすら小さく見せる迫力を体ひとつで出していた我らのリーダー。一際格好よく見えたソロステージだった。その彼がライブラストのコメントで「自分は未熟なリーダーで、ダメなところもあって」などと仰るものだから、もっとたくさんご自分のことを評価してあげてほしい、と思うけれど、その自分への厳しさが彼が高いところに行く原動力のひとつなのかもしれないなとも思ったり。

 そして、その後のマークとテヨンのユニットステージ「The Himalayas」、NCTの中でもマークとテヨンは随一のラッパーだと思っているので、私が存分に得をする世界が広がっているのがこのユニット曲である。耳が幸せ通り越して昇天した。若干声の高さが違うのもまた良く、どちらもフロウがとにかく上手く気持ちが良い。ダンスを見ていても、この2人はどこか常人には感じ取れないリズムを取っているのかなと思うこともたまにあって、何とも不思議な気分になることもしばしば。そんな鬼才たちが組み立てたステージは、陳腐な語彙で表すことは不可能な絢爛さがあって、より一層彼らを追いかけたいと思えたものだった。

「Back 2 u」、ドームで聞くBack 2 u、想像よりもはるかに切なくて、気分的には骨をドームに埋めてきたくらいの感じ。あんなステージを体感してしまってはBack 2 uの亡霊に成り果てるしかなかった。亡霊になったおかげで記憶も途切れ途切れで誰のどのパートがどうとか何も言えない(最低)ので、円盤を買って擦り切れるまで見る。

「Favorite」、こちら私のメインディッシュ、これを見られたら東京ドームの土になってもいい、その気持ちで拝んだ生favorite。ドヨンさんソロでの天井を突き抜けん勢いで響いた歌声の後に続いたセンターステージでのパフォーマンスは感無量の一言に尽きる。席の位置的に、横側からパフォーマンスを見るような形だったので、普段はあまり見る機会がない陣形の動き方もバッチリ見ることができ、席の位置に感謝した。横とてもいい。

 そしてアンコールラストの「Promise you」。爽やかで明るいポップトラックで締めなのは大変ありがたい。こんなに幸せを浴びていいんですか…多幸感に浸りまくっておりますが…と。ここまで綺麗な夢を見させてくれてありがとうございましたの気持ちでいっぱいになった。この世に終わりがないものは無いけれど、醒めないでほしい幻はたしかに目の前に存在していたのである。彼らが見せた夢には葛藤や覚悟も垣間見えて、生々しさもあって、それもまた良かった。

 アイドルは夢であり、幻でありながら、ステージを通して、現実を生きる私に感動や活力を与えてくれた。あの現場の空気、におい、メンバーたちの言葉の記憶を持って、また彼らのステージを見られる時まで、日々生きていこうと思う。

現場でお会いしてくれたオタクの皆さまにも大感謝、またお会いできる日までお互いに元気で。


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