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自分との約束を破らない

人間の悩みを紐解こうとすると「こうでありたい」、「このままではいけない」という寂寞の思いが根底にあると感じる。

最近、彼女からも友人からも「根が明るい」と言われた。自分では超弩級の陰だと思っていたのだが、そんなことはないようだ。このごろ自己評価と他者評価のズレを感じることが多い。

この前は「ほっておかれるタイプか、ほっておけないタイプか、自分のことはどちらだと思う?」という質問を受けて、なるべく考え込まずに即座に返答を試みたら、自分の口から「ほっておかれるタイプだと思います」と出てきた。そしたら隣にいた友人から「ほっておけないタイプだよ」とツッコミが入った。自分で思う自分と、人からどう思われているかはけっこう違うみたいだ。というか正反対だったりする。

こういう解釈のズレを整えるためにも日頃から会話をする必要があるなと思った。

自分のことを陰だと思っている中で根明を目指しても、すでに根明なわけだから、無理に明るくなろうとしなくてもよい。

ほっておけないタイプだと言われて、なんだか嬉しく感じた。長男というのもあるせいか、しっかりしなきゃみたいな強迫性があるが、ほっておけないということは気にかけてくれる人がいるということで、後は自分がその気持ちを素直に受け取れるかどうかなのだろう。

自己評価が高いことと、自分を褒めることは大きく違うと思う。前者はコンプレックスによるものだと感じる。こうでありたいという理想像と、現実の自分の姿の差を埋めたいという気持ちが、自己評価を高めてしまう。

後者は自らの起こした行動を褒めるのだ。自己評価には行動が伴わないことが多い。行動を起こすと自分は凄いと思っている暇がなくなる。反省している暇もなくなる。

言葉というのは得てして自己暗示であることが多い。「千の言葉も、一つの行動には敵わない」。そういう言葉もある。

「人との約束以上に、自分との約束を破ると自信が失われる」。友人が言っていてハッとした。願望を話すこと、考えること、それらはステップとしては大切であっても、結果として行動がセットでなければ、毎度、自分を裏切っているようなものだ。

やると決めたことを人に話すことで行動につなげるやり方があるが、それは一つの有効な手法だと思う。でも有効であるということは、裏側にリスクもある。約束を破った場合、自信まで失ってしまう。

今年の初めに決めたことがある。無言実行だ。言ってやらなかった場合(有言不実行)は自信を失う。有言実行は、言った以上は行動に移すこと。無言実行は言わないでやること。どう考えてもというか、無言実行が一番粋で、やらなかった場合でも言ってないんだから、変な話、誰にもバレない。自分との約束だけが破られる。

今までブログを書いていて、なんかしっくりこないなあと思うことが多かったのだが、その長年の謎が最近解けたような気がする。毎回、理想を書いていたのだ。

もちろん悪いことじゃないのだが、私はできないことを言いがち、書きがちだ。だからその都度、言葉と本来の自分が一致しないことに自分自身が裏切られていた。それが違和感の正体だったと思っている。

心持ちを変えて、起こった出来事を書くようにしたり、理想を語らないようにしたりしたら、基本的に気が楽になった。自分を裏切り続けると、不満が溜まってくる。

「イラッとするのは、もっと自分はできると思い込んでいるからだよ」とこれまた同じ友人の言葉だが、本当にそうだと思う。

自分が何かできないことに対して、世間に対して怒ることがある。「できないものはできない」と言う。でもたしかに怒っている。できないならできないでいいはずなのに怒っている。それはつまり本当は「できる」と思っているのではないだろうか?

太宰治は人間失格の中で「世間が許さないのではない、あなたが許さないのでしょう?」という文を残している。

自分はもっとできる。それはそれで向上心のようだが、本当はめっちゃ無理してないか、とも思う。無理は続かない。勝手に続くことを人は才能と言っているような気がする。

「できない側になりたくない」と言うのが本音なんじゃないだろうか。もしくは振り向かせたい誰かがいるとか。だとしたら、できるかどうかは問題ではない。願望と目的が一致してないだけだ。

千の言葉が一つの行動にもつながらないのは、本当は別のところに目的があるのではないだろうか。行動がなければ、自分は自分に裏切り続けられる。

怒りの正体は寂しさだと思う。この怒りは、愛されないこと、周囲の無関心に対してではないだろうか。だから自分ではない別の自分を目指して、周囲の関心を集めようとする。でもそれは長くは続かないのだ。どこかのタイミングで疲弊する。

自分以外のものになろうとすればするほど、自分自身に裏切られていく。そうなるとどんどん人と比較するようになる。

どんなに小さなことでもいい。まずは自分との約束を守ること。自己評価を高めることより、信頼できる人の話を聞くこと。本当の自分は、自分以外が知っている。自分にしか興味が持てない段階に嵌ると、抜け出すのにかなり時間がかかる。

生きてます